怪現象のニュースは、
絶え間なく流れている。
うわさでは、世界が全て
誰かに支配されているらしい。
それを阻止するため、
プリキュアが闘っているそうだ。
その、プリキュアについても、
うわさが飛び交っている。
ラブと、せつなちゃんが
プリキュアだったらしい。
そんな、バカな。
せつなちゃんはともかく、ラブなんて
跳び箱に突っ込んだりしてたじゃない。
ラブに電話するけど、
つながらない。
せつなちゃんも、同じ。
ラブと仲が良さそうな大輔君に
聞いてみた。
「さあね」と、一蹴された。
本当なんだろうか。
でも、現実に、
世界の各都市、そして日本も
怪現象に飲み込まれている。
黒く、無機質に染まった街。
光を失った瞳。
笑顔を失った人々。
なぜ、こんなことが。
わからない。
逃げられる手段は?
見つからない。
どうすればいいの?
何も出来ない。
携帯が鳴る。
先輩から。
「もしもし?」
「由美?そっちは大丈夫?」
「うん...先輩は?」
「大丈夫。でも何か急に曇ってきたから...」
「普通の雲じゃないの?」
「うん、何だか...うわっ!何だあれ!」
もの凄いノイズが聞こえ、
あたしは携帯を思わず耳から離した。
しばらくして、ノイズが消えた。
「もしもし!先輩!先輩!」
返答はなかった。
不安が、体を駆け回る。
ラブ!
せつなちゃん!
携帯から発信するが、
やっぱり、つながらない。
どうすればいいの?
外で、人が騒ぐ
声が聞こえる。
窓を開けると、
空が、雲で覆われていた。
普通じゃない、黒さの雲。
ついに、ここにも。
空が、ひび割れるような音が
響いた。
無数の線が、地面に突き刺さる。
染まっていく風景。
何も出来ない。
もし、本当に、ラブとせつなちゃんが
闘っているとしたら。
頑張って。
必ず、帰ってきて。
それしか、私には言えない。
地面を、猛スピードで
走っていく線。
そのうちの、ひとつが
私に向かってきた。
トン、と、
胸を突く感触があった。
最終更新:2010年01月11日 11:50