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「美希ーー」

 夕方の公園。ひとり、カオルちゃんのドーナツカフェでのんびりと紅茶を飲んでいた美希は、自分を呼ぶせつなの声を聞いて、そちらを振り向いた。

「――――せつな?」

 走ってきたと見えて、少しだけせつなの息が弾んでいる。

「今日はひとり?めずらしいのね。ラブはどうしたの?」

「ブッキーとデートだって」

「デートぉ?」

 こくん。頷いたせつなは、何故だか少しだけ、嬉しいような恥ずかしいような複雑な表情を浮かべた。

「何でも、ケーキバイキングにふたりで行くんですって」

「ああ、それね……。せつなは誘われなかったの?」

「誘われたんだけど…」

「けど?」

 また複雑な表情で、少しだけ言いにくそうにせつなは続けた。

「――――やめておくわ、って言ったの」

「どうしてよ?」

 単純に、美希には理由がわからなかった。せつなはケーキが好きだったはずなのだが。
 そんな美希の問い掛けにせつなは、むきになって言い返す。

「美希だって、誘われたんでしょ?だけど断ったって、ラブに聞いた。どうして行かないの?」




「アタシはモデルだもん!ケーキは好きだけど、バイキングはさすがに……ね。完璧な体型を維持するためには、我慢が肝心ってこと」

 美希は腕組みをし、エッヘン、と偉そうにせつなに向けて威張って見せる。

「……そうだと思った」

「え?」

「美希ならきっと、そう言って断るだろうなって思ってた」

「だから、せつなも行かなかったって言うの?呆れた。アタシに気を遣わなくたっていいのに」

「べ、べつに気なんか遣ってないわ!」

 少し怒ったような声で、やや頬を赤らめたせつなが否定する。

「じゃ、どうして行かなかったのよ?理由を言ってみなさいよ」

「え、理由?えぇっと……、ケーキってそんなに好きじゃないってゆーか……、カオルちゃんのドーナツの方が美味しいってゆーか……読みたい本があったってゆーか……」

 美希に突っ込まれ、仕方なく理由を並べるせつなだが、半分しどろもどろと化している。

「なーんだ、そんな理由か。ちょっとがっかり」

「え?がっかりって、どして?」

「てっきりアタシと居たかったのかと思ったのにな」
 美希の言葉で、せつなは耳たぶまで赤くなる。

「ん?せつな、顔が赤いわよ」

「えっっ!?そ、そんなことないってば……これは、さっき走って来たから……」

 慌てるせつなを目の当たりにし、その姿があんまり可愛くて、美希はくすくすと笑う。

「やっぱりアタシと居たかったんでしょ?」

「――――知らないっ」

 すっかりむくれて、横を向いてしまったせつなだが、謝ってご機嫌をとろうとしながら美希が考えたことと言えば。
 怒ったせつなの顔も可愛いな、むしろ、怒っている方が可愛いかも――――そんなこと。
最終更新:2010年01月19日 23:59