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時々考えていた。
もしもあの時、せつながパッションとして生まれ変わっていなかったら。イースとして寿命を全うしていたら…ラブはアタシのモノになっていたのだろうか?

せつなが嫌いだとか、せつなが憎いとかいう感情は、不思議となかった。
今までたくさんツライ目にあってきたせいか、人の痛みがわかる子。
イースの時に持っていた憎しみは、生まれ変わった時に消え失せたようだ。

今では明るく振る舞えるようにもなり、よく笑顔も見せる。
皆に愛されるすっかり可愛い女の子になり、イースの面影など跡形もない。
けれど、それはラブのおかげ。

始めは親友だったのだろう。
けれど、他の誰よりも強い絆で結ばれた者同士。
そんなふたりが一緒に住みはじめたのだから、それが親友以上の間柄に発展するのは、時間の問題だとわかっていた。

ふたりが結ばれた翌日、わかってしまった。
ふたりが時々絡ませる熱い視線。
テーブルの下でこっそり握りあう手と手。

アタシにはわかった。
ラブが遠くに行ってしまったこと。
一緒に行ったのがせつなだったこと。
ふたりだけの王国があり、今もふたりはそこにいると。
アタシにはわかった。アタシはずっと、ラブだけを見ていたから。

ラブはいつもアタシを照らす。あの太陽のような笑顔で。
だから、勝手に勘違いしてしまっていた。
アタシだけを照らしてくれていると。いつまでもそばにいてくれるのだと。
そうじゃなかった。太陽は月だけを見ていた。

ラブとせつな。ふたりは運命なのだと素直に思う。
アタシの入り込む余地なんて、1ミリだってない。
だから、悲しさよりも、大好きな人が幸せで嬉しい。ラブが幸せなら、それがアタシの幸せ。
ラブの幸せをアタシの幸せにすればいい。
負の感情なんて、そんなのアタシに似合わない!

爽やかな風が髪を撫でた。
秋の空の下で思いに耽りながら、紅茶を飲んでいると、心が落ち着く。
やっぱりアールグレイ最高だなぁ。
今日はアタシなりに、気持ちに整理を着けた。
誰にも知られず、こっそり失恋。なんてアタシらしいかもね。
ん!アタシ完璧!

あ、ブッキーが来た。ふふ、走ってくるブッキーって可愛いな。

いつの日か、ラブ以上に思える人に巡り会えるのかな。
そしていつか…その人に愛される女の子になりたい。
それが今のアタシの目標なのだ。
最終更新:2010年10月25日 11:07