また最近やたらめったら寒い上に、胃腸風邪が流行ってる。
せっちゃんは身体弱そうだから、お腹冷やさないように
真っ赤な腹巻きと真っ赤な毛糸のぱんつを
ラブやんから強制的に履かせられていそうだ…的妄想。
「これ……私が履くの?」
「もっちろん!ぬくぬくで風邪なんか寄り付かないよ!
あたしのもほら見て!桃色の毛糸ぱんつ」
(……幸せゲットだわ!)
「腹巻とか毛糸のパンツとか……よくそんなかっこ悪いの身に付けれるわね……いくら寒くても」
「あ、あの……美希ちゃん……」
「大体あたしみたいに朝から走るとか、身体鍛えてないからそんな心配するのよ」
「美希ちゃん……」
「ラブがせつなを甘やかすから……時には厳しく―――」
「美希ちゃん!」
「あ、ご、ゴメンなさい、ブッキー。何?」
「美希ちゃんの為に……毛糸の腹巻と毛糸のパンツ編んできたんだけど……」
「ありがたく着させてもらうわ!!」
北風を受けながら颯爽と前を歩く美希たんの短めのスカートから、蒼い色がちらちらと見え隠れしている。
今日はブルーベリー色か、なんてニヤニヤしながら今度は意識的に見つめていると、
どうやら蒼い色はただのパンティではないようだ。
モコモコしててふわふわで……アレって毛糸のぱんつじゃ!?
あたしは美希たんに駆け寄り、ぶわっとスカートを捲り上げた。
「ちょっ!?いきなり何よラブ!!」
顔を赤らめて詰め寄る美希たんに、あたしはとびっきりの笑顔で答える。
「毛糸のぱんつか、ふ~ん。いつも『寒さに耐えてこそお洒落よ』とか『見えないところのお洒落が大事』とか
言ってる人が履くものとは思えないな~」
「べべ別にいいじゃない!アタシだってたまには毛糸のぱんつくらい履くわよっ」
慌ててまくし立てる美希たん。茹だっちゃって可愛いの。
「しかもそのぱんつ……手作り?誰に作ってもらったのかは聞かないけどさー、愛されてるねー美希たん?」
「ラ~ブゥ~……」
殺気を感じ、あたしは走り出す。ゴ○ブ○が身の危険を察知してから逃げるまでにかかる時間は、わずか0.02秒と
聞いたことがある。ん?0.2秒だったかな?
ともかく、あたしは全速力で逃げ出した。それこそ、○キ○リ並の速さで。
「わはー!ごめんごめん怒んないで!」
「待ちなさい!待たないと許さないからね!」
「待たないよ~だ。待ったって許してくれないクセに!」
北風に吹かれながら追いかけっこ。たまには子供の頃に戻るのも、いいもんだね、美希たん!
「う~、寒いわね……せつなちゃん、平気?」
冬のある日。せつなちゃんのお買い物に付き合うって事で、二人でお出掛け。
でも残念な事に、今日は『今冬一番の冷え込み』とか言われてるらしくて。
「ええ……ごめんなさい、ブッキー。付き合わせちゃって……」
「あ、いいのいいの。……もうすぐバレンタインだもんね。チョコ作った事無いなら早めに準備しておいた
方がいいだろうし……でも初めてなのに手作りなんて……」
わたしの言葉に、せつなちゃんは軽く頬を染めて。
「ラブにね、素敵なプレゼント貰ったから……凝った物お返ししたくて……」
「素敵なプレゼント?」
「け、毛糸のね、その……ぱんつを……手編みなんですって」
あ、そうなんだ。
わたしが美希ちゃんにあげたのと一緒……幼馴染って考えまで似るのかしら。
「い、今もね、実は履いてたり……」
「へぇ~、いいわね。暖かいでしょう……愛情も篭ってるだろうし、ね」
「―――暖かい?」
途端に怪訝な顔をするせつなちゃん。
あ、あれ……わたし何か変な事言ったかしら?
と、その時、わたし達の間を強い風が吹き抜ける。
「きゃ!!」
小さな悲鳴と共に、せつなちゃんの履いていたミニのスカートが捲れあがって―――。
ブバッ!!
「き、きゃ!!ぶ、ブッキー!!突然どうしたの!?す、凄い鼻血じゃない!!」
「ら、らいりょうぶ……らいりょうぶらから……」
ハンカチで鼻を押さえて、せつなちゃんに小さく手を振るわたし。
(ラブちゃん……毛糸のパンツっていうよりあれは――――)
せつなちゃんのスカートの下に見えたのは、確かに毛糸で編まれたものだったけど。
両端はほとんど一本の毛糸で、後ろはTバック……紐状に編まれた毛糸がお尻の谷間に食い込んで。
前は……どうやったものか、シースルーで大事な部分がうっすら透けていた……。
(毛糸の勝負下着……ど、どこまで……)
その光景を思い出すだけで、わたしの鼻血の勢いが増していく。
「本当に大丈夫なの……?き、今日の買い物はやめて―――」
「ほ、本当にらい……大丈夫よ。そ、それにわたしも欲しい物できたし……」
「欲しい物?」
心配するせつなちゃんに、グっと親指を立てて見せる。
毛糸、この間ので切らしちゃったものね―――。
わたしの脳裏には、毛糸で出来た勝負下着を履いて、恥かしそうに俯く美希ちゃんの姿が浮かんでいた。
最終更新:2010年02月04日 22:49