「出来れば内密に・・・。せつなぁ~」
そう言って戸惑うラブを見て、私は何か悪い事をしてしまったような気がした。
「せつなちゃん、ちょっと自分の部屋に戻ってもらっててもいいかな?」
「はい。」
空気が変わった。お父さんの顔がちょっと強張り、ラブも下を向いたまま。
不安になりながらも私にはどうしていいかわからず、2階へ向かう事にした。
「心配ないわよ。ちょっと待ってってね。」
お母さんのいつもと変わらぬ笑顔を見て、少しほっとする。優しいお母さんが私は大好き。
もちろんお父さんも。
部屋に戻っても、特に何もする事は無かった。 むしろ、今日もでぇと出来ると思って
いたからお洋服は何を着ていこう?とか、どこへ連れてってくれるんだろう?とか
考えるだけで楽しかった。
ラブと私が写ってる二人の写真を見ながらベッドに横たわる。
目を瞑れば走馬灯のように蘇る楽しい思い出。ほんとに幸せな日々。一緒に過ごせる喜び。
―――ありがとう―――
気がつくと眠っていた私。窓からはうっすら夕日が差し込んでいる。
ラブは!?
胸の鼓動が不安を後押しする。スリッパも履かずにドアを開け、ラブの部屋へ。
「ラブ!?」
「あ、せつな・・・。」
ベッドに腰掛けて天井を見上げるラブ。どこか寂し気。
「お父さんとお話・・・」
「うん・・・。平気だよ。」
平気って何?何か隠してると私は思った。第一、ラブは私を見てくれない。
「怒られたの?私、余計な事言ったのかしら?」
「違う。全部あたしが悪いんだ。」
どして?どして全部ラブが悪いの?私がお父さんとお母さんにでぇとやキスをしてる事喋ったからじゃないの?
心の中に寂しいと言う感情が芽生えた。でも言葉に出来ない・・・。
「せつな。もう秘密にするのはやめよ?」
ショックで呆然と立ち尽くした。何でこうなってしまうの?
やっぱり私は幸せになってはいけないんだ・・・。
「やっぱ嘘付いたらバレるよねー!」
「えっ?」
「デート行くって実は・・・、内緒にしてたんだー。お父さんとお母さんには図書館で勉強しに行くって。」
頭の中がごちゃごちゃして整理するのに時間がかかった。と、同時に嘘は良くないと思い。
「どして嘘付くのっ!?」
「ちょ・・・。待ってってば。何で怒ってるのせつなー。」
「隠し事や嘘はダメってお父さんもお母さんも言ってた!」
「イヤイヤ・・・。それは時と場合で・・・。」
「ダメなものはダメよ!」
「あたしだって恋もするの!せつなとデートしたいの!」
「だからって嘘は良くないわ!」
「あぁ、もぅ!うるさーい!!!」
気が付けば夕日は沈み、窓の外は暗くなりつつあった。
虫の音が、静かな部屋を響かせる。
「私・・・、わからないわ。」
不安になって心配して、落ち込んだ私はどうしたらいいの。
「あたしの事・・・、嫌いになっちゃった?」
ラブの言葉にはっとする。こんな事で嫌いになる訳ないのに。
そう、なれる訳ない。
そう思ったら自然とラブの横に座る事が出来た。
「初めてせつなとケンカしちゃったね。」
「ケンカ?」
「うん。言い争う事。意見のすれ違いって事。」
「ごめんなさい。私、ラブが心配で・・・。」
「うぅん。元はと言えばあたしが嘘付いちゃったからね。」
「ケンカしたら仲直りしなきゃいけないんだよ?」
「そなの?」
「こうやって」
月明かりが差し込む部屋で、大好きな人から仲直りのプレゼント。
「私、またケンカしたいわ。」
「変な事言わないの!」
ラブは寝る前に、ケンカする程仲が良いって教えてくれた。
仲直りの仕方は私たちだけの秘密だって言ってた。
嘘はダメだけど、秘密は良いみたい・・・。
最終更新:2009年08月30日 23:40