昨日の出来事が未だに信じられない。
何もかもが夢のようだった。
まだ、フワフワした感じが体から逃げない。
朝を迎え、わたしは日課の散歩に出かけた。
向かった先はあの川原。わたしが戦ったあの場所。
土手に腰掛けて、流れる水面を見つめる。昨日の激しい戦いとはまるで似つかない、静寂な時。
「あっ」
橋からわたしを見つめる一人の少女。昨日の・・・
「またここに来るとはな。本当に単純な生き物だ、人間と言う物は。」
気づいた時にはわたしの目の前に立っていた。冷たい目をしてこちらを見ている。
「な・・・、何か・・・?」
怖かった。同じ女の子なのに・・・。わたしは体が金縛りにでもあったかのように硬直して。
「他の奴等はどこにいる。」
「し、知りませんっ!」
「隠しても無駄だぞ。それとも・・・、お前から倒してやろうか。」
そう言うと彼女はわたしに近づき、首を締め付ける。人間とは思えない程の冷たい手で。
「く、くるしい・・・。やめ・・・て」
「お前、本当にプリキュアか?恐怖で体が震えてるじゃないか。フフフ・・・。」
「わ、わたし・・・は・・・」
人を見下した態度。笑いすら浮かべ、わたしを侮辱する。
「くくく。昨日の戦いからすると、戦士としてはまだまだ・・・。所詮、お荷物って所か。」
!!!
(わたしは・・・。わたしはお荷物なんかじゃないっ!)
自分で決めた。自分を信じた。人は変われる。
変えれるんだ!!!
「わたしはっ!キュアパイン!!!」
最後の力を振り絞って、首にかかっていた冷たい手を払いのける。
「何っ!?」
―――チェィィィンジ・プリキュアッ!!―――
―――ビーーート・アーーップ!!―――
「イエロハートは祈りのしるし!! とれたてフレッシュ、キュアパイン!!」
「今の言葉、撤回して下さいっ!わたしはお荷物なんかじゃないっ!!!」
悔しかった。やっとみんなと同じスタートラインに立てると思ったのに。
それを否定された事。また何も出来ない自分に戻ってしまうのかと。
「面白い。お望み通り、私が相手をしてやろう。行くぞっ!」
(速いっ!)
やはり戦いになると、わたしは防戦一方の展開になってしまう。
「どうしたキュアパイン!昨日の勢いは何処へ行った!!!」
連続する攻撃に何とか活路を見出そうと様子を伺う。
「っ!まだ!わたしは負けないっ!」
相手のキックをかわし、カウンターの掌ていを浴びせる。
「ぐっ」
ひるんだ隙に、背後へ回り腕関節を決める。これならっ!
「痛っ・・・」
わたしはその声に思わず力を抜いてしまう。
「あっ、ごめんなさい!」
「甘い!」
ほどいてしまった腕はするりと抜け、再び合間見える二人の少女。
「貴様もか。何故、敵である私に手加減をした。」
「わからない・・・。だけど、誰だって痛いのは嫌でしょ?だから・・・」
「お前・・・、それでは自分の命を縮める事になるぞ。」
「わたしは・・・、プリキュアである前に!一人の人間、山吹祈里でいたいんですっ!」
「虫唾が走るな。」
朝焼けが二人を照らす。太陽の光が彼女に差し掛かる。
「答えろ、キュアパイン。」
「何ですか?」
「お前は誰かに愛されてるか?それとも誰かを愛しているか?」
「えっ。あ、うーん・・・。愛されてるかなぁ?愛して・・・、やだっ」
「バカにしてるのかっ!!!」
「ご、ごめんなさーい。あっ!あの・・・」
「何だ?」
「お名前は?」
「我が名はイース。貴様とも長い付き合いになるぞ!」
「宜しくお願いしますね、イースさんっ。」
―――!?―――
「頭がおかしくなる、お前といると。」
「ん?何でですか?あ、今度は戦いじゃなくてお喋りとかおべんと食べたり・・・」
「有り得ない!!!チッ・・・、我が名をよく覚えておけ、キュアパイン!」
最後は慌ててたみたいだけど、わたし、何かしたっけ?
太陽さんが眩しくて最後までイースさんを見れなかったけど。
あー、首痛いよぉ・・・。
最終更新:2009年09月09日 00:36