せつながラビリンスに再び旅立ってから半年が過ぎた。
あれから半年……
夏休み、せつなは一時的に帰省してラブと四ツ葉町を探索している。
ブッキーや美希も誘ったのだが今日はどうしてもだめらしくクローバーの再会はまた明日となった。
2人は商店街やかおるちゃんのドーナツ屋、色々な所を巡り…
それからラブとせつなは色々な場所を巡りたどり着いたのは……
「懐かしいわね。」
「うん…」
そこは1年前せつながイースとしてピーチと最後の決闘をした森だった。
「1年半前この先の館で私とせつなが出会った。」
「そして1年前この場所で私はプリキュアになった。」
そういって2人はあの怒涛の1年間を振り返る。
出会い、決闘そして別れまで、いくつもの思い出が2人の中を駆け巡る。
「でも、正直今でも分からないの……」
そういって少し目を伏せる
「どうしたのせつな?」
そんなせつなを心配そうにラブが覗き込む。
「私はあの時、あれだけの事をしてしまった。なのにアカルンは何故私を選んでくれたの?」
それに対して少し悲しそうな顔をするラブ
「せつな……」
「もちろんプリキュアになれた事はとても嬉しく思っている、みんなのために精一杯頑張れて幸せゲットだったわ。」
「笑顔の素晴らしさを知り、罪滅ぼしとは言え、それを守る事で私は変われた。」
「そのおかげでラブと一緒に戦えて今もこうしていられるし。」
そういって繋いだ手を少し強く握る。
「でもたまに思う事があるの、それって結果論なんじゃないかって。」
「アカルンは本当はあの時ミユキさん、ううんそれでなくても他の誰かを選ぶべきだったんじゃないかって。」
「あの時の私にはプリキュアの素質、ううん資格なんて無かったはずなのに……」
「うーん、アカルンがせつなを選んだ理由かー」
そういってラブは考える様な仕草をして
「本当の理由はアカルン本人に聞かないと分からないかもしれないけどー。」
次の瞬間。
「よーし。」
そういって繋いでいた手を離し、笑顔でせつなの前に立つ。
「どっどうしたのラブ?」
当然驚いたような声を上げるせつな。
「じゃあ私がアカルンの代わりにアカルンになった気分で答えてあげるね」
「え、ええー」
ラブのあまりに斬新な提案にせつなも思わず間抜けな声で反応してしまう。
「えーっと私はプリキュアの妖精アカルンだキー」
あまりに片言の口調で答えるラブにせつなが苦笑して
「もうラブったら無理して口調までそんなにしなくてもいいわよ。っていうかみてるこっちが恥ずかしいわ。」
せつなの的確な突っ込みに対してラブがバツが悪そうに笑うと
「こっこほん。そっそれじゃあ気を取り直して」
咳き込んで、それでもなお優しい口調で
「ねえせつな、あなたは確かに1年前間違った事をし続けた。でもそれをし続けた理由は何故?」
責める訳ではなくあくまで優しく問いかける口調でラブが質問する。
「そっそれは……」
答えられずに目をそらすせつな。
「ごめんなさい……」
自分の悪行にどんな理由をつけても言い訳になる。
ならばただ過去の悪行を詫びようと考えての反応。
せつならしい反応だった。
しかしラブは
「自分の気持ちから逃げちゃダメ、お願い自分の気持ちと向き合って。」
ラブの気持ちが伝わったのかせつなは意を決したようにうつむいたまま語り始める。
「全てはメビウス様のために、私たちはそう言っていたわよね。」
「あの言葉に嘘は無かった。実際……私、ラビリンスにとってメビウス様の存在がすべてだった。」
「メビウス様の為ならどんな犠牲も正義そう信じてFUKOを集め続けていた。」
「私のせいで苦しんでいる人達を見ても、メビウス様の役に立てるのだから喜ばしい事だってずっと思っていた。」
「ラブと出会うまでは……」
そういって顔を上げ迷いのない顔でラブの目を見つめる。
「ラブと出会ってからは正直もう何が何だか分からなくなっていた。」
「正直今まで自分が正しいと信じていた生き方を否定されるような衝撃を何度も受けた。」
「そこからはもう訳が判らなかった。」
「ラブを見てると本当の幸せって何だろうって何度も自問自答させられた」
「でもこれまでの過ちを認める勇気も無かった私はラブが気付かせかけてくれた違和感を認める訳にはいかなかった。」
「後は何かを否定するように自分の自尊心を維持するために暴れまわっていた。」
「あはは、こうして見ると本当にいいとこ無しだったわね……私。」
そういって自嘲気味に笑う。
「うん、やっぱりアカルンがせつなを選んだ判断は間違ってなかったんだね。」
ラブの意外な言葉にせつなが驚く
「どっどうして、今の話じゃ私自分勝手な人じゃない。」
「たしかにせつなは幸せの意味を間違えて悪い事をした。でもその時のせつなにはそれが最善の判断だと思ったんだよね?」
だまってうなずくせつな
「ボタンをかけ間違えちゃう事は誰にだってあるんだよ。でも今自分の信じている幸せの為に精一杯頑張る気持ち自体は悪い事じゃない。」
「でも私はラブを裏切った。幸せの素をくれたのに騙そうとしてそれを踏みにじった。」
「でもさ、その時せつなは必至に幸せを探していた。でもその幸せが判らなくなってパニックになっちゃったんだよね。」
「でも、本当の幸せを求める心があればあとは誰かが愛をあげれば幸せに向けて歩きだせる。」
「その愛をあげるのが少し遅くなっちゃったね。」
そういってゆっくりせつなを抱きしめる。
(ありがとうラブ、みんなそしてアカルン。私をプリキュアにしてくれてそれから愛を教えてくれて)
誰に言うでもなくそっと心の中で語りかける。
「あーアカルンがせつなを選んだ決定的な理由が分かったー」
「え?なっ何?」
「この抱きしめごこちの良さに目を付けたんだよきっと」
「もうそんな訳ないでしょ。」
「いーや、この感触は私のプリキュアレーダーが反応してるよ。」
「もうあいかわらずなんだからー」
そんな2人の少女のやりとりを上からのぞいている赤い影が……
(ありがとう私の気持ちに気付いてくれて)
最終更新:2012年09月15日 22:51