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わたしと美希ちゃんは二人に別れを告げると、いつもの帰路へ歩を進める。

「今日はどうなる事かと思ったわよ。」
「あのノーザってゆう人、わたし……怖い…」

ラビリンスから送られてきた最高幹部、ノーザ。
わたしたちはふと、不安に襲われる。

けれども、何度もその不安や恐怖からわたしたちは這い上がってきた。
自分たちの可能性。わたしたちの役目。希望は捨てちゃいけない。


―――私、信じてる―――


「ねぇブッキー。これからちょっと寄り道しない?」
「えっ?」
「アタシの読者モデルの最新号、実は家に届いてるの!」
「ほんと!?でもね…」
「ん?用事あるの?」

「実は……」
美希ちゃんのお母さんにお願いして、こっそり届けてもらってたり。驚かそうと思って。
だからほんとは今日、誘うのはわたしの方な訳で。。。


「ママったら呆れちゃう…。なーんにも言わないんだもん。」
「そりゃそうだよ…。内緒にしといてってお願いしたんだもん。」

さっきまでの戦いの事や、不安や恐怖なんて美希ちゃんと居れば
どこかに飛んでっちゃう。


わたしたちの調子も元に戻ってきたようで。自分の心があったかくなるのがわかった。
たまには、ラブちゃんやせつなちゃんみたいな関係に便乗したいなって……。


「おじゃましまーす」
「何か持ってこようか?」
「ううん。それより、早く見せてよ!ってアタシが言うのも変だけどね。」

すっかり読者モデルとして活躍してる美希ちゃん。それを見るのがわたしの楽しみ。
普通なら憧れちゃうんだけど、美希ちゃんはすぐ手の届く……。

――――大切な人


「この洋服、秋用にしてはちょっと派手すぎてアタシは嫌だったんだ。」

「そなの?とっても似合ってるけど?」
「わかってないわねー。」

「うーん…」

「アタシが着たかったのはき・い・ろ。」
「黄色?」
「ほら、次のページ」


開かれたページには、鮮やかに着飾れた黄色の美希ちゃんが。
「わぁ~。とっても似合う!」
「でしょ!大好きな人のイメージカラーよ。それも秋とバッチリ!アタシ、完璧!!!」

嬉しくて。思わず、わたしは美希ちゃんに抱きついちゃって。
あ、ラブちゃんだったら覆い被さっての方が正しいかも…。

「ちょ、ちょっとブッキー。」
ビックリする美希ちゃん。でも、わたしは笑っているだけ。

「もう、なんなの?笑ってばかりで。変よブッキー。」
と言葉にするも、わたしを見つめる美希ちゃんの瞳はうっとりしていて。

なにをするわけでも、話すわけでもなく、体を寄せ合う2人。


しばらくして、どちらかが一方の名前を呼ぶ。
しかし、眠っている事に気付いて、優しく微笑み、自分も再び体を預けて目を閉じる。


ガチャ


「祈里ー、もうすぐご飯………。くすくす…、仲がいいのね二人とも。」
2人の幸せそうな寝顔を見て、そっと毛布をかけてくれたお母さん。
後々、話を聞いたらちょっと恥ずかしくて。


秋はわたしの季節。


山吹色はわたしたちの心をあったかくしてくれる。


「今度は人の少ない時間だけにするから…」
「いきなりなんだもんブッキー。勘弁してよね!」

「でもラブちゃんとせつなちゃんだって…」
「ま、負けてられないわね!」

~END~
最終更新:2009年10月11日 23:29