♪~~♪~~♪
うとうとしかけた意識が覚醒する。
早鐘のように打ち続ける鼓動は、無理な目覚めによるもの。
収まらないのは……きっと、期待と不安のため。
そっと、リンクルンを開く。
ラブ――か。
「もしも~し。美希たん? 今日はお休みなんだよね。久しぶりに声聞きたくなっちゃって。
あたしはせつなとおとうさんとおかあさんで、恒例の外食デーなんだ」
「もしもし、美希? 普段はお仕事とかで忙しいと思って、連絡できなかったの。
また今度ゆっくりお話しましょう」
交互に変わるラブとせつなと、しばらくおしゃべりを楽しんだ。
一瞬、がっかりして――ごめん。
嬉しかった。
また、なんて待てない。本当は――すぐにでも会いたい。
アタシは……こんなに弱かったのかしらね。
嬉しくて、楽しい時間はすぐに終わる。これから家族水入らずのお食事会だ。長くは申し訳ない。
取り残された気持ちになる。
スケジュール表より大きな――――アタシの心の空白。
ベッドに体を打ちつけるようにして横になる。
どうして――――こんな気持ちになるんだろう……。モデルのお仕事は、以前よりもずっと順調なのに。
どうして――――こんなにも満たされないのだろう……。願っていた平和と自由が戻ったというのに。
わかってる。
ほんとはわかってる。
これはアタシが決めた道。
同じ夢を追いかけていた自分はもう居ない。
それぞれの道だから。一人で歩いていかなくっちゃいけないんだってこと。
余裕ありすぎ――なんて嘘だ。
あるのは空白――心の隙間――寂しさなんだってこと。
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そんな。まさか。――――もう、こんな時間だし。
震える手でそっと開く。
ブッキー……。
「もしもし、美希ちゃん。今、時間大丈夫?」
聞きなれた声――誰よりも馴染みのある声――なのに、なんでこんなに緊張してるんだろう。
「平気よ」とだけ、震える声で返事した。
「レミおばさん、今日はお留守だって聞いてね。美希ちゃん、良かったら家にご飯食べに来ない?」
今から迎えに行くね。そう言って切れちゃった。
急がなくっちゃ。
乱れてしまった髪。少し腫れ上がった目。
主張しすぎず、地味でもない手ごろな洋服は――。
下着も替えなくっちゃ。え? 見せるわけじゃないわ。身だしなみよ。
食事の後でブッキーの部屋には行くわ。やましいことなんて無いんだから。
鏡に向かって自分に話しかける。顔が笑ってる。ゲンキンね。自分でも可笑しくなる。
アタシのスケジュールと心の空白がブッキーで満たされていく。
なんだ……やっぱり、余裕ありすぎなんじゃない。
いつでも会えるのに、一歩踏み出す勇気が無かった――イジケていた完璧じゃないアタシ。
満たされていると、人はどこまでも欲張りになるのかもしれないわね。
なんとか間に合った。2階からブッキーが駆けて来るのが見えた。
余裕を持って降りて迎えてあげよう。そして、感謝の気持ちを伝えるの。
アタシの――――完璧な笑顔で。
大好きよ、ブッキー。
最終更新:2010年04月27日 17:59