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「ホント完璧だったわね、ラブ。」

「うん。せつなさんも嬉しかったと思う。」


身を投じてまで、闇の世界から愛する人間を奪い返したラブ。
と、同時に、それはアタシが初めて味わった〝失恋〟


ラブたちと別れてから、アタシはブッキーを誘って、近くの公園へ寄り道した。


今のアタシの状態じゃ、とても一人にはなれなかったし。
勿論泣いたりなんてしないケド。



「あーあ、せつなは今頃、幸せの真っ只中なのよね。」
「うん。」

「それも、お父さんとお母さん公認なのよ?」
「うん。」

「オマケに一緒に暮らすとか!」
「凄いよね。」

「アタシたち、まだ中学生よ!!」
「うん。」

「さらにはプリキュアなのよ!!!」
「凄いよね。」



「ちょっとブッキー。話聞いてる!?」

「わっ!き、き、聞いてるよ…」

ハァ。熱くなっちゃったアタシもカッコ悪いケド、まるで他人事のような
返事をするブッキーが不思議に思えて。


「ブッキーはラブを取られて悔しくないの?」

「取られてって…。表現悪いよ美希ちゃん…。」


確かに。少し冷静になろう。今のアタシ、過去最高に完璧じゃない。


「ちょっと待ってて?飲み物買ってくるね。」
察してくれたのか、ブッキーは自動販売機まで小走りで駆けていく。


ほんの少しまで、横に居てくれたブッキーがいない。

一人ぼっち

急に寂しくなるアタシ。



泣かないって決めたの。負けてたまるか!



「おまたせ。はい、どうぞ。」
ブッキーが差し出したのは、アタシが大好きなロイヤルミルクティ。

「ありがと。アレ?ブッキー、コーラ飲むなんて珍しくない?」

「うん。」
普段はオレンジジュースとかお茶しか飲まない子なのに。
変ね、さっきから。


「美希ちゃん」
「何?」


「わたしだって悔しいし寂しいよ。ずっと3人で一緒にいたんだもん。」
「でしょ?」


「でもね、二人が幸せなら、わたしたちは祝福してあげなきゃいけないと思うの。」
「そりゃ、そうだけど…。」


「ラブちゃんはこうなる事をずっと、信じてたんだと思う。」
「………」


「だからね、わたしたちも二人の幸せゲットを祈ってあげなきゃ!」



「ぷっ。クスクス…」
思わずアタシは噴出して笑ってしまう。ブッキーには申し訳ないんだけど。

「何で笑うの美希ちゃん!」
「だって、言ってる事がラブみたいよ?」


「そう…かなぁ?」

ブッキーは優しい子。アタシも見習わなきゃと思う。


〝プシュ〟

「きゃっ」
小走りで戻ってきたせいで、コーラが溢れてしまった。

「チョット何やってんの!」
「ごめんなさい…」
ちょっと、おっちょこちょいな性格もどこかラブに似てたり。

「ぷっ。」
「もぅ、また笑うー。」


「全部飲めるのブッキー?コーラなんて飲むトコ、見た事ないわよ。」

「うーん…。何で買っちゃったのかなぁ?」
今思えば、ブッキーなりに背伸びしたって感じだったのかしらね。

「チョット飲んじゃったケド。」
そう言ってアタシは飲み物を交換する。ブッキーだけ間接キスだけど。


「失恋なんてするもんじゃないわ。体がいくつあっても耐えられないし。」

「そーだよね。わたしも辛くて、立ってられないと思う。」

「ま、これもキレイになるための勉強だと思って乗り越えてみせるわ!」
「わたしかんぺき!」
「そう言ってくれるとアタシ信じてた!ってコラ!」


無邪気に逃げるブッキーを、アタシは笑顔で追う。
ま、あっとゆー間に捕まえちゃうんだけど。


「美希ちゃん」
「何?」



「わたしじゃだめ……かな?」

「えっ?」


「美希ちゃんの力になりたい。支えになりたいの。ラブちゃんには負けちゃうけど…」


「そんな事ないわよ。ブッキーだって全然ラブに負けてない。アタシだって、せつなみたいに純粋なんだから。」


「くすくす…」
「チョット!そこ、笑うトコじゃないわよ。」


「お返し。」

「もう。この子ったら…」


いつの間にやら、失恋が恋に発展しつつある訳で。

不思議。ほんと一寸先は………、何だっけ?


あ、恋。でいっか!


「ラブちゃんとせつなさん、美希ちゃんとわたし。どっちが幸せになれるかな?」

「さぁね。でも、勝負するならアタシたちは負けないわよ!」
「うん!」


壊れかけたアタシのハート。一人だったら壊れてた…かな?


「美希ちゃん、コーラ飲ませて?」
「ブッキーこそミルクティ飲ませてよ」

~END~
最終更新:2009年09月23日 01:43