あれから数年が経った。
美希たんはモデルとして各雑誌から引っ張りだこになっている。
来年のパリコレにも出演が決まったらしい。
ブッキーは最難関で知られる○×大学の獣医学部に進学した。
卒業後は実家の動物病院に勤めるんだそうだ。
そして、あたしはと言うと―――。
「続いてはクローバーです。どうぞ!」
司会者さんの紹介を受けてステージに立つ。
ソロダンサーとして活動を始めて2年。最近はそこそこ名前が知られて来た
みたいで、TVやコンサートに呼ばれる機会も増えてきた。
曲が始まる。あの時のダンス大会で優勝した時の曲だ。
この曲に合わせて踊っていると、今でも隣であの3人が一緒に踊っている
ような錯覚に囚われる。
もう一緒に踊る事は無いかも知れないけれど、あたし達の絆は永遠に
繋がっている。
「お疲れ様でしたー。」
「お疲れ様ー。」
スタッフさん達に挨拶をして会場を後にする。
もうお腹がペコペコなので、早く家に帰って温かいご飯が食べたい。
交通機関を乗り継ぎ、暫く歩くとようやく家が見えてきた。
「ただいまー。」
「おかえりなさい、ラブ。」
勢いよく家のドアを開けると、キッチンから赤いエプロンを身に着けた
せつなが笑顔で出迎えてくれた。
せつなはあたしと一緒に暮らしている。
色々な事があったけど、ようやく取り戻した愛する人と共に過ごす日々。
あたしは今、とても幸せだ。
「今日の夕ご飯、何?」
「お母さん直伝のコロッケよ。」
「ワハー!嬉しい!幸せゲットだよ!!」
「もうラブったら、大袈裟なんだから。」
夕ご飯を食べながら、お互いに今日あった事を話し合う。
最近の流行や仕事の悩みなど、話に熱中しすぎて、
気が付けばお味噌汁がすっかり冷めてしまっていた。
それから後片付けを手伝い、一緒にお風呂に入る。
体の洗いっこをしたり、湯船に浸かってさっきの話の続きをしたりと、
2人だけの時間を思う存分満喫した。
お風呂から上がって髪を乾かし、湯冷めしない内に一つのベッドに肩を
寄せ合う様に潜り込む。
「おやすみなさい、ラブ。」
「おやすみ、せつな。」
寝るのが早いせつなはすぐに夢の世界の住人になってしまったらしく、
規則正しい寝息が聞こえてきた。
明日は久しぶりに4人揃って休みの予定が合った。
何をしようか色々と思いを巡らせる。
「やっぱファッションショップ巡りが無難かなー。
カラオケに行って歌いまくるってのもアリだよねー。
それともスイーツ食べ歩き・・・は美希たんに却下されそうだな・・・。」
そんな事をつらつらと考えながら、やがて訪れた眠気に素直に身を委ねた。
最終更新:2010年02月03日 00:41