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競-430

2月14日。聖バレンタインデー。
一般的に恋人達の愛の誓いの日とされる日だ。


「・・・さて、と。」

キッチンに立つせつな。

細かく刻んだチョコレートを湯煎にかけ、空気が入らないように混ぜていく。

滑らかになったチョコレートを大きなハート形の型にそっと流し入れ、
常温でゆっくりと冷やす。

チョコレートが固まった所で型から外し、仕上げにホワイトチョコレートで
メッセージを書き込んだ。

「・・・これで良し、と。」

初めてにしては上々の出来栄えに、せつなの顔に笑みが浮かぶ。

丁寧にチョコレートをラッピングし、せつなは腰のポーチからリンクルンを
取り出した。

「アカルン。お願い。ラブの部屋へ。」

「キィーーー!」


「はぁ・・・。」

畳のベッドに横になり、ラブは何度目とも知れない溜息を漏らす。

今日はバレンタインデー。お父さん、お母さん、美希たん、ブッキー、由美に
チョコレートを渡した。

皆喜んでくれた。・・・けど。
けど、皆に渡したチョコレートはいわゆる“本命チョコ”ではなくて。

「せつな・・・。」

ラブが本命チョコを渡したかった思い人、せつなはもう、ここにはいない。


ダンス大会が終わってすぐ、せつなはラビリンスに帰った。

「「アカルンがあるから、皆に会いたくなったらすぐ戻ってくるわよ。」
 なんて言ってたけど・・・。全然会いに来てくれないじゃん。
 全く、今日はバレンタインデーだってのにさ。」

つい、ラブは愚痴をこぼす。

―――でも、ラブにも本当はわかっている。

全てを管理していたメビウス亡き今、ラビリンスは混乱している。
いくら国を救った英雄達と言えど、まだ若く、経験も浅い。
簡単に戻って来られるような状況では無い筈だ。

(・・・それに。)

それに、ラブはせつなにはまだ教えていなかった。
バレンタインデーというイベントがある事、そしてその意味を。

バレンタインデーの事を知らないせつなが、来てくれる筈が無い。


(・・・もう寝よう。)

そう思い、ラブは布団を頭から被る。
と、その瞬間。
赤い光が布団越しにラブの視界を覆った。

「え・・・?」

あわてて跳ね起きるラブ。すると、目の前には。

「こんばんは。ラブ。」

「せつな・・・!」

ラブの思い人、せつなの姿が、そこにはあった。


「どう・・・して・・・?」

「どうしてって、今日はバレンタインデーでしょ?
 チョコレートを渡しにきたの。」

そう言いながら、せつなは大きなハート形のチョコレートをラブに差し出した。

チョコレートを受け取りながらも余りの事に当惑するラブ。せつなには
バレンタインデーの事を教えていなかった筈だ。一体何処でその知識を
仕入れたのか・・・。

「ラビリンスに帰る少し前にね、由美がバレンタインデーの事を
 教えてくれたの。チョコレートを渡して思いを伝え合う日なんでしょ?」

ラブの疑問を察したのか、せつなが少し頬を染めながら経緯を説明する。

「由美が・・・。」

親友の気遣いに、ラブは胸の奥が熱くなるのを感じる。

「・・・開けても、いい?」

「ええ、どうぞ。」

ラブは震える手でラッピングを剥がし、チョコレートの上に書かれた文字を
見つめる。


“I Love You.”


シンプルだけど、だからこそ強く伝わってくる、せつなの思い。

ラブの視界が滲む。

気が付いたら、ラブはせつなを抱きしめていた。

「・・・ありがと、せつな。」

「どういたしまして。ラブ。」

間近で見つめ合うラブとせつな。やがてどちらともなく目を閉じて。

仄かな月の光に照らされながら、2人は誓いの口付けを交わしたのだった。





おまけ

「・・・ところでラブ。」

「何?せつな。」

「私にはチョコレートくれないの?どして?」

「・・・。」
(ヤバイ。まさか来てくれるとは思ってなかったから用意してなかったよ~。)

「・・・。」
(用意してなかったのね・・・。)

「・・・。」
(か、かくなる上は・・・え~い!)

ガバッ!

ドサッ!!

「!!!・・・ちょ、ちょっと、いきなり何するのよ!」

「え・・・いや・・・あたしをプレゼントしようかと・・・。」

「な、何馬鹿な事言ってるのよ!」

「・・・いらない?」

「・・・・・・いるわ。」
最終更新:2010年03月28日 00:22