「せつなとラブ 互いを思い合う心」
せつなが目を開けると、そこは灰色の世界でした。
青い色の空もなく、白い色の雲もない、
ただコンクリートのビルが立ち並んでいるだけの、寂しい世界。
けれども、そこはせつなにとっては見覚えのある場所なのでした。
せつな「ここは?・・・まさか―――」
そう、そこはせつなの故郷、ラビリンス。そしてその中枢部。メビウスが居る場所でした。
せつなが呆然としながら立っていると、目の前に見知った影が現れました。
「・・-ス・・・・イース」
せつな「その声は、メビウス"様"!」
メビウス「イース、私は今怒りに震えている。その理由はお前が一番分かるはずだ。
なぜ我らを裏切った。」
せつな「それは・・・」
メビウス「お前を腹心の部下にまで取り立ててやった恩を忘れた、というのではあるまいな。」
せつな「・・・感謝しています」
メビウス「お前達は私に管理されることにより相応の生を生きる。争いのない平穏な人生をな。
だが他の世界では争いの絶えない所がほとんどだ。他の世界にもラビリンスのやり方を広めなければならぬ。」
せつな「・・・・・・・」
メビウス「あの世界の人間のFUKOを集めるのはその礎。これは必要な犠牲なのだよ。それが何故わからぬのだ!」
メビウスが怒った口調になると、地面からつる状のものが現れ、せつなの体をとりまきました。
それらは、苦痛を与えながらメビウスと同じようにせつなを責め続けます。「裏切り者、裏切り者」と。
せつな「やめて、やめてくださいメビウス様!」
メビウス「・・・・・・・」
メビウスは何も言わずに消え去っていきました。
せつな「ウウッ・・・・クッ・・・」
せつなはとうとう涙をこらえきれなくなってしまいました。
せつな(メビウス様・・・・メビウス様・・・・・・)
誰もいない世界の中で、涙が滴る音だけが木霊していました。
「・・・つな・・・・せ・・な・・・・せつな!」
せつな「―――ハッ!」
せつなが目を開けると、そこはラビリンスではなく、自分の部屋でした。
せつなは自分が夢を見ていたことに気付いたのでした。
ラブ「ごめんね、勝手に入って来ちゃって。でもせつな、すごくうなされてるみたいだったから。」
せつな「そう、ありがとうラブ。でももう大丈夫よ、安心して。」
ラブ「心配だよ。だってせつなの手、震えてるじゃない!」
せつなはその言葉に驚いて、自分の左手を見つめました。
ラブの言う通り、はっきりと分かるほど自分の手は震えていたのです。
せつなは夢の中の出来事を思い出し、怖くなってしまいました。
ラブ「それにすっごい汗かいてる。ちょっと待ってて、今タオルとってくるから。」
ラブはそう言うと、部屋を出て行きました。
せつな(私はラビリンスを捨てた。メビウス様の目的のために人々を悲しませることだって、今は間違ってると思ってる。)
せつな(なのに、どうしてメビウス様のことでこんなにも切なくなってしまうの?どうしてメビウス様に許してほしいって思ってしまうの?)
せつなはまた泣き出してしまいました。
不意に、せつなの目に布が触りました。ラブです。
ラブは何も言わずにせつなの涙を拭いてあげるのでした。
せつなが顔を上げると、ラブは緩やかにほほえみ返してくれます。優しく、暖かく、自分を包み込むような、そんな笑顔で。
せつなは自然とその笑顔に吸い寄せられて、自分の唇をラブのそれに重ねてしまうのでした――。
ラブ「―――――!」
あまりに突然すぎて、ラブは一瞬何が起こったのかよく分かりませんでした。
こんなことをされるのは、初めてのことだったのですから。それも女の子に。
唇が合わさっていた数秒の間が、ラブにはまるで時が止まっていたかのように長く感じられました。
せつな(え?私、何してるの?)
せつなは正気に戻ったかのように、唇をはなして、申し訳なさそうに言いました。
せつな「ご、ごめんなさいラブ。」
ラブ「い、いやあ別に謝るようなことじゃあ・・・」
せつな「・・・・・」
ラブ「・・・・・」
二人の間に、これまで感じたことのないような沈黙が流れてしまいました。
もう3分は経ったでしょうか。
とうとうラブは、この間に我慢できなくなってしまいました。
ラブ「じゃ、じゃあタオルここに置いておくから、あ、汗拭いてぐっすり寝なよ。おやすみ~」
そう言って、ラブはせつなの部屋を後にしました。
せつな(私、なんであんなことしちゃったんだろう)
せつな(ぶしつけに、あんなこと・・・あんな)
せつなは自分のしたことを思うと、恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまいました。
あのときの、ラブの唇。ラブの温もり。
さっきは何も考えられなかったのですが、今ははっきりと思い出すことができます。
キスなんて女の子同士ですべきことではないのに、せつなはなんだかほのかな心地になりました。
けれど、そのことがせつなの気持ちを余計に複雑にしたのでした。
せつな(私、どうしたんだろう。変よね、こんなの。)
せつな(それにラブにこんなことして。嫌われて当然ね。)
せつなはさっきよりもずっと悲しくなりました。「ラブに嫌われた」、そう思うと途端に涙があふれ出してしまいました。
自分のベッドに戻っても、ラブはせつなのことが気になってしかたありませんでした。
ラブ(キスされちゃった・・・せつなに、されちゃった。おかしいよね、こんなの・・・)
ラブ(だけどせつな、悲しそうだった。唇、震えてた。
あたし、気づいてたのに。どうしてせつなを避けちゃったんだろう)
ラブはせつなを一人にしたことを後悔しました。けれど、もう一度せつなの部屋に行く勇気はでませんでした。
ラブ(もう一度行っても、どんな顔して会えばいいんだろう。なんて言えばいいんだろう。
あたし・・・わかんないよ)
ラブは苦しくなって、なかなか眠ることができませんでした。
あゆみ「ラブ、もう起きなさい。何時だと思ってるの!」
1階からあゆみの声がして、ラブは閉じていた瞼を開けました。ぼうっとした目で時計を見ると、もう11時前でした。
ラブ「もうこんな時間・・・」
タルト「ピーチはん、夏休みだからってそないに寝てばっかやとあかんで。」
ラブ「うん・・・分かってる・・・・・・」
タルト「もしかして、お疲れなんか?昨日は特にそんな様子やなかったみたいやけど。」
シフォン「プリプー・・・」
ラブ「ありがとう。なんでもないから、心配しないで。」
あゆみ「早くしないと、朝ご飯が昼ご飯になっちゃうわよ」
ラブ「はーい」
心配そうなタルトとシフォンを尻目に、ラブは部屋を出て行きました。
ラブは、1階に下りていく途中、せつなの部屋のドアが少し開いていることに気付きました。
ラブはドキっとしましたが、ただ通りすぎるのも気がかりになって恐る恐る部屋の様子を覗きこみました。
けれどせつなは中にいませんでした。部屋は主を失って、静かになっていました。
ラブ「下かな」
今度は1階に下りるのが怖くなってしまいました。
ラブが尻ごみして部屋に戻ろうとすると、あゆみの大きな声が聞こえます。
あゆみ「ラブ、まだなの?いい加減にしなさい!」
ラブ「はぁ~い」
ラブは観念した様子で、トボトボ歩いていきました。
あゆみ「もうこんなものしかないけど、食べちゃいなさい」
そう言って、あゆみはご飯と余りものらしい簡単な惣菜をテーブルに置きます。
ラブは辺りを見回しましたが、せつなはどこにも居ませんでした。
ラブ「ねえお母さん、せつなは?」
あゆみ「せつなちゃんなら、1時間くらい前に出て行ったわよ。お昼までに帰ってくるのかしら。」
ラブ「そう・・・」
ラブ(せつな・・・)
ラブは少しほっとしましたが、出て行ったせつなを思うと胸が切なくなるのでした。
その頃、せつなは四葉町の郊外にある丘で、一人たたずんでいました。
明るい夏晴れでさっぱりした天気でしたが、せつなは薄暗い表情を浮かべているのでした。
せつな(ラブにキスしたあの時、私は確かにメビウス様のことを考えていた。
メビウス様に見てほしかった、愛されたかったと。)
せつな(もしかして、私はメビウス様の代わりが欲しいだけなんだろうか。
メビウス様からもらえなかったものを、ラブからもらいたいのだろうか。
だとしたら、私は・・・)
そんなせつなを、近くの森からじっと見つめる男の人がいました。サウラーです。
サウラーは辺りに誰もいないことを確認すると、ゆっくりとせつなに近づいていきました。
サウラー「やあイース、ご機嫌よう。
今日は一人なんだね。それは都合がよかった。」
せつな「お前は・・・サウラー!」
サウラー「おっと、そんなに気構えないでくれ。今日は闘いに来たわけじゃないんだ。」
せつな「だったら、何故」
サウラー「・・・メビウス様は、君が大人しくラビリンスに戻るなら、君を許すと仰っている。」
せつな「――――!」
サウラー「僕個人としては気に入らないが、君ももう馬鹿なことはやめるんだな。
今日来たのは、それを伝えるためだけさ。それじゃあね。」
せつな「ま、待て!」
せつなの言葉も聞かず、サウラーは森に消えていきました。
せつなは、困った気持になりました。
メビウスはラブたちプリキュアにとって憎むべき敵には違いないはずなのに、
「メビウス様が許してくれる。」その言葉を聞いたとき、一瞬嬉しいと思ったからなのです。
せつな(やっぱり私は、メビウス様のことを憎めない。こんな気持ちでラブ達と一緒に戦うなんて、できない。)
せつな(私、どうしたらいいの)
せつなはその場にうずくまってしまいました。
空が夕日で赤く染まる頃、ラブは公園で人を待っていました。
せつなのことでどうしたらいいか分からず、信頼できる人に相談しようと考えたのです。
ミユキ「ラブちゃんごめーん、待った?」
ラブ「いいえ、全然。すみません、お仕事で忙しいのに無理にお願いしてしまって。」
ミユキ「いいのよ別に。それより、相談って何?」
ラブ「実は・・・」
ラブは昨日起こったことを話しました。
女の子の友達にキスされたこと。すごくドキドキしたこと。けれど、その友達は何かに悩んでいて、すごく辛そうだったこと。
その友達を助けたいこと。なのに、自分はどうすればいいのか分からないこと・・・
なんだか苦しくなって、ラブは途中から自分が何をしゃべっているのかさえも分からなくなってしまいました。
そんなラブが感情を吐き出すのを、ミユキは神妙な面持ちで見つめていました。
とうとうラブは言葉を続けることができず、押し黙ってしまいました。
ミユキ(困ったわね・・・)
ミユキは考えました。確かに、その友達を助けてあげることも大切かもしれません。実際に、ラブはそれを望んでいます。
けれども、そのことが本当にラブにとっていいのかどうか、分からなかったのです。
キスなんて女の子同士でするようなことじゃないということは、ラブよりもずっとよく知っていたのですから。
ミユキは考え込んだ末、ついに重い口を開けました。
ミユキ「ねえラブちゃん、その友達のこと、好き?」
ラブ「え?は、はい」
ミユキ「でもその『好き』って気持ちってさ、ラブちゃんの中ではわりと曖昧なんじゃないかな?」
ラブ「それって、どういうことですか?」
ミユキ「その子の悩みは聞いてあげないと分からないかもしれない。
だけど、相手に対する自分の気持ちが不安定なままじゃあ、悩みを聞いてあげても十分力になれないと思うの。
自分がその子とどうしたいのか、何をしてあげたいのか、よく考えて。その子にも、伝えてあげてよ。
・・・もしかしたらその子にとって少し辛いことになるかもしれない。けれど、その子にとってもそれは必要なことだと思うわ。」
ラブ「そんなこと、あたしできないよ・・・」
ミユキ「その子のこと、助けたいんでしょ?だったらそう言いなよ。
その子だって、きっと不安なんだよ。」
ミユキ「どうしてもうまくいかなかったらまた私が相談に乗ってあげる。だから元気出して。
もうすぐ夜になるし、今日はもう帰った方がいいわ。また明日会いましょう。」
ラブ「はい、ありがとうございました。」
ミユキは手を振りながら、帰っていきました。
ラブ(あたしの気持ち、かあ・・・)
ラブ(ミユキさん、何であんなこと言ったんだろう)
相談してみたものの結局答えを見つけることはできず、ラブは途方に暮れてしまいました。
それからほどなくして、ラブは家に戻ってきました。
ラブ「ただいま・・・」
あゆみ「あらラブ。遅かったわね。」
ラブ「まあね。」
あゆみ「そういえば、せつなちゃん知らない?あの子まだ帰ってきてないのよ。どうしたのかしら?」
ラブ「知らない・・・」
あゆみ「あらそう?困ったわね。夕飯までに帰ってくるといいけど。」
あゆみはそうぼやきながら奥へ戻っていきます。
ラブ(せつな、こんな遅くまでどこ行ってるんだろう。
よっぽど辛い悩みだったのかな。あたしのせいで、一人で思い詰めてるのかな。)
ラブはうつむき加減になりながら自分の部屋に戻っていきました。
ラブが部屋に戻ると、少し前にせつなと撮った写真が目に飛び込んできました。
ラブ(この頃は、ラビリンスのことも吹っ切れてよく笑ってたんだよね。
でも、そんな簡単にはいかないのかな)
せつなとラビリンス。そのことを考えていると、ラブはせつながイースだった頃のことを思い出すのでした。
ラブ(思えばせつなって元々私達の敵だったんだよね。
最初は気づいてなかったし、今のせつなが明るいから忘れそうになっちゃうけど、
あの頃のせつなはどんな気持ちだったんだろう。)
ラブ(悪いことをしていたせつな。
幸せを憎んでいたせつな。
けれど、誰より幸せを求めていたせつな。
あたしの言葉に応えてくれたせつな。
そして、自分の横で笑ってる、せつな。)
せつなとの日々に思いを馳せると、せつなの色んな顔が浮かんでは消え、浮かんでは消えていきます。
ラブ(せつな・・・せつな・・・せつな・・・・・)
知らないうちに涙がこぼれていました。
桃園家への帰り道。
せつなはある決心をしていました。
せつな(私は、もうこんな気持ちじゃラブと一緒にはいられない。
それに私は元々過去を捨てた人間。ラブの家にいつまでも迷惑をかけるわけにもいかない)
せつなは、ラブの家を出ていこうと考えていたのです。
その後どうするかという当てはありませんでしたが、今のせつなにはそれ以外の選択肢が思いつきませんでした。
せつな(それにラブにだって、嫌われちゃったしね・・・)
せつながため息をつくと、カラスの鳴き声が嫌に大きく聞こえました。
せつなは鳴き声のする方を見上げましたが、カラスはすぐに遠くの方に飛び去っていくのでした。
せつな(帰ったら、言わなきゃ。ラブに。
・・・でも、帰りたく、ない。)
歩幅は次第に小さくなっていきました。
せつな「ただいま」
あゆみ「せつなちゃん、やっと帰ったのね。お昼にも帰ってこないし、心配したわよ。」
せつな「すいません、図書館で本を読んでたら、夢中になっちゃって。」
あゆみ「それならいいけど。今度からは一言連絡してよ。」
せつな「ごめんんさい。
あの、ラブはどこに?」
あゆみ「ラブなら部屋にいると思うわ。そうそう、今夜は晩御飯カレーだから、期待しててね」
あゆみは鼻歌混じりに台所に戻っていきました。
せつな(思わず嘘ついちゃった。・・・あの人にも、言わなきゃ。)
せつな(行くあてもない自分を家に置いてくれて、家族のように見てくれて。
でも結局、何も返せなかった。ごめんなさいって、言わなきゃ。)
せつなはしばらく玄関に立ち尽くしていました。
ラブの部屋の前まで来ても、せつなはなかなか入っていけませんでした。
今まで以上に怖くなって、ノックする手が胸で止まっていたのです。
そんなせつながどぎまぎしていると、ドアがそっと開きました。
ラブ「せつな!今日一日どこ行ってたの?心配したよー」
せつなは狐につままれたようなような気がしました。てっきり自分のことを嫌ってしまったかと思ったラブが、笑顔で自分を迎え入れてくれたのです。
けれど、自分がこれから話すことを思うとあまり嬉しい気分にはなれませんでした。
せつな「ちょっと、ね。
それより、ラブに話したいことがあるの。」
ラブ「え、なになに?入りなよ。」
ラブに促され、せつなは部屋に入っていきました。そして、改めてラブと向かい合いました。
ラブ「話したいことって、なに?」
せつな「あのね、ラブ、あのね・・・」
せつな「私、もうあなたと――」
せつな「――ン、ンン!」
その時でした。ラブはせつなを抱きしめ、自分の口でせつなの口を塞いだのです。
せつな「ウンー!」
せつなは咄嗟にラブを自分から離そうとしましたが、ラブがあんまり力をこめたものですから、
逃れることができませんでした。
ラブ「・・・・・・・」
ラブは少し唇を離したかと思うと、顔の角度を変えてもう一度せつなの唇をとらえます。
せつなはなす術がなく動けませんでした。ですが、ラブの唇が優しくて、次第に身を任せてしまうのでした。
5分くらい経ったでしょうか。ラブはゆっくりと口を離すと、つぶやくように言いました。
ラブ「言わないで。そこから先は、言わないで。」
せつな「でも、私・・・」
ラブ「せつな、あたしに嫌われちゃったとか思ってるでしょ」
せつな「!」
ラブ「そんなわけ、ないじゃない」
ラブ「昨日はごめん。あたし、せつなが悩んでたこと分かってたのに、あんな風にしかできなくて。
不安だったよね。苦しかったよね。」
ラブ「でも、もういいよ。あたしが全部受け止めてあげるから。せつなの全部、もらってあげるから。」
せつな「ラブ・・・」
ラブ「だから、だからさ、一人で悩まないでよ。相談してよ。
せつなが苦しんでるのを見てるだけなんて、私、耐えられないんだから・・・」
そう言うと、ラブはさっきしたよりも強くせつなを抱きしめました。
せつな(ラブ・・・)
ラブの優しさ。ラブの温もり。
こんなものはラビリンスに居たころには想像もできませんでした。
しかも、それは昨日の夜、そばにいてくれた時にせつなが感じたモノと少しも変っていなかったのです。
せつな(ラブ・・・・・・)
せつなは、自分のラブに対する気持ちがメビウスに対するそれとまったく違うことに気付きました。
そして、それは自分に対するラブの気持ちと同じだということも―――。
せつな「ラブ・・・ラブ・・・グスッ、ヒック」
せつな「私・・・私、ラブと離れたくない!ずっと、ずっと一緒に、いたい!」
せつな「でも、捨てられないの。忘れようとしても、忘れられない人がいるの。
こんなんじゃ、私・・・私・・・」
ラブ「・・・捨てることないよ」
せつな「え?」
ラブ「自分の気持ちなんて、捨てられないよ。
でも、自分とまわりを変えていくことはできる。それは、せつなが一番よくわかってるじゃない。」
ラブ「皆で助けにいこう、その人を。四人なら、きっとできるよ。」
せつな「ラブ・・・ありがとう・・・ありがとう・・・」
2人は見つめあい、もう一度キスをしました。
それは、今までで一番甘いキスなのでした。
ラブ「せつな、約束して。ずっと一緒にいるって。もう、出て行こうとしたりしないって。」
ラブの朗らかな問いかけに、せつなも精一杯の笑顔で答えます。
せつな「ええ、約束する!」
そしてその夜、二人はお互いのことを深く確かめ合ったのでした。
おしまい
おまけ
今日は体育祭。借り物競走に出場するせつな。
せつな(さあて、何が書いてあるのかしら)
折られた紙を広げると、そこには見覚えのある字で「2年 桃園ラブ」と書いてあった。
せつな(これって…)
せつなが辺りを見回すと、自分に向かって大きく手を振るラブの姿。
せつな(もう、ラブったら…)
せつなが恥ずかしい友人の方に近づくと、その子は嬉しそうにせつなの手をとった。
ラブ「行こう、せつな」
せつな「もう。これ、あなたの仕業ね」
ラブ「えー?なんのことー?」
せつな「とぼけたって、無駄なんだから」
ラブ「エヘヘー、バレちゃったか」
せつな「あれだけ分かりやすかったら、当然よ」
らぶ「アハハハハ…///」
せつな「フフ…///」
二人は手をつないで笑いながら、ゴールテープを破るのだった。
最終更新:2009年09月24日 22:52