(あったあった。これで超幸せゲットしちゃうよー!)
100円玉貯金がまた減っちゃったけど、これもせつなの喜ぶ顔が見たいから。
そう心で呟いて、急いで家に向かう。
せつながダンスレッスンから帰ってくる前に明日の準備をしなくちゃ!
「ただいまー!」
「お帰りなさい。おやつあるわよー。」
「お母さん!ちょっとコレ見て!」
あたしが差し出したのはお弁当レシピ本。
「あら、随分凝ってるのねぇ今のお弁当って。」
「でしょでしょ!あたしも作ってみようかなーって。」
とは言え、いくら料理上手なあたしでも、最大の難敵は〝早起き〟だったりして。
「で、お母さんは何をすればいいのかしら?」
「あは。バレてたか……。じゃなくて!起こしてくれるだけでイイから。」
「あら、意外ね。もしかしてー、せっちゃんのため?」
「うん!」
勢いで買っちゃったレシピ本。幼稚園で職場体験とも重なって、意気込んでは
みたものの…。どんなのを作ろうか、まだ考えてなかったり…。
あ!でもコレだけはハッキリしてるの。
―――せつなを喜ばせたい―――
「そうねぇ。まずはラブが、どんなお弁当を作りたいか絵でも描いてみたら?
レシピ本通りに作っても〝ラブらしさ〟が出ないでしょ?焦る事はないわよ。
その間にお母さんはお買い物行って色々買ってくるから。」
「うん!よろしくねお母さん!」
って絵なんか描いてたらせつな帰ってきちゃうじゃん!
しばらく自分の部屋で集中してみる。
あたしの特製おべんと…
愛がいっぱい詰まった手作り…
おかず冷めてもあたしたちの愛は…
何このあったか妄想。いつものあたしが戻ってきちゃったじゃん。
結局、ベッドの上でゴロゴロしながらレシピ本を読んでると…
「ただいま。」
「だぁーーーーーーーーーー!お、おかえり。は、早かったねー」
慌ててレシピ本を隠す。見付かったらプラン台無し。100円玉貯金も報われないよ。
「ん?今、何か隠したでしょ?」
「いいえ。」
「怪しい。」
「な、何?どうかした?ニヘヘ~」
「ちょっと見せなさいっ!」
「やだ。」
「やじゃないの!」
「だーめ。」
「もう!」
せつなはあたしの枕元へダッシュ。とっさにあたしは
布団と一緒にせつなに覆い被さる。
「もう、なんなの?」
「お願い。明日までナイショにさせといて…。ね?」
「悪い事じゃないのね?」
「うん。」
「わかったわ。疑ってごめんなさい。」
せつなはそう言うと、あたしと寄り添いそっと体を預ける。
しばらくして、どちらかが一方の名前を呼ぶ。しかし、眠っていることに気付いて、
優しく微笑み、自分も再び体を預けて目を閉じる。
ガチャ
「ラブー、何作るか決まった……。うふふ、考え疲れちゃったのかしらね、二人とも。」
(ここは一つ、お母さんが頑張っちゃおうかしら。)
~夕飯後~
「ごめんお母さん。まだ何作るか決まってないんだ…」
「あ、大丈夫よ。一通り考えてみたから。この通りに作ってみたらどうかしら?」
「うわぁー!すっごーい!こっちはあたしので、こっちがせつなの?」
「そ。我ながら良く描けてるでしょ?で、これがレシピね。」
あれ?これってほうれん草のペーストで作ったクローバーだけど、お母さん…
「そ、それはじ、自分でやってちょうだい…ね?」
「はーいっ」
ありがとうお母さん。あたし一生懸命作るよ!
せつな、明日楽しみにしててね!
絶対に幸せ、ゲットだよ!
お金で買えないレシピ。
幸せのレシピは愛情いっぱい!
人の少なくなった時間。こっそり忍び込む一人の堕天使。
(お弁当レシピ本?隠す必要なんてあるのかしら…。どして?)
最終更新:2009年10月13日 02:22