避-586

 せつなに会える!

 連絡があった。明日せつなに会えるんだ。

 お洋服は何を着て行こうかな。

 美希たん家の美容院にも行っておこうかな。

 貯金箱を確認する。うん、今度はばっちり。

 どこに行こうかな。

 まず一緒にドーナツ食べよう。
 あたしがおごっちゃう、オレンジジュースもつけちゃう。
 あ、でも、もしかしたら占い師さんだし、あたしよりお金持ってるかも。
 そしたら、たくさん食べちゃおう。
 せつなと一緒に食べるドーナツはまた格別なんだ。

 後は、映画館なんてどうかな。
 あ~ダメダメ、やっぱりやめた。
 せっかくせつなと会えるのにスクリーンなんて見てたら勿体無いよね。

 お洋服見に行くのもいいな、せつなの服可愛かったもん。
 肌が白くて綺麗だし、スタイルもいいから何でも似合うよね。

 音楽なんてどんなの聴くのかな。トリニティ好きなのかな。

 そうだ、体も動かしたいな。ボーリングなんてどうだろう。
 スポーツとかできる方なのかな。お嬢様っぽいし苦手だったりするのかも。
 そしたら手取り足取り教えてあげよう。色んな意味で親密に、な~んてね。

 あ、せつなの希望も聞かなくちゃね。一緒ならどこでも楽しいな。


「ただいま~おかあさん」

 お買い物とかない?お掃除するよ、お風呂も洗っちゃう。それから、それから、

「はいはい、お駄賃欲しいのね、よっぽど明日が楽しみなのね」

 だってせつなに会えるんだよ。当たり前じゃない。

 夕ご飯もそっちのけでおとうさんとおかあさんに説明した。

「それでね、せつなって凄く可愛いんだよ。それにとっても落ち着いていて…」


 名前は東せつな。あたしの大事な大事なお友達。
 古い洋館の占い師さんでね。その衣装がまた綺麗なんだ。
 とっても美人で、おしとやかで、上品で礼儀正しいの。
 優しくて、声が素敵で、仕草が可愛くて、笑顔が魅力的なの。

 一回会っただけなのに話題がつきない。もっとせつなのこと知ってほしい。

「ピーチはん、ちょっとは落ち着いたらどないですのん」

 落ち着いてなんかいられないよ、今すぐ会いに行きたいくらい。

 幸せの素、気にいってくれたかな。身に着けてきてくれるかな。
 せつなの幸せ、早く見つかるといいな。

 ね、せつな、今頃何してるの?
 もしかして、あたしのこと考えてくれてたりするのかな。
 あたしせつなと出会えてすっごくすっごく嬉しいんだ。
 大好きな友達なら他にもたくさん居るよ。
 美希たんとか、ブッキーとか、それに由美。
 でもドキドキして、わくわくして、こんな気持ちになるのは初めてなの。

「あ~ダメ。昂奮して眠れないよ」

 羊が一匹、羊が二匹、羊が三……スヤスヤ

「めっちゃ寝つき早いですやん……」


 よし、学校も終わった。
 せつなのことが気になって何の授業受けたかも覚えてないけど。

「ラブ」「ラブちゃん」
「は~い、美希たん、ブッキー、こんにちワン、ワンワン」

「どうしたのラブちゃん、何かいいことあった?」

 これからあるんだよ、だってせつなとデートなんだもん。

 えっ、美希たん、ブッキーも来たいって?
 う~ん、せつなってこちらからは連絡取れないんだよね。
 まあ、いっか。みんな一緒の方がもっと楽しいよね。

 もうすぐ、もうすぐせつなと会えるんだ。
 一緒に幸せ、ゲットしようね。
最終更新:2010年01月10日 03:50