「止まれぇぇぇ!ホホエミーナ!!!」
「ちょ、ちょっと!大声出さないでよ!」
「ん?何か忘れ物かい?」
三人を背中に乗せ、ラビリンスへ帰還するウエスターとサウラー。
そして―――イース
別れの挨拶に涙は無かった。
一緒に帰還し、我が故郷であるラビリンスを復興しようと
持ちかけたのは誰であろう、熱血漢の男ウエスター。
サウラーも、自分たちがやってきた事の償いをするための決意は固かった。
今度は僕たちの手で―――と
「なぜ泣かなかったのだぁぁぁ!!!」
「だーかーらー、うるさいってば!」
「ほんとうるさいよ、君たち」
ぷかぷかと浮かぶホホエミーナの上で繰り広げられる口論。
上空でも、四ツ葉町まで届くんじゃないかと言う勢いで。
やれやれと腕組みするサウラー。ポツリと呟いてみる。
「正直に言ってごらんよ、二人とも。」
「イースがだなぁ、その…なんだ。どうもあっけなかったと言うか......」
「精一杯我慢したのよ。多分…、あの中じゃ一番泣いてしまったと思うし......」
やっぱりね。
そう心で呟くサウラー。
目を瞑り、そっと考えてみる。いつものあのスタイルで。
「お、おい。何か喋ったらどうだ!」
「サウラー?どしたの?」
!!!
「イース。ちょっとリンクルンを貸してくれないか?」
不思議そうにリンクルンを差し出すイース。いや、せつな。
「誰かに電話でもするの?」
せつなは問いかける。
ハニかむサウラー。あの時の冷酷な表情はもう、消え失せていて。
「ウエスター。ドーナツいっぱい買ってあげるから、我慢するんだ。」
「おォ!!!やっと決心してくれたかサウラー!お前も今日から真の…」
怒号のような声を遮り、サウラーはリンクルンに指示を出す。
「アカルン、我に仕えよ!」
「えっ!?」
「ド~ナツブラザ~♪」
―――キィ!―――
「イースを。いや、東せつなをクローバータウンへ!」
「待って!私は―――」
「な!なんだとォォォォォ!!!」
煌く紅い閃光。
眩い光は彼女だけを包んで。
再びハニかむサウラー。いや、南瞬。
呆然と立ち尽くすウエスターこと、西隼人。
「彼女の事だ。往復も苦にせず、我々にも力を貸してくれるだろう。」
「オレのビッグサプライズ…横取りしやがって。」
「君のやる事は全てお見通しだからね。」
「まぁよいわ。イースの喜ぶ顔を見るのが俺たちの幸せでもあるからな。」
再びホホエミーナは上空を進んで。それは疾風よりも速く。
大きな翼を―――羽ばたかせながら
見慣れた風景。
ここはクローバータウンストリート。
イースが東せつなとして生まれ変わった瞬間に潜ったゲート。
「もう。これから何て言えばいいのよラブたちに…」
ついさっき、行って来ますと告げたのに。
少々困惑気味のせつなにアカルンは微笑んで。
「キィ!キィ♪」
「アカルンまで。もう……、私ってそんなに顔に出ちゃってるかしら?」
小走りに駆け出す彼女の元に、上空から翼が舞い降りて。
それは彼たちからのエールのよう。
素直になるって.....難しいのね
~END~
最終更新:2010年01月31日 16:48