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ダンス練習を終え、私とブッキーは一足お先にレッスンスタジオを後にする。
ラブと美希は居残り練習。怒られながらも練習する二人の姿は少し、輝いてるようにも見えた。


すっかり日が暮れるのも早くなり、顔に当たる空気も厳しさを増す。

(これが冬なのね…)

初めて体験する寒さ。けれど、いろんな事を経験するのは本当に楽しくもあって。


「ほんと寒いね。せつなちゃんは冬って好き?」
足をバタバタさせながら私に質問してくるブッキー。見ている私まで寒くなりそう。

「えぇ、好きよ。ブッキーと同じくらい。」


信号機は4回も変わった。ずっとブッキーは止まったまま。
私、何か変な事言ったかしら?
ブッキーの顔を覗き込むとほっぺがもの凄く赤くなっていて。

「風邪…引いた?顔、赤いけど。」

急に顔を上げ、咄嗟に右へ左へと何回も動かす変なブッキー。
「違う!違う!ちょ、ちょっと驚いちゃっただけなの!」

物凄い勢いで喋る彼女にちょっと後ずさりしながら、私は呟く。

「手、繋がない?寒いし。」

再び動きの止まるブッキー。また顔を下に向けて。私、喋らない方がいいのかしら…。

「せ、せ、せ、せつ…なちゃ……ん…」
しどろもどろ。そんな彼女は俯きながらも、右手の小指をちょっとだけポケットから出して。
かすかに震えてるその小指。

そんなに寒かったのねブッキー。だったら早く言ってくれればいいのに、と。
相変わらず引っ込み思案な所がある彼女。もっと打ち解けてくれればいいのに。
私はあなたの前なら正直な自分でいられるのよ?

「あら、冷たくないのねブッキーの手…」
私の思っていた温度とは違った彼女の手。もの凄く熱くて、ちょっと汗ばんでいると言うか。

「あわわわわ………。わ、わたし信じてた!!!」
「何を?」
「ふぇ!?」

おかしくて涙が出ちゃう。もうさっきから私の隣にいる人、何だか変。
どして?どしてブッキー。寒くてパニックになっちゃったのかしら。

「ゆ…、夕飯まで…時間…」
「何?」

「あ、あのねせつなちゃん。」
「なぁに?」


「アイス食べにいこっ!」

「えっ?こんなに寒いのに?大丈夫祈里!?」
理解出来なかった。汗だくだくになった時こそ、食べるアイスは絶品とラブは教えてくれた。
こんなに寒いのに冷たい物を食べるなんて。

「だ…だめ?」
(!?)

頬を染めながら見詰めてくるブッキーにちょっと……心……惹かれて。

「わかったわ。行きましょ。」
「良かった…」
そう言うとブッキーは私の左手をぎゅっと握って。

「早くいこっ!」
「ちょ、ちょっとブッキー!」


結局、寒い季節でも食べるアイスは絶品だと言う事は、後々わかったのだけれど。
ブッキーの仕草や行動は今ひとつ理解出来なくて。

でも…

意外と大胆な所も彼女は兼ね備えてるみたいで。



「ここ…、わたし舐めちゃったとこだけど……おいしいよ?」


~END~
最終更新:2009年12月05日 12:06