「シフォ~ン、そろそろ起きよっか。」
「……キュア……キュ…」
すっかりあたしの家族となったシフォン。毎日感じ取れる成長が
ほんとに嬉しい。今日も微笑んでシフォンを見つめる。
「こーして見てはると、ピーチはんはシフォンのほんまもんのおかんみたいやで。」
タルトの何気ない一言。でも実は、ちょっと当たってるのかもしれない。
人に優しく。動物にも優しく。あ、妖精にも優しく…だ。
でもあたしはまだ14歳。元気いっぱい、夢いっぱい。常に笑顔で食欲旺盛。年中無休。
最後はチョット違うかな.....
そう考えながらせっせと身支度をして。
「さ~て、今日はどこへ行こっか?」
「ラ~ブ…。どんぐ…い」
「えぇー!?またどんぐり王国行くの???」
シフォンはあれから、どんぐり王国に行くのが大のお気に入り。
けれど、ラビリンスが襲ってくるかもしれないから頻繁には外へ連れて行って
あげる事が出来ない。それは歯がゆいし、悔しいし、何よりシフォンが可哀想で…。
「ピーチはん、一人は絶対にあかんで。」
「うん。わかってる。」
こんな時、あたしはいつも頼ってしまう人がいる。もちろん今日も。
取り出したリンクルンでメールを送る。
[今日もどんぐり王国にあたしたちは遠足に行きまーす♪一緒に行こっ!]
送信してから間もなく帰ってくる返事。それを待つだけでもウキウキしてるあたしがいて。
[うん!急いで行くね♪あ、でもラブちゃんたちはゆっくり来ていいのよ?気をつけてね♪]
いつもあたしたちを心配してくれる優しい子。
自然と微笑むあたし。
だって、あの子の事を.....
大きなトートバッグにタルトとシフォンを忍び込ませていざ〝遠足〟へ。
薫る秋風に誘われて、あたしたちは歩を進める。
とても気持ちのいい日差しと、あなたに会える喜びを胸に。
「そうだ!カオルちゃんのドーナツ持っていこっか!」
「さっすがピーチはんや~」
「プリプー!」
「でーも、〝おやつ〟は一人300円までだよー。」
「そんな殺生なぁ…」
「キュア~?」
すっかりお母さん気取りのあたし。ちょっとおかしくて。
でも、こんなやり取りですらあたしには幸せに感じる。
何でもない事が、一番の幸せなんだなって。
そう微笑むあたしは、あなたの大きな瞳に可愛く映っているのかな……。
(映ってるってあたし、信じてるよ。)
~END~
最終更新:2009年10月24日 04:28