「ちょ、ちょっと…どこ行っちゃったの…ブッキー...」
不意に辺りは暗闇と化し、美希は先頭を歩いていた祈里と逸れてしまう。
先程までいたラブも、血相を抱えて逃げ出してしまった。
人が最も恐れる物。
それは暗闇。そして―――孤独。
私は全てをお見通しだ。
たかがプリキュア。されどプリキュア。
三人揃えば歯が立たない事ぐらい、百も承知。
では一人なら?
「くっくっく…」
感じろ、恐怖を。
そしてじっくり…味わうがいい。
―――FUKOを
じっとしててもしょうがないか。
来た道を戻ればイイのよね。
懐中電灯一つ。足元を照らすそのちっぽけな光こそ、今の美希には希望の標な訳であり。
「まったく…。なんでアタシがこうなる訳よ。外出たらとっちめてやるんだから!」
幼馴染みである三人。息がピッタリ揃う時もあれば、こうしてバラバラに逸れてしまう時もある。
まさに〝マイペース〟なのであろう。
一歩。
また一歩。
確実に、完璧に。
足元だけを見る。
決して後ずさりではなく。
勇気ある撤退。
「別に怖いからに、逃げるんじゃないケド...ね」
もしかして祈里も、自分の事を探してるのでは?
ラブはどこに行ってしまったの?
そんな思いも片隅にはあったのだが、今は自分を優先しつつ。
「オカシイわね。結構歩いたはず…だけど」
バカな子。
いくら歩いても無駄よ。そこからは抜け出せない。
いっそ、私が永久に管理してあげてもいいのよ?
―――蒼乃美希―――
容姿端麗。
自分には無い物を持っている。
いつのまにか引き込まれる自分がいた。
額には焦りの汗か、恐怖の冷や汗なのか。
こんな時でもハンカチで額の汗を拭う。
そんな姿に思わず釘付けになっていた。
「サウラー…」
「余計な事すると天罰が落ちるよ?」
「ちっ。私は―――」
全てを喋り終える間もなく、サウラーは席を外す。
「僕はもう一人を相手しよう。ウエスターは今頃逃げ出した子を追っかけてるだろうしね。」
「待てサウラー!余計な手出しを―――」
バタン。
不適な笑みを抱え、サウラーは部屋を後にする。
何故か心の中を探られてしまったような感じがした。
少々の戸惑いと、メビウスに貢献出来る喜びと。
イースは一人、気持ちを落ち着かせる。
いや、言い聞かせた。
(我が名はイース!ラビリンス総統メビウス様が僕! )
扉を開け、一人廊下を歩く。
確実に進む。彼女の―――蒼乃美希の元へ、と。
歩みを止めてしまえば…戻れないと思った。
高鳴る鼓動は、彼女の場所へのナビゲーション。
漆黒の瞳は何を見据えるか。
その答えは―――
(待っていて美希。今.....助けるから)
~END~
最終更新:2010年02月28日 13:08