最近、私にはちょっとした楽しみが増えた。
私だけが味わえる、ほんの一時の幸せ。
愛してるあなたの顔を鏡越しで見る至福の時間。
「ラブ・・・、今日もいいかな?」
「お~、来たかぁ~。もっちろん、OKだよ!さ、どうぞ。」
お風呂上がり、私はわざと髪を不完全に乾かしたままラブの部屋を訪れる。
あゆみお母さんには内緒だけど、私のために買ってくれたシャンプーやリンス、実は使ってない。
ラブと一緒のをこっそりお小遣いで買っている。勿論、ラブにも内緒で・・・。
「せつなぁ、もう少し水分拭き取ってからおいでよぉ。パジャマちょっと濡れてるよ?」
最初は心配してくれてたラブも次第に呆れたり、困ったり、ちょっぴり怒ったり。
そんな顔を鏡越しで見るのも幸せに思えて。
「ごめんなさい。ラブが乾かしてくれると思うと何だか焦っちゃって・・・。」
「照れるからやめてよ~。」
そう言って、顔をほんのりピンク色に染めるラブがとても可愛い。
「せつなの髪ってほんとサラサラしてるよね。羨ましいなぁ~」
「サラサラしてないとダメなの?私はラブの髪、好きよ。」
髪だけじゃなく、笑顔も声も暖かい心も、みんな好き。私を大切にしてくれるラブが一番好き。
「ここんとこずっと気になってたんだけどさぁ。」
「何?」
「せつな、シャンプーかリンス変えた?」
そう言って私の顔を覗き込む。ドキっとするぐらい近くにラブを感じる。
「ど、どして?」
別に焦る必要は無いんだけど。やましい事をしてる訳じゃないのに。ちょっぴり自分が面白い。
「ドライヤーしてるとわかるんだ~。せつなの髪の匂い。すっごくいい匂いなんだよ~。」
「ほんと?何だか嬉しいな・・・」
私はどこか照れくさいと言うか、再び鏡越しにラブの顔を確認して。勿論、ラブは私に微笑みかけてる。
「はい!終わったよ。」
至福の時間はあっという間に終わってしまう。あまりにも短く感じてしまうのは何故なんだろう。
「ありがとラブ。いつもごめんなさい。」
「うぅん。また明日もおいでよ!いつでもせつなだったらウエルカムなんだから!」
「ねぇラブ・・・」
「ん?」
「今度は・・・、私がラブの髪を・・・」
真正面からは恥ずかしくて言えなかった。鏡越し、ラブが何だか遠くに感じる。すぐ後ろにいるのに。
「お願いしてもイイ・・・かな?」
ラブの顔がまたピンク、いや赤く染まってるのが私にはわかった。お互い照れてるのも楽しくて。
「でも私はちゃーんと髪を乾かしてくるからねっ!」
「嫌よ。」
「ちょっとぉ・・・」
困惑気味のラブをよそに、私はこう呟く。
「・・・待ちきれないから・・・」
「せつなのいじわるぅ~。」
「ふふ。ごめんなさい。」
私の至福の時間。幸せの一時。お互いを大切な存在だと確認出来る空間。
ラブ、今度は私の部屋でね。
最終更新:2009年08月27日 08:26