少し肌寒い春の朝、軽快な足取りで美希が走る。
公園に差し掛かった時、犬の群れに引きずられるような格好の祈里に出くわした。
「おはよう、美希ちゃん。今朝もランニング?」
「おはよう、ブッキー。3匹同時に散歩なんて大変ね」
「この子達は仲がいいから大丈夫なの。美希ちゃんこそ、毎朝ご苦労様」
「正式なモデル契約しちゃったしね。そりゃ頑張るわよ」
少し休憩、と祈里を誘いベンチに腰掛ける。たいしてかいていない汗。乱れていない呼吸。日
ごろの鍛錬の賜物だ。
「見たよ、クローバーコレクション。すっごく綺麗だった」
「ほんと! ありがとうブッキー。どんな感じだった?」
「そうね、例えるなら……」
「やっぱりやめておくわ」
祈里のわくわくしてる顔を見て不安になる。
「え? どうして」
「あなた、今、ヘビとかに例えようとしてたでしょ」
「ヘビは綺麗な子がたくさんいるのに」
「否定してくれないのね……」
「あ、でも、動物に例えるなら」
「例えなくていいからっ! もういい、アタシ行くわね」
美希は立ち上がり、走り去ろうとする。もちろん――ポーズだけ。
「怒らないで美希ちゃん。冗談だから。
美希ちゃんより綺麗な生き物なんて、わたしは知らないもの」
「それは誉めすぎ。でも――ありがとう。ブッキー」
(モジモジしてるブッキーかわいいっ! 我慢できなくなっちゃった)
「あっ、ダメッ、美希ちゃん。だれか見てるかも」
「誰もいないわよ。職業柄、視線には敏感なんだから」
「わん、わん、わん、わん、わん」
「あはは。この子たちが見てたね」
「しょうがないか。また今度ゆっくりね、ブッキー」
「うん。大好きよ、美希ちゃん」
完璧な重心。まるで体重を感じさせない。羽でも生えているかのような、美しい美希の走り姿に
見とれてつぶやいた。
本当に綺麗よ、美希ちゃん。その美しさでみんなを幸せにしてね。
きっとできるって、私、信じてる。
そして、時々でいいから、私だけの美希ちゃんでいてね。
ずっと、応援してるからね。
最終更新:2010年04月17日 17:17