夢の中までずっと一緒。
夢にまで見てくれるなんて嬉しい。
そう、感じる筈だと思ったのに。
サラリと前髪を祓う指に眠りから引き戻される。
目の前にあるのは、夢の中と同じ微笑み。
「起こしちゃった…?」
あまり気にしてなさそうな口調で、髪を弄びながら彼女は囁く。
「眠りながら笑ってたわよ?」
どんな夢見てたの?
「せつなの、夢だよ…」
嬉しそうに唇を寄せてくる彼女。
「私も、ラブの夢見てたわ…」
夢の中でもずっと一緒なのね。
甘く蕩ける声。
嬉しいはずなのに、胸の中に小さな棘が生まれた。
「夢の中のあたしは、せつなにどんなコトした…?」
「……ラブ?」
「キスとかしたの?…その先は…?」
あたし、どうして泣きそうな声してるんだろう。
戸惑う彼女の首筋に顔を埋め、強く唇を押し付ける。
「夢なんかより、本物の方がいいでしょ?」
駄々っ子みたいに素肌に印を滅茶苦茶に刻む。
汗ばんでくる肌からは、あたしだけが知ってる甘い香りがする。
馬鹿みたいだ。
夢の中の自分にまで、嫉妬するなんて。
あなたに触れていいのはあたしだけ。
例え、夢の中の分身でも耐えられない。
end
最終更新:2012年01月21日 18:32