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競-502

しばらく歩いていると、冬枯れの草に覆われた原っぱが現れた。
そこには人影と何やら動く物が見え、そして声が聞こえてくる。


「よし、ラッキー。つぎはエンジェル・キャッチだ!」

「ワン!ワン!」


「あれは、タケシ君・・・。」

「ラッキーちゃんも技が上達しているみたいね。」

「どうしよう、あたしタケシ君の分のチョコを作ってないよ。」

「アタシもよ。ていうか、あまり付き合いなかったからね。」


今、何もあげないでタケシ君に会う事は出来る。
でも私たちの持っているチョコを見れば、きっと悲しい思いをさせてしまうだろう。
かといって、美希やブッキーが心を込めた手作りのチョコはあげられない。
一体どうしたら・・・そうだわ!


「ここは私にまかせて。ブッキー、ちょっと来て。」

「えっ、何?せつなちゃん。」


ラブと美希を待たせ、私はブッキーと打ち合わせする。
数分後再び合流し、タケシ君のもとへ向かった。


「タケシくーん、こんにちはー!」

「あっ、おねえちゃんたちだー。こんにちは!」

「ラッキーも元気みたいね。」

「うん!またつぎのたいかいがあるから、れんしゅうしてるんだよ。」

「そうなんだ。ねえ、タケシ君。」

「なに?せつなおねえちゃん。」

「今日はね、バレンタインデーなのよ。知ってる?」

「うん。チョコがもらえるひだよね。ぼく、ママからもらっただけだよ。」

「私と祈里お姉ちゃんからプレゼントがあるんだけど、もらってくれる?」

「えっ?いいの?」


私とブッキーはそれぞれ紙袋からチョコの箱を取り出す。
それは昨日、駄菓子屋のおばあさんからもらったベリー・パッション味のチョコだった。


「タケシ君。はい、どうぞ。」

「わー、ありがとう!いのりおねえちゃん。」

「そこにメッセージが書いてあるから読んでみて。」

「うん。じゃあ、よむよ。」


――タケシくんへ
れんしゅうがんばってるね。
ラッキーのことはウチのびょういんで
めんどうみてあげるから
これからもよろしくね。
             いのり


「ありがとう、がんばってたいかいにゆうしょうするよ!」

「うん、わたしも応援してるから。きっと勝てるって信じてる!」

「タケシ君、これは私から。祈里お姉ちゃんのと同じものだけど。」

「せつなおねえちゃんもありがとう。なんてかいてあるかな?」


――タケシくんへ
あなたとおともだちになれて
たのしかったわ。
さよならしなくちゃいけないけど
またいつかあおうね。
             せつな


「せつなおねえちゃん。ぼく、なかないよ。おとこのこだもん!」

「えらいわ、タケシ君。きっと帰って来るからね。」

「それじゃ、タケシ君さようなら。また遊びましょう。」

「うん、バイバイ。おねえちゃんたち。」


タケシ君と別れ、私たちもここで解散することにした。
美希とブッキーは、これからデートらしい。
楽しんできてとエールを送ると、あなたたちもね、と返された。

昼過ぎに帰宅し、ラブと二人でお昼ごはんを食べた。
その後、家族みんなでオリンピックというスポーツの大会のテレビ中継に興奮して、おやつどきを迎えた。


「私、お茶をいれてくるわ。」

「じゃあ、あたしはお菓子を持ってこよっと!」


全員分のお茶を用意し、テーブルへ運ぶ。
ラブは美希とブッキーからもらったチョコレートを持ってきた。
それに加えて例のベリー・パッション味のチョコの箱が見えた。


「あれ?ラブ、それって誰かにあげたんじゃないの?」

「うん。あげたよ。あげたけど、今さげてきたんだ。」


変なの?と思いつつ、その箱を手に取る。
裏面のメッセージ欄に目を移すと、私は思わず言葉を失った。


――おじいちゃんへ
ねえ、おじいちゃん。
あたし、この1年で愛と幸せについて
たくさん学んだよ。
おじいちゃんの願いでもある、
幸せを与えられる人になれるように頑張るから。
これからも、あたしたちを見守っていてね。
              ラブ


「ラブ・・・あなたって子は・・・。」

「やだなあ、せつな。ほら、早くお茶にしようよ。」


家族とのティータイムで、ラブがおじいさんにあげたチョコの話をした。
おかあさんは、それは「お供え」という習慣よ、と教えてくれた。
おとうさんは、バレンタインデーの本来の意味を話してくれた。
遠い昔の外国の祝日、またその日に合わせて1人の聖職者が処刑された、それが2月14日だと。
でも今では世界中で、恋人たちの誓いの日として定着していることも。

おしゃべりの続きはラブの部屋でしよう、とタルトたちも連れ込んだ。


「ねえ、タルト。スウィーツ王国にはバレンタインデーは無いんでしょ?」

「そんなん無いに決まってますやろ。」

「えー、でもタルトさま。こないなオモロイ風習、国王さまに掛け合ってスウィーツ王国でも取り入れたらどないどすえ?」

「キャッキャッ、プリプー!」

「せ、せやな。王国に帰ったらオトンに相談してみるわ。」

「せつな、ラビリンスにもバレンタインデー作るの?」

「そうね、こちらの世界の良いところは積極的に採用するつもりよ。」

「わはー、じゃあこれからもずっとバレンタインデーが楽しめるんだね。ラビリンスのみんなも幸せゲットだよ!」

「まあ、ラブったら。フフフ・・・。」


ラブ、楽しい1日をありがとう。
来年からも、この日にはチョコを贈るからね。

~おわり~



競-573はスピンオフ作品となります。
最終更新:2010年02月19日 22:06