夢うつつのなか、微かにドアを開ける音がした。
ひたひたと廊下を歩く足音が、あたしの部屋の前で止まる。
あたしは耳を澄ませた。頭が冴えはじめる。
カチャリ。
わずかな金属音を響かせ、部屋のドアがそっと開かれた。
あたしは無意識に寝たふりをする。
足音の主は、あたしの毛布の中にするりと忍び込む。
胸。太腿。お尻……。
身体を密着させてくるせつなは、まるで甘えん坊の子猫ちゃん。
つい意地悪したくなり、あたしは寝たふりを続ける。
そんなあたしに我慢できず、子猫は小さくささやいた。
「ら……ぶ……」
「ん……?」
片目をこすり、起こされたことを演出する。
「わたし……もう……」
彼女はあたしの腕をつかみ、自分の胸元へといざなう。
パジャマの上からでもわかる素肌の感触。
きっと下には何もつけていない。
促されるまま、胸の真上のボタンを外した。
その隙間から、ゆっくりと手を侵入させていく。
熱くなったなめらかな素肌を、やわやわと撫で回す。
あたしの冷たい指が、せつなの硬く尖った先端を掠める。
その瞬間、彼女は声にならない声をあげた。
「今夜はどうしてほしいの?」
前をはだけながら問いかけるあたしに、けれど彼女は答えられず、ただ吐息をもらすだけ。
「言わないなら……知らないよ。あんなことやこんなこともしちゃうよ?」
それでも彼女は答えない。次々に舞い降りる快感に夢中になっているみたい。
そうだ。昼間使いきれず残った余りが、まだまだいっぱいあったはず。
悪戯を思いついたあたしはベッドから離れた。
机の引き出しから、未開封のある物を取り出す。
せつなの露わな胸元に、その中身を垂らしてゆく。
くるくると円を描きながら、胸の頂きを囲む。
「んっ……やっ、なに?」
胸元に降り注ぐ突然の冷たさが、心地よさに蕩けそうな彼女を目覚めさせた。
「せつなったら、話せるんじゃない」
あたしは舌を這わせて、それを味わう。
頂点に向かって、丁寧に舐めあげる。
けれど、突起には決して触れず、舐めるのはまわりだけ。
「ふぁあああっ!」
「んふ……あまーい……せつなチョコ」
「……チョコペン?」
「正解。じゃあ……ご褒美」
白いチョコペンを、桃色に色づいたふたつの蕾を隠すようにかけてゆく。
雪に埋まった蕾を舌で丁寧に掘り起こす。
あたしの舌の動きに呼応するように、せつなの肢体はびくんびくんと震えた。
脚をやや開いて、待ち遠しそうに膝をくねらせている。
「暑そうだね……。脱がしてあげる」
せつなのパジャマの下を性急に脱がせる。
彼女が身につけていたのは、黒いレースの小さなショーツ。
その中心は、薄墨を引いたようにじんわりと滲んでいた。
「綺麗なレース……汚すの気が引けちゃうな。
だけど、同じ黒だから……いいよね?」
答える隙を与えず、あたしは股布を横にずらした。
秘唇を開いて、今度は黒のチョコペンを垂らしていく。
チョコの侵入を邪魔するみたいに、とろとろの蜜が次から次へと溢れ出す。
そのせいで、まんべんなくチョコをまぶすのに、少し苦労した。
「食べるよ」
唾液をたっぷり絡めてかぶりつく。舌先を尖らせ、つつき、くにくにと押し、ねぶった。
黒い海の中から、いとも簡単に顔を覗かせる、真っ赤に充血した彼女の淫核。
「んんっ……ふ……はぁっ……」
「こんなに美味しいチョコレート、初めてだよ」
刺激を加えるたびにどんどん甘くなるせつなの声に、あたしは満足する。
すべて舐めとったはずなのに、甘露があとからあとから零れ落ちて舌を濡らすから、甘さが一向に落ち着かない。
その蜜をすくい上げること数分、せつなの声色がむせび泣きに変化した。
「あっあっ、い……く……ラブ、好きぃっ、……あん、すきぃ、ラブ、好き、大好き!あああああっ!」
せつなは最後の矯声を漏らす。
張りつめこわばっていた四肢は、ゆるゆるとほどけて、シーツに溶け落ちた。
「どうだった?チョコになった気分は」
「……最高よ」
あたしは顔中チョコだらけ。
そんなあたしに、せつなは長いキスをくれた。
「せつなの顔も汚れちゃうよ?」
「いいの……今度はわたしの番」
何もかもチョコまみれ。下着も、シーツも。あたしも、せつなも。
だけど、こんなバレンタインも、たまにはいいでしょ?
了
最終更新:2010年02月15日 10:21