クローバーボックスが無事に戻り一安心の美希だったが、自分のせいでシフォンを危険に晒したという自責の念は、そう簡単に消えるものではなかった。
あの時見つかって本当に良かった…もし見つからなかったらって考えるだけで身体が震えるわ。
公園のブランコにひとり腰掛けながら、美希は悪い想像に怯えていた。深く考える程にその事の恐ろしさが身に染みて、涙まで浮かんでくる。
何だかアタシ、泣いちゃいそう…
「ううっ…ひっく」
しゃくりあげようとしたその時、後ろから誰かの温かい腕に抱きすくめられる。
この匂いは…せつな?
「ひとりぼっちで泣かないの」
この低くて落ち着いた声、やっぱり…せつなだわ。背中に感じるせつなの温もり――――温かい。
「美希のことだから、どうせまだ自分を責めてるんだと思って探してみたら…案の定なんだもの。わかりやすい性格ね」
行動パターンを読まれていることが恥ずかしくなり、美希は急にムカッとする。
「何よ。わかりやすい性格で悪かったわね」
「クスクス…その台詞、言うと思った」
「もう!何?からかう為にわざわざ来たの!?」
「まさか。――――心配になったの」
せつなが…アタシを…?嬉しいような、くすぐったいような、恥ずかしいような。何?こんな気持ち、初めて。
「美希のこと…なんだか放っておけなくて」
せつななりに心配してくれてるんだわ。やだ、すっごく嬉しい…でもあんまり心配かけちゃいけないわ。
「し、心配ご無用!アタシはいつだって完璧なんだから!!」
そんな美希を胸に抱くせつなは、抱きすくめた腕に一層力を込める。
「強がらないで。わたしの前では素直になっていいのよ。どんなに弱い美希でも、わたしには全部見せて欲しいの」
な…やめてよ。まるで愛の告白じゃないの。――――って、ええッ!?まさか…よ、ね?
「せつな…?」
「ダメ振り向いちゃ」
後ろを振り返ろうとした美希をせつなが制す。
「顔、見ないで。今すっごく恥ずかしいんだから…」
せつなは美希の背に額をくっつけ、しゃがみ込んだ。
「イヤよ」
立ち上がった美希は、せつなのそばに行き、同じようにしゃがみ込む。
「せつなだけアタシの恥ずかしいトコ見るなんてずるいじゃない。せつなの恥ずかしいトコ、アタシだって見たいの!」
真っ赤になった顔を上げ、せつなは潤んだ瞳で美希を見つめる。
「美希…わたし…」
お互い膝立ちの姿勢となり、抱きしめ合う。
「背中合わせもいいけど、やっぱりこの方がアタシ好きよ。せつなが全部見えるから…恥ずかしがってる顔も、ね」
「もう!知らない!」
「ゴメンゴメン、今度泣く時は、ちゃんとせつなのそばで泣くことにするから」
「…絶対よ」
「ウン」
さっきまでの恐怖は嘘のように消え去り、美希の中に残ったのはただ、目の前の少女への狂おしいほどの愛おしさだけ。
最終更新:2009年10月26日 21:57