新-683

――クリスマスは、家族みんなでケーキを食べてお祝いするの。そして寝ている間に、サンタさんがプレゼントを持ってきてくれるんだよっ!

――大切な人と一緒にパーティーをしたり、プレゼントを贈り合ったりして、素敵な時間を過ごす日よ。

――本来は、西洋の神様の誕生日なの。わたしたち人間のために、神様が人間の赤ちゃんになって、この世界に降りて来た日なんだって。



クリスマス。
この世界では、冬の時期の・・・いや、一年を通じても、
とても大きなイベントに当たる日。
でも、いったいどういうイベントなのか、何度聞いてもよくわからない。
図書館の本で調べてみても、結果は同じ。
ラブと美希とブッキーの説明は、バラバラなのにどれも間違いではないらしい。
そのことに驚きつつ、私は途方に暮れてしまった。

みんなでケーキを食べるのは楽しいけど、
サンタさんを信じているのは小さな子供だけの特権。
大切な人とパーティーをするのは素敵なことだけど、
普段の晩御飯だって、十分に素敵な時間だ。
ましてや西洋の神様の誕生日だなんて言われても、
私には全くピンと来ない・・・。



「何かクリスマスのことで、心配事でもあるの?せっちゃん。」
お母さんにそう訊かれたのは、テレビのローカルニュースを見ていたとき。
色とりどりのイルミネーションを、紹介する短い番組。
赤い服を着たリポーターの、嬉しそうな顔と裏腹に、
思わずため息をついた私の顔を、お母さんが覗きこんだ。

クリスマスって、どんな日なのかよくわからない。
そう言う私に、お母さんは何のためらいも無く、こう答えた。



誰かに愛されていること。
誰かを愛していること。
それを改めて思い起こして、相手に伝える日がクリスマスよ。

サンタさんがプレゼントを配るのは、
あなたは愛されているよって、子供たちに伝えたいから。
大切な人とプレゼントを贈り合うのは、
ささやかでも、気持ちを形で表したいから。
神様が、弱い人間の姿でこの世に現れたのをお祝いするのは、
人がそれだけ神様に愛されていることを、感謝するため。

形はそれぞれ違うけど、込められた気持ちは皆同じ。
だからクリスマスは、とっても暖かくて、嬉しくて、幸せなのよ。



今日はクリスマス。
この世界に住まう、私を愛してくれるたくさんの人々に想いを込めて
こんな私でも、人を愛する気持ちを知ることが出来たことに感謝して
大切な人たちと一緒に、この幸せなときを過ごそう。

世界中の人々が、幸せになれますように。
世界中の人々が、誰かを幸せにできますように。
聖なる夜に、心からの祈りを。

メリー・クリスマス!
最終更新:2011年12月25日 14:34