ドアを閉める。
自動ロックの扉は、それだけで
勝手に鍵がかかる。
着替えの入ったバッグを放り投げ、
ベッドに転がる。
遠くまでロケに来た。
1泊2日で、撮影漬け。
表情が決まらなかった。
スタッフの反応も、いまいち。
「ふぅ...」
ため息をつく自分が、
嫌になる。
シャワーを浴び、
持ってきた寝巻きに着替える。
乾燥防止のため、
空調を切る。
湿度調整のため、部屋中に
濡れタオルを掲げる。
足元灯だけ灯った状態にし、
ベッドに入る。
表情が決まらなかった理由は
わかっている。
帰りたいから。
寂しいから。
たった2日、会わないだけなのに、
寂しい。
リンクルンを開き、
メールを読み返す。
「撮影頑張って!
おみやげ期待してるわ」
ちゃめっ気のあるメールも
打てるようになったのね。
せつな。
突然、リンクルンが光って
アタシはベッドの中で軽く跳ねた。
せつなからのメール。
「撮影はどう?
案外、ホームシックにかかってたりして」
どきっとした。
せつなは、人の気持ちに
とても敏感な子。
ラブよりも、ブッキーよりも
アタシの心の奥底を、見抜く。
せつなになら、甘えられそう。
ダメ。
アタシは、お姉さんじゃなきゃ。
返信画面を開く。
ぼんやりと、文字を打つ。
打った文字を見て、
また、ため息。
「あいたいよ」
こんなもの、
送れるわけないじゃない。
がくんと、部屋が揺れた。
「きゃっ!」
布団に潜り込む。
部屋が、軽く揺れている。
「地震...?」
しばらくすると、揺れがおさまった。
ゆっくりと、布団から顔を出し、
リンクルンに視線を戻す。
「メールを送信しました」
やってしまった。
布団の中が、
突然赤く光った。
眩しさに、目を閉じる。
まぶたに感じる光が消えた。
ゆっくりと目を開く。
パジャマ姿のせつなが
すぐ隣に横たわっていた。
「ちょっ!...せつな?」
「美希が、会いたいって...」
「いや、それは...」
「私も、美希をひとりぼっちにしないわ...」
そんなこと、言わないでよ。
寂しかったんだから。
おそるおそる、せつなの胸に
顔をうずめる。
せつなの体温。
せつなの匂い。
もう、我慢できない。
せつなの首のつけ根に、
口づける。
「んっ...!」
せつなの体が、ぴくんと反応した。
「こんなことしても、せつなは
アタシを受け入れてくれる...?」
答えは無かった。
アタシの頭が、せつなの手で
胸元にぎゅっと押しつけられる。
せつなの髪に触れる。
さらりとした感触。
髪の匂いが拡がる。
顔を近づける。
唇を重ねた。
予想していたよりも、もっと
やわらかく、甘い感触。
唇を離す。
「とまらなく...なっちゃうよ」
答えはなく、せつなの指が
アタシの髪を梳く。
せつなに、触れられている。
それだけで、体の奥が熱く火照る。
深く唇を押しつける。
ゆっくりと、激しく
舌を絡めあう。
ふたりの体が、
みるみる熱を帯びる。
生まれたままの姿で
布団にくるまり、愛し合う。
お互いの火照りを、感じる。
擦れ合う、胸の先端。
はずむ吐息。
お互いを悦ばせている、
指先と、唇。
そのまま自分の悦びに
つながる。
「声が...出ちゃうよ...」
他のモデルさん達も、
別の部屋にいる。
せつなが微笑み、アタシの唇を
唇で塞いだ。
食い込むほどに、
唇を押しつける。
頂上が、来る。
「んん...っ!」
体の隅々まで密着しながら、
ふたりの体が、大きく跳ねる。
ベッドが、きしむ音を立てる。
荒い息が、交錯している。
せつなの肩越しに見える窓は
すっかり結露している。
せつなの胸に、顔をうずめる。
せつなが、アタシの髪を撫でる。
時々でいいから、
甘えさせて。
せつなに包まれて、
アタシは眠りに落ちた。
目が覚めると、
せつなの姿は無かった。
夢...だったの?
体を起こす。
夢じゃない。
体中に拡がる、
満たされた痺れ。
唇に残る、
せつなの感触。
シャワーを、丹念に浴びた。
鏡の前の、アタシを見る。
今日は、いい表情が出来そう。
おみやげ、期待しててね。
最終更新:2009年12月07日 22:04