わたしには全てが夢に思えた。その光景を目の当たりにして、正常にいれるはずがなかった。
せつなさん・・・、いや、イースが近づいて来た目的はわたしたちを倒す事だったから。
わたしたちは愛と平和を守るための戦士、――プリキュア――
美希ちゃんとわたしも応戦しようと身構える。
けれどラブちゃんはそれを拒否して。
「これは・・・、あたしたちの戦い・・・。」
プリキュアとして戦ってきた仲間。それ以前に幼馴染み、そして親友。何でも話せる仲。
けれど、あんな顔したラブちゃんを見るのは初めてだった。
何かを決意しているような殺気だったあの感じを。
隣では美希ちゃんが俯いて唇を噛み締めていた。いつも凛と構えていた美希ちゃんとは
まるで似つかない表情。今にも泣きそうなその顔を、わたしは今でも覚えている。
そして、目の前で繰り広げられる残酷なシーン。あんなに仲良かった二人が戦っている。
夢なら早く覚めて!とずっと心の中で叫んでた。だって・・・
――美希ちゃんが悲しんでるから――
美希ちゃんはラブちゃんを好きだったんだよ?ずっと近くにいたからわたしにはわかるの。
だけど、ラブちゃんは美希ちゃんの言葉を振り切ってせつなさんとの運命を選んだ。
そう。ラブちゃんはせつなさんを愛しているのよね。
苦悩の戦いが一旦幕を閉じ、ラブちゃんの家へ戻るわたしたちに笑顔は無かった。
もちろん、ラブちゃんが落ち込んでるのは心配だったけれど、わたしはそれ以上に美希ちゃんが落ち込んでいるように思えた。
見ていて辛かったし、胸が苦しかった。
思わずわたしは泣きそうになる。それを察知した美希ちゃんはわたしを見てウインクを投げかける。
いつものサインだ・・・。
ラブちゃんを励ます時はわたしに。
わたしを励ます時はラブちゃんに。
「しっかりしなさい!」
ラブちゃんとわたしは一人っ子。いつも美希ちゃんはわたしたちのお姉さんだった。
だけどホントは嫌だった・・・。
〝わたしだけ〟のお姉さんでいて欲しかった。
だから二人でいれる時はほんとに幸せだった。美希ちゃんを独り占めに出来るって。
気が付いた時には、それがわたしの初恋=片思いになっていて。
けれど、3人でいる時もわたしは幸せだった。ラブちゃんはいつも優しくしてくれる。
美希ちゃんがいなければ、わたしはラブちゃんに恋してたはずだから・・・。
都合良過ぎるのかな?わたしって。
美希ちゃんは優しくラブちゃんを抱きしめていた。今も昔も変わらぬ温かさで。
羨ましかった。
ラブちゃんにも幸せになって欲しい。ラブちゃんが苦しむのもわたしは嫌だから・・・。
「話し合えばきっと分かり合えるって私、信じてる!」
一瞬、美希ちゃんの表情が曇ったのをわたしは見逃さなかった。
それでも心配なんだよね。美希ちゃんも苦しいんだよね。
再び、泣きそうになる自分を落ち着かせる。
美希ちゃん、今度はわたしが温もりを伝えたい。あなたのお姉さんになってあげたい・・・。
「そんなに強がらなくてもいいんだよ?」と。
神様、どうかラブちゃんと美希ちゃんとせつなさんを幸せにしてあげて下さい。
そして、いつかわたしも・・・
最終更新:2009年09月12日 00:09