避-879

あたしを愛してくれる人。

あたしが愛している人たち。

胸いっぱいに染み渡る温かい気持ち。

瞳で、笑顔で、仕草で、言葉で、

あたしを幸せにしてくれる。




せつなには、そんな人が今、側に居るのかな?





「ねえ、せつな。せつなの幸せは何?」





せつなが居なくなって、もう一ヶ月がたつ。

せつなを想う気持ち。

今日あった出来事。

毎晩、せつなの部屋に来て、語りかけるのが習慣になっていた。




「私の幸せは、みんなを笑顔と幸せでいっぱいにすることよ。」




せつなの声が聞こえたような気がした。

見上げた星空の光が、せつなの涙みたいに見えた。




「じゃあ、せつなの笑顔と幸せはどうなっちゃうの?」




それが、せつなの幸せならそれでもいい。だけど思うんだ。




メビウスのために命を捨てようとした。

あたしたちのために、一人で占い館に行った。

そして、ラビリンスの人たちのために、自分の気持ちをこの部屋に置き去りにして、
一人でラビリンスに行ったんじゃないかって。




あたし、言ったよね。

自分の幸せも、みんなの幸せも、どちらも大切だって。

せつなは、みんなの幸せのためにラビリンスに行ったんじゃないの?

少なくとも、お別れの時のせつなの笑顔は寂しそうだった。

初めて会った頃のような、我慢してるような笑顔だったよ。




何も持って無い少女が、命を失ってまでして、ようやく手に入れた小さな幸せ。

それすらも投げ打って、人のために尽くそうとしてる。




そんな気がして悲しくなる。




あの時は言えなかった。

確かにラビリンスの人たちには、せつなが必要だった。




だけど。




――――せつなは、幸せになっていいんだよ。

――――自分の幸せを見つけていいんだよ。




おやすみなさい、せつな。

必ず幸せ、ゲットしようね。
最終更新:2010年04月09日 20:05