ラブside
スースー
隣からせつなの寝息が聞こえる。
……せつな今日はいつも以上にはしゃいでたもんね。
……。
……。
はぁ、眠れないなぁ。
「はぁ。」
あれ?あたしじゃないよ。
「…ブッキー?」
「ラブちゃん?」
「ブッキーも起きてたんだ。」
「うん、なんだか眠れなくて。」
「あたしもなんだ…ねえ、ちょっとだけベランダでおしゃべりしよっか。」
「そうだね。…ここだと美希ちゃん達起きるかもしれないものね。」
「それじゃぁ、そ~っとそ~っと。」
あたしとブッキーは上着を着てベランダへ移動した。
今日はほんとに楽しかった。
クリスマスパーティ、プレゼント交換、トランプ遊び、まくら投げ…それから他にも沢山…。
「今日は楽しかったねラブちゃん。」
「そうだね。」
「…ラブちゃんのトナカイ、可愛かったよ。特に赤いお鼻が、ふふ。」
「あ~ブッキーってそういうこと言う子だったんだ~。ひどいな~。」
笑いながらそう言い返した。
「ふふ。」
「あはは。あぁ~あ、それにしても、結局クリスマスパーティが始まってから最後のプレゼント交換まで
皆ずっとあの恰好のままだったね。」
「本当は美希ちゃんとせつなちゃんだけの予定だったのにね。」
「そうだよ、それなのにあたし達まで……まさかブルンを使うとはとは思わなかったよ…計画失敗だね。」
「う~ん、失敗とまではいかないような。でも成功とも言えないから…半分半分かな?」
「あはは、そうかも。」
「…ところでラブちゃん?」
「何?」
「どうやって美希ちゃんを説得したの?」
「えっとそれは…秘密。」
「え~、教えてくれないの?」
「あはは。」
流石に言えないよ。あたしを好きにして良いって言ったなんて…。
「そういうブッキーは?」
「わたし?わたしは普通にお願いしたよ。そしたら変身してくれたよ。」
「あ~せつな、ブッキーに甘いもんね~。」
「そう…かな?」
「そうだよ。」
えぇ、そりゃもう。あたしや美希たんが呆れるくらい。
「…それにしても二人がコソコソしてた理由がこれだったなんてね。」
あたし達はそれぞれ自分の小指を見る。
あたしは右手、ブッキーは左手を。
シルバーのピンキーリング。
美希たんとせつなからのクリスマスプレゼントだ。
指の背で曲がったラインの先に四葉のクローバーが、そしてもう片方には、小さな宝石が付いている。
あたしは青、ブッキーは赤。
「ふふ、四人お揃いだね。」
ブッキーが嬉しそうに呟いた。
「ふぁぁ~あ。」
あ、しまった。
「ラブちゃん?」
おしゃべりしてたら段々眠たくなってきた。
「っと、ごめん。……ブッキーそろそろ中に入ろうか。」
「そうだね。」
あたしは閉めていた窓に手を伸ばす。
でも、ふとあること思いつきその手を止めた。
「ねえブッキー?」
「何?ラブちゃん?」
「今更だけどさ…場所……交代しない?」
「…いいよ。」
あたし達は二人を起こさないように静かに部屋の中へ入った。
そして、あたしは美希たんの、ブッキーはせつなの隣に移動する。
「美希たんとせつなびっくりするかな?」
「するんじゃないかな。」
あはっ、ちょっと楽しみ。
「おやすみブッキー。」
「おやすみなさいラブちゃん。」
ブッキーside
目に映っているものは天井。
「……。」
眠れない。
「…ラブちゃん?」
ベットに目を遣りラブちゃんに声をかけてみる。
スースー
もう眠ってしまったみたい。ベランダであくびしてたものね。
ちらり
今度はせつなちゃんの方を見る。
せつなちゃんの後頭部が見える。
ドキドキ
眠れないのはせつなちゃんのせいだろうか。
「んっ。」
わっ!
せつなちゃんが寝がえりを打った。顔と身体がこちら側に向いた。
ドキドキ
ドキドキする、その……キスはもう何度もしているけどこんなに近くで一緒に眠ったことはまだなかった。
……キス…かぁ。
ちらりとベットの方を見る。ラブちゃん達眠ってるよね。
わたしはそっとせつなちゃんの布団に潜り込んだ。
そして眠っているせつなちゃんに近づいた。
チュッ
ほっぺにキス。
いつもせつなちゃんからだからたまには…ね。
「う…ん、いの…り?」
せつなちゃんが目を開けた。
しまった!起こした?
ギュッ
えっ。
せつなちゃんの腕がわたしの背中にまわる。
「…せつなちゃん?」
スースー
…寝ぼけてたのかな?
ドキドキする……でも…あったかい。
わたしはせつなちゃんの胸にすり寄る。
「おやすみなさい、せつなちゃん。」
そう言ってわたしは目を閉じた。
美希side
ツン ツン ツンツン
…何?なんだかつつかれているような。
あたしは目を開けた。
「あ、起きた。おはよう、美希たん。」
……なぜ隣にラブが?しかも同じ布団に……。確かブッキーが隣じゃなかったかしら?
「どうしてラブが!『シーッ!』
?
首を伸ばしラブが指差す方を見る。
…なるほどね。
二人はまだ夢の中…か。
「大声出しちゃいけないことはわかったわ。」
あたしは小声でラブに話しかける。
「でもどうしてラブが隣に?」
「あはは………まあいいじゃん。」
「そんなことより昨日は楽しかったね、美希たん。」
「そうね。」
「それからコレありがとう。」
そう言ってラブは右手の小指にはめているリングをあたしにみせた。
「喜んでもらえてよかったわ。」
「でも心配したんだからね。」
「心配?」
「せつなとコソコソしてたから、もしかしたらって…。」
「せつなとあたしが?……ふふっ。」
「美希たん?」
「そんな心配するだけ無駄よ。だってほら。」
あたしは左手の小指を立てた。
そして、リングについている宝石をラブにみせる。
「あたしはラブの色、せつなはブッキーの色よ。この意味……わかる?」
「……美希たんは…あたしが好きで、せつなはブッキーが…好き?」
「そういうこと。だから不安にならなくていいのよ。」
「うん。」
ギュッ
安心したのかラブがあたしに抱きついた。
……もうラブったら。
「……そういえばラブ……今度あたしの好きにして良いって言ったわよね。」
「えっ、言ったけど……はっ…まさか…。」
「うふふ。」
「ダ、ダメだよ美希たん、だって隣にせつなとブッキーがいるのに。」
「そうね~、声出すと起きちゃうかもね。」
「そうだよ、だから『だ・か・ら……声、だしちゃダメだからね。』
「えっ。」
「ちょっ…と、まっ…美希たん。」
「昨日散々笑ったものね、覚悟しなさい。」
「まだ根に持ってるの~。そんな~。」
「…ほら、ここは?」
「っ…ゃぁ…あっ。」
「ゃっ、美希ぃ…っ…だめっ。」
「ふふ、静かにしないと、せつな達起きちゃうわよ。」
ん?
微かに赤い光が見えた。
……アカルン?
…せつな、起きてたのね。
「…んっ。美希ぃ。」
潤んだ瞳であたしを見ているラブ。
ちょっと苛めすぎちゃったかしら…。
「ラブ、声…出しても良いわよ。」
「ハァハァ…でも…。」
「大丈夫よ、せつな達部屋にいないから。」
「えっ。」
あたしは中途半端に脱げていたラブのパジャマに手をかける。
「どうやら気を利かせてくれたみたいよ。」
「そ…れって…。」
「思う存分やれってことじゃないかしら?」
あたしも邪魔なパジャマを脱ぎさる。
そしてラブに口づける。
「んっ…んんっ…」
深く、激しく互いの舌を絡めあう。
「んっ、美希っ」
…ラブ。
「っはぁ…ラブっ、ラブっ。」
お互いもっともっとと求めあう。
右手と左手のリングが幾度も重り、そして離れた――――
せつなside
…いったい何なの…この状況は。
確か昨日は、私、ラブ、そしてラブのベットに祈里、美希が眠っていたはずなのに…
…なぜ?……どして?
……どうして腕の中に祈里が?
ガタッ
「ゃっ、美希ぃ…っ…だめっ。」
そして、ラブ達は何をやってるのよ!
「ふふ、静かにしないと、せつな達起きちゃうわよ。」
もう起きてるわよ!
ハァ
……まったく美希ったら。
ここにいたら眠れそうにないわ…。
私は布団をかぶった。そしてほんの少しだけ頭をだし光が僅かに漏れるようにする。
今の美希ならこれで気づくでしょう……。
「…アカルンお願い。…私の部屋へ。」
ヒュン
アカルンを使って私の部屋の布団へと移動した。
…これでよし。
「ごめんねアカルン、今日はこんなことばかりに使って。」
「キィー。」
気にしないでと言っている。
「ありがとうアカルン。」
「キィー」
でもほどほどに…ですって。
「ふふ、わかってるわアカルン。…おやすみなさい。」
「キィ~。」
おやすみなさい…そう言うとアカルンはリンクルンに戻っていった。
「んっ。」
祈里が小さな体を更に小さく丸めた。
寒いのだろうか?
そういえば、さっき布団に入ったばかりだからシーツも布団もまだひんやりとしている。
ギュッ
私は祈里を抱く腕に力を込めた。
こうすれば少しは温かいだろう。
それにしても、ラブも美希も時と場所を考えてほしいわ…まったく。
…でもそんなラブと美希の関係が本当は少し羨ましい。
私も祈里にもっと触れたい触れられたい…と、そう思う時がある。
でも…
祈里の髪をそっと撫でる。
「んっ、……せつ…なちゃん。」
ふっ。
顔がほころぶ。
そう、…なにも焦る必要はない。
ラブ達にはラブ達の、私達には私達の進み方がある。
私達は私達のペースでゆっくりと進んでいけばいい。
チュッ
おでこにキスを落とす。
「おやすみなさい、祈里。」
そして私は腕の中の温もりを感じながら再び眠りについた。
【終】
最終更新:2012年12月02日 07:21