酒2-18

また最近やたらめったら寒い上に、胃腸風邪が流行ってる。

せっちゃんは身体弱そうだから、お腹冷やさないように
真っ赤な腹巻きと真っ赤な毛糸のぱんつを
ラブやんから強制的に履かせられていそうだ…的妄想。



「これ……私が履くの?」

「もっちろん!ぬくぬくで風邪なんか寄り付かないよ!
あたしのもほら見て!桃色の毛糸ぱんつ」

(……幸せゲットだわ!)


「腹巻とか毛糸のパンツとか……よくそんなかっこ悪いの身に付けれるわね……いくら寒くても」
「あ、あの……美希ちゃん……」
「大体あたしみたいに朝から走るとか、身体鍛えてないからそんな心配するのよ」
「美希ちゃん……」
「ラブがせつなを甘やかすから……時には厳しく―――」
「美希ちゃん!」
「あ、ご、ゴメンなさい、ブッキー。何?」

「美希ちゃんの為に……毛糸の腹巻と毛糸のパンツ編んできたんだけど……」


「ありがたく着させてもらうわ!!」



北風を受けながら颯爽と前を歩く美希たんの短めのスカートから、蒼い色がちらちらと見え隠れしている。

今日はブルーベリー色か、なんてニヤニヤしながら今度は意識的に見つめていると、
どうやら蒼い色はただのパンティではないようだ。

モコモコしててふわふわで……アレって毛糸のぱんつじゃ!?
あたしは美希たんに駆け寄り、ぶわっとスカートを捲り上げた。

「ちょっ!?いきなり何よラブ!!」
顔を赤らめて詰め寄る美希たんに、あたしはとびっきりの笑顔で答える。

「毛糸のぱんつか、ふ~ん。いつも『寒さに耐えてこそお洒落よ』とか『見えないところのお洒落が大事』とか
言ってる人が履くものとは思えないな~」

「べべ別にいいじゃない!アタシだってたまには毛糸のぱんつくらい履くわよっ」

慌ててまくし立てる美希たん。茹だっちゃって可愛いの。

「しかもそのぱんつ……手作り?誰に作ってもらったのかは聞かないけどさー、愛されてるねー美希たん?」

「ラ~ブゥ~……」

殺気を感じ、あたしは走り出す。ゴ○ブ○が身の危険を察知してから逃げるまでにかかる時間は、わずか0.02秒と
聞いたことがある。ん?0.2秒だったかな?
ともかく、あたしは全速力で逃げ出した。それこそ、○キ○リ並の速さで。

「わはー!ごめんごめん怒んないで!」

「待ちなさい!待たないと許さないからね!」

「待たないよ~だ。待ったって許してくれないクセに!」


北風に吹かれながら追いかけっこ。たまには子供の頃に戻るのも、いいもんだね、美希たん!



「う~、寒いわね……せつなちゃん、平気?」

 冬のある日。せつなちゃんのお買い物に付き合うって事で、二人でお出掛け。
 でも残念な事に、今日は『今冬一番の冷え込み』とか言われてるらしくて。

「ええ……ごめんなさい、ブッキー。付き合わせちゃって……」
「あ、いいのいいの。……もうすぐバレンタインだもんね。チョコ作った事無いなら早めに準備しておいた
方がいいだろうし……でも初めてなのに手作りなんて……」

 わたしの言葉に、せつなちゃんは軽く頬を染めて。

「ラブにね、素敵なプレゼント貰ったから……凝った物お返ししたくて……」
「素敵なプレゼント?」
「け、毛糸のね、その……ぱんつを……手編みなんですって」

 あ、そうなんだ。
 わたしが美希ちゃんにあげたのと一緒……幼馴染って考えまで似るのかしら。

「い、今もね、実は履いてたり……」
「へぇ~、いいわね。暖かいでしょう……愛情も篭ってるだろうし、ね」


「―――暖かい?」


 途端に怪訝な顔をするせつなちゃん。
 あ、あれ……わたし何か変な事言ったかしら?

 と、その時、わたし達の間を強い風が吹き抜ける。

「きゃ!!」

 小さな悲鳴と共に、せつなちゃんの履いていたミニのスカートが捲れあがって―――。


 ブバッ!!


「き、きゃ!!ぶ、ブッキー!!突然どうしたの!?す、凄い鼻血じゃない!!」
「ら、らいりょうぶ……らいりょうぶらから……」

 ハンカチで鼻を押さえて、せつなちゃんに小さく手を振るわたし。

(ラブちゃん……毛糸のパンツっていうよりあれは――――)

 せつなちゃんのスカートの下に見えたのは、確かに毛糸で編まれたものだったけど。
 両端はほとんど一本の毛糸で、後ろはTバック……紐状に編まれた毛糸がお尻の谷間に食い込んで。
 前は……どうやったものか、シースルーで大事な部分がうっすら透けていた……。


(毛糸の勝負下着……ど、どこまで……)


 その光景を思い出すだけで、わたしの鼻血の勢いが増していく。

「本当に大丈夫なの……?き、今日の買い物はやめて―――」
「ほ、本当にらい……大丈夫よ。そ、それにわたしも欲しい物できたし……」
「欲しい物?」

 心配するせつなちゃんに、グっと親指を立てて見せる。


 毛糸、この間ので切らしちゃったものね―――。



 わたしの脳裏には、毛糸で出来た勝負下着を履いて、恥かしそうに俯く美希ちゃんの姿が浮かんでいた。
最終更新:2010年02月04日 22:49