――どして、ブッキーは私を抱きしめたのかしら?――
二人でのダンス練習は思った以上に楽しく、尚且つ新鮮に思えた。
練習着も私にピッタリで、激しい体の動きでも窮屈にならない。
気が付けば、終始笑顔だった私がいた。
普段はラブとほとんど行動を共にする。
とても幸せな時間。時々しつこかったりするけれど、愛されてる証拠なんだって割り切ってる。
もちろんやり返しちゃうけど。
ブッキーとの距離が短くなったのは、やはりダンス合宿の時。
人前で笑顔になるのは苦手だった私。
そんな私を導いてくれたのは祈里、あなただった。
「ラブちゃんと美希ちゃんは居残りねー。センターポジションの時が…」
ミユキさんの少しがっかりした表情。
「とほほほほ…」
ラブもがっかりした表情してる。
「次こそは!」
美希だけ元気。ちょっと面白い。
「祈里ちゃんとせつなちゃんは上がっていいわよー。お疲れ様。」
「ありがとうございましたっ!」
「あ、ありがとうございました。」
「せつなぁ~」
「ほらっ!しっかりする!気合入れないとまだまだ終わらないわよ!」
まるで美希が先生みたい。
「くすっ」
「ん?」
隣ではブッキーがその光景を見て笑ってる。口に手を当てながら。
「あ、シャワー浴びに行くけどブッキーは?」
「えっ…。う、うん…」
少しばかり、頬が赤くなったように思えた。ブッキーを見ていると、ほんとに〝女の子〟って感じがする。
私はいつも、ラブの隣か少し後ろに付いて歩を進める。
気が付くと私が前を歩き、ちょっと後ろを付いてくるブッキーがいた。
「せつなちゃん…」
「何?」
「今日は…、ありがとう。私、楽しかった…」
小さな声で呟く祈里。さっきより確実に頬は赤く染まってる。
「?ラブや美希とは楽しくないの?」
ちょっと意地悪な質問だったかしら。もちろん祈里は戸惑う。
「楽しい楽しいっ」
手をバタバタさせて慌てる姿がおかしくて。
「ふふふ。」
「せつなちゃん意地悪…」
「そうかしら?」
「わたしと踊るの……、嫌…かな?」
ブッキーの少し潤んだ瞳。
なんだろう、この感じ。
前にもどこかで…
「ダメだよ…ね。急に抱き付いちゃったりしたし。…本当にごめんなさい…」
さっきは微笑んでたブッキー。顔が赤くなったと思ったら、今度は俯いちゃって。
不思議な子ね、祈里って。
「嫌じゃないわ。踊るのも、抱きしめられるのも。」
「えっ?」
「一度しか言わないわ。」
「あ……。うん」
おかしいわね。顔を上げたと思ったら、また下向いちゃった。
私以上に恥ずかしがりなのね、ブッキーって。
「ね、ブッキー。」
「ん?」
「こんな私ですけど、今後も宜しく。」
「うん!」
笑顔に戻った。どして?
「じゃ、また後でねっせつなちゃん!」
「え?一緒にシャワー浴びないの?」
―――!!!???―――
一人取り残された私。ブッキーは走ってどこかへ行ってしまった。
どして?
最終更新:2009年09月26日 12:17