新2-288

「プリキュアハピネスハリケーン!はあーーーーーっ!」
「シュワシュワ~」
緑のダイヤが溶けていった。

「まあいい、今日は君に会いたい人がいるんだよ」
サウラーが姿を消し、入れ替わりに初老の男が現れた。

「あなたは・・・」

クラインが一人の少女を連れて4人の前に現れた。

「ご無沙汰しております。旧バージョンのイースさん、いや、今はキュアパッションですか。
あなたもわかっていた筈です。あなたの代わりはいくらでもいることを・・・」
「まさか・・・」
「紹介しましょう・・・ こちらがイース、失礼ながら先にアップグレードを進めさせておりましたので、
あなたの存在は大部分移行済みです。あとはあなたが消去されればアップグレードが完成します。」
「我が名はイース、ラビリンス総統メビウス様が僕。旧バージョンのお前を消去する!」

言うや否やイースがキュアパッションに襲い掛かった。
高速の拳と蹴りが次々とキュアパッションに襲い掛かる。
必死に防ぐキュアパッションであったが、新しいイースのスペックは高く、
そのスピードに圧され、ダメージが積み重なっていく。
「旧バージョンの上に経年劣化の進んだお前に勝ち目はない!」

「パッション!」
キュアピーチが、ベリーが、パインが窮地のキュアパッションを救おうと、
戦いに割り入ろうとするも一蹴された。

イースのパッションに対しての攻勢は止まらない。

「うん」
意を決したように、三人がピックルンを召喚する。

「はっ!」

「届け、愛のメロディ! キュアスティック、ピーチロッド!」
「響け、希望のリズム! キュアスティック、ベリーソード!」
「癒せ、祈りのハーモニー! キュアスティック、パインフルート!」

♪ポロロロロロロロン

「悪いの悪いの飛んで行け プリキュアラブサンシャイン、フレーーーーーッシュ!」
「悪いの悪いの飛んで行け プリキュアエスポワールシャワー、フレーーーーーッシュ!」
「悪いの悪いの飛んで行け プリキュアヒーリングプレアー、フレーーーーーッシュ!」

三つの光弾がイースを目がけて一直線に飛びかかった。

さすがのイースも直撃は危険と察し、すんでのところで回避。
「完全消去は後にしておこう。まあ、バックアップはとっておくんだな。」

「せつなー!」
ダメージが重なり変身が解除されたせつなに3人が駆け寄る。

「だいじょうぶ!?」
「ラブ・・・ ラビリンスの人間は寿命がただ管理されているだけじゃないの。命の存在そのものが
管理されているの。いずれはあのイースに命が移れば、私は・・・」
というと、そのまま眠ったようになった。
「せつなはもうイースじゃないんだよ・・・」



「とりあえず、せつなを家で休ませよう」
「そうやな、パッションはんを運ばんと」

すると、シフォンの額が光り
「キュアキュアー、プリップー!」

4人はせつなの部屋に瞬間移動され、すぐにせつなをベッドに寝かせた。

残されたタルトは
「わてだけおいてけぼりかいなー」と一人ごちて、急いでラブの家に向かった。

しばらくしてあゆみが帰ってきた。せつなの様子をみたあゆみは、
「せっちゃん、どうしたの!」

ここではさすがに真実を話すわけにはいかず、
「おかあさん、せつな、今日は疲れちゃったみたいで・・・」
「おばさん、慣れない環境でいろいろあったんです。」
「心配はいらないけど、少し休んだほうがいいんですって」
と、この場を取り繕った。

夜になり、
「どうやらよく眠っているだけのようだし、最近は疲れていたのかも。
二人ともあんまり遅くなったらいけないから、今日はもう帰っても大丈夫だよ」
「そうね、何かあったらちゃんと連絡してね」
美希と祈里は心配に思いつつもラブの家を後にした。

「う・・・うん」
「起きた?」
「私、まだ生きてるのね」
「当たり前だよ!」
「さ、ご飯食べよ。お母さんがおかゆ作ったんだよ。食べられる?」
「ええ・・・だいじょうぶよ。ありがとう、おばさま」

せつなが一口食べる。

「美味しい・・・」
「でしょ? 風邪ひいたときにお母さんのおかゆを食べると元気になるんだ。
せつなが今生きているから、おかゆが美味しく感じるんだよ」
「そうね」
「あのとき、せつなの中にアカルンが飛び込んで、そしたらキュアパッションに
なってたんだよね」
「アカルンが、『やっと会えた』って言ってくれたの。その時のわたしも
確かに生きていた」
「そうだよ、あのときにせつなは、せつなになってたんだよ。だから、
イースに命を持って行かれることなんてないんだよ」
「そうね・・・ そうでなかったら、今まで生きている筈もないわ。」
「それにしても、前にも、サウラーがせつなの影をイースのナケワメーケにして・・・
ラビリンスってしつこいよね」
「前よりは少なくなったけど、今でもまだ眠れないこともあるの・・・
罪を重ねてきた私には悪夢が焼き付いているのね・・・」
「そういうことがあったら、今度はあたしのところへおいで! 
悪い夢が飛んでいくまで、ずうっと抱きしめてあげるから」
「ラブ・・・」
「あたしね、思ってたの・・・どうして4人目のプリキュアが
幸せのプリキュアだったんだろうなって?
幸せって、愛して、望んで、信じて、最後につかむものなのかなあって。
「ハッピーエンド」って言うでしょ?どんなに苦しんでも、どんなにつらくても
最後は幸せになれればめでたしってね。」
「そうね・・・ でも、私は皆に不幸をまき散らしていたくせに、
ラブに、みんなに、幸せを貰ってばっかりで・・・」
「せつなは存在そのものがあたしの幸せ。だから私がすべてを
賭けてでもせつなを取り戻すことを誓ったんだ。
それに、「真っ赤なハートは幸せの証」でしょ?なおさら、せつなが
幸せであってこそだよ」
「ありがとう、ラブ。そうであれるように精一杯、頑張るわ」
「うん・・・そうだ、食器片づけてくるね」
「私が行くわ、おばさまに謝らないと」
「だいじょうぶだよ。今日は無理しないでいいから、ね」
「・・・ええ」

その夜は、ラブがずっとせつなのそばにいた。
悪夢にはうなされずに済んだようだった。



翌朝
「おばさま、昨日は心配おかけしてすみません」
「せっちゃん、もうだいじょうぶなの?」
「ええ、一晩休んだらすっかり元気になりました」
「無理しなくていいのよ。困ったことがあったら何でも言ってね」
「ありがとうございます」

放課後、いつもの公園に集まる。
「せつな、もう大丈夫なの?」
「ええ」
「せつなちゃん、なんかすっきりしたみたいね。」
「私、自分で勝手にイースに呪縛されてたみたい。ラブが振りほどいてくれたの」
「愛のパワーだよ」
「え?」

再びイースが現れた。
「我が名はイース、ラビリンス総統メビウス様が僕。今日こそお前を消去する。
ナケワメーケ!我に仕えよ!」
深紅のダイヤを目の前のテーブルに突き刺した。
「ナーケワメーケー!」

「いくよ!」

4人がリンクルンを構える。
「チェインジ!プリキュア、ビーーートアーーーップ!」
「ピンクのハートは愛ある印!もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!」
「ブルーのハートは希望の印!摘みたてフレッシュ、キュアベリー!」
「イエローハートは祈りの印!採れたてフレッシュ、キュアパイン!」
「真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ、キュアパッション!」
「レッツ!プリキュア!」

「ナケワメーケは私たちにまかせて!」 ピーチ、ベリー、パインがナケワメーケに
飛びかかる。

イースとパッションが対峙し、ぶつかり合う。
今度はパッションも負けない。自信を持って攻撃を受け流し、
次第に反撃に転じる。

「馬鹿な・・・ 旧バージョンのくせに」
「私はあなたの旧バージョンではないわ。東せつな、キュアパッションよ」
「くっ」

「プリキュアトリプルキーック」
3人の連携でナケワメーケを追い詰める。

「今よ、パッション!」

リンクルンを取り出し、アカルンを召喚する。
「歌え!幸せのラプソディ!パッションハープ!」

♪ポンポンポンポンポロロロン

パッションハープに取り出したハートを装着。
「吹き荒れよ!幸せの嵐!プリキュア!ハピネスハリケーーン!」

無数のハートと羽根の嵐がナケワメーケを、イースを包む。

イースは浄化直前で離脱。

「はあーーーーーっ!」
「シュワシュワ~」

深紅のダイヤが溶けていく。

「私はほぼ完全体だったというのに、どして・・・」イースが去って行った。

「パッション!」
「ありがとう、みんな!」
4人が微笑みあう。

一方、クラインはメビウスに報告をする。
「メビウス様、イースの補充がどうもうまくいかないようです」
「やむを得ん、イースはもう使わずともよい。まあ、あのロットは一応まだダメージはないから、
戦士ではなく一般労働者に切り替える。その代り、あれを使う準備をしておけ」
「あの方をですか・・・ わかりました。メビウス様のおおせの通りに」
最終更新:2012年12月17日 00:09