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競-366

湯煎にかけたチョコレートが
いい感じに溶けてきた。

少し、生クリームを入れる。

「ラブ、自分の型を用意して。
 せっちゃんは並べるお皿をお願いね」

「はーい」


今年のバレンタインデー
日曜日。

お父さんは、ゴルフの
練習場に行っている。

居ない間に、みんなで
チョコレートを作る。

今年は、ひとつ多い。

多分、いつもよりも
だらしない顔になるだろう。



何を作るかは、みんな
自分で決めた。


ラブは、ナッツいっぱいの
チョコレート。

アーモンド、カシューナッツ。
くるみ、ヘーゼルナッツ。

「少し荒いくらいの方が、いいわね」
「うん、ありがとう」

布にくるんだナッツを
めん棒で砕く。

型にチョコレートを流し込み、
砕いたナッツをたっぷり埋めていく。


せっちゃんは、大人っぽい
オランジェット。

きれいな、オレンジピール。

「あまり大きいと苦いから、細めにね」
「はい、頑張ります」

オレンジピールを細く切り、
チョコレートにくぐらせる。

お皿に、並べていく。


私は、戸棚からラム酒を出し、
チョコレートに混ぜた。

型に流し込む。


みんなの型とお皿を、
冷蔵庫に入れる。



「じゃあ、固まるまで、
 私たちもおやつにしましょ」


別のお皿を取り出す。

乗っているのは、
いちご、マシュマロ、バナナ。

残った、湯煎のチョコレートを
上から、網の目を描くようにかける。


「わぁ...!」

ふたりが、いっせいに
歓声を上げる。

「いっただっきまーす!」

いっせいに、食べる。

「んーっ!」
「おいしいーん!」
「あまーい!」


台所に満ちる、笑い声。

甘い香り。

やっぱり、女の子は
甘いものが大好き。

ついつい、おしゃべりに
花が咲いてしまう。



冷蔵庫から、型を取り出す。

逆さにし、中心を押すと
きれいに取れた。

「わはー!出来たー!」
「とってもきれい!」

ふたりが、同時に声を上げる。

「うん、上出来ね」

私のチョコレートに、正方形に
包丁を入れる。


「みんなの出来は、どうかな?」

少しずつ、分け合う。


「ラブの、香ばしくておいしいわ!」
「せつなのも、オトナの味だね!」

「あっ!お母さんこれお酒入ってるでしょ!反則!反則!」
「だって大人なんだもーん」



ラッピングが終わった頃、
インターホンが鳴った。

「あっ!帰ってきたよ!」

みんなで、玄関に走る。


喜んで、くれるかな?

おいしいって、
言ってくれるかな?


きれいにラッピングした箱を
後ろ手に持って、玄関に向かった。


ラブとせっちゃんの顔も
キラキラと輝いている。

私も、負けないんだから。


今日だけは、恋敵。

なんてね。
最終更新:2010年02月14日 10:25