青のプリキュアは、私が何もせずともこちらの罠に嵌った。
次は、黄色のプリキュア。
山吹祈里。
しかし、どうしたものか。
祈里はラブとは違い、私と親しくない。
しかも私に対し警戒心を持っている。
美希のように、一人でこの占いの館に来ることもないだろう。
ラビリンスが作成したプリキュアのデータに目を落とす。
資料によれば、祈里の家は動物病院を営んでいるらしい。
そういえばラブが、
祈里は、獣医を目指していて、動物には詳しい。
と言っていたのを思い出す。
ここに付け入る隙があるかもしれない。
私の口から知らず知らずのうちに、含み笑いが漏れる。
数日後
ラブに会いたいというメールを送ると、すぐに返信がきた。
うまい具合に3人でダンス練習をしているらしい。
目の前には、傷ついた小鳥。私が用意したものだ。
私の作戦は、傷ついた鳥を森で拾ったということにし、
祈里の家の動物病院に診てもらう。
これなら、この先ラブを介さずとも、
祈里に連絡が取れるし、家まで行く口実になるだろう。
親しくなれば後は、こちらの罠に誘い込めばいい。
私がラブ達がいつも練習をしている公園につくと、
「せつなーー、こっちこっち」
とラブが大きく手を振ってくる。
その後ろには、祈里も美希の姿も見える。
「こんにちは、ラブ、美希、山吹さん」
「あれー、美希たんとせつな・・・」
「せ、せつな」
焦ったように、美希が私を見てくる。
私は大丈夫よ、といった風に美希に微笑みかけ、
「実はこの前街で偶然会って、ご一緒させて頂いたの。
ねえ、美希」
と美希に同意を求める。
「う、うん、そうなの」
「へー、そうなんだ、二人は仲良しさんなんだね」
ラブって本当に単純な子。
美希は体を強張らせ、こちらを全く見ていない。
そんな二人が親しい訳ないではないか。
祈里の方を見ると、怪訝な表情で私を見ている。
「それで、せつな、急用って何?」
とラブが聞いてくる。
「実は今日、山吹さんに用があって。
森で小鳥を拾ったんだけど、怪我をしていて
山吹さんの家は動物病院というのを思い出したの」
「ちょっと診てもいい」
「ええ」
祈里に小鳥を手渡す。
「・・・」
無言で、傷の具合を見ていたかと思うと、急に顔を上げ、
「せつなさん、この子、私が預かってもいいかしら」と言う。
「ええ、勿論。
でも拾った責任があるし私も病院までついていってもいいかしら。
私は山吹さんの家に行くから、ラブと美希は一緒に帰ったら」
「そうだね、美希たん帰ろう」
美希とラブの二人と別れ、祈里と病院へ向かう。
それから、私がいくら話を向けても、何か考え込んでいるかのように、生返事ばかり。
本当にやりにくい子。
ラブや美希だったら、なんらかの反応があるだろうに。
程なく、祈里の家が見えてくる。
祈里は突然立ち止り、
「せつなさん」と私の名を呼ぶ。
急に名前呼ばれ、私も立ち止ってしまう。
「この子、森で見つけたということよね」
「ええ」
「でも、この傷自然にできたものじゃないの、多分人が傷つけてできた傷・・」
「・・・でも、私は森で拾っただけだから」
「そう」
と言って、祈里は俯く。
暫くして、何かを決意したかのように、顔を上げた。
「でも、この子、せつなさんのこと、怖がってる」
変なこと言ってごめんなさい。と頭を下げ、家の方に駆け出す祈里を、
私はただ、呆然と見送るしかできなかった。
その頃。
美希とラブの二人は・・
何よ、さっきのせつなの顔。
お膳立てはしたわよ、後は頑張ってねという感じの笑顔は。
「ねえ、美希たん、さっきから顔赤いよ、熱でもある?」
と言って、ラブがアタシの額に触れようとする。
ラブはいつも他人のために一生懸命。
ラブのこういうところは好ましいのだけど、今のアタシには洒落にならない。
ラブ、ごめんね。アタシは本当に病気じゃないの。あ、でも。恋の病か?
額に触れようとする手を邪険に振り払ったせいか、
ラブは目を潤ませている。
まったく、アタシの方が泣きたいわよーー。
美希の煩悶は続く・・・
了
最終更新:2009年11月03日 23:26