小鳥のさえずり。
カーテンからはうっすらと光が射して。
(今日は晴れかな…)
せつなが居なくなって、心にぽっかり開いた穴。幾度と無く涙した涙。
寂しさを埋める事が出来なかった。
幸せゲット…出来なかったよ。
苦しい日々が続いた。
眠れない日もあったぐらい。
思い出すのは、楽しかった日々の事ばかり。
居ないのわかってるのに、開けてしまうせつなの部屋のドア。
ある日、あたしは夢を見て。
ベランダデートしてたんだ。一緒に暮らしてた時と同じように。
そしたらね、せつなはあの言葉を口にしたんだ。
―――私は素直なラブしか知らないけど―――
せつなはあたしにチャンスをくれたんだと思う。
それが夢の世界であったとしても。
これを逃したらもう.....
「あたしは――――せつなと一緒に居たい。もう一度…いや、ずっと一緒に暮らしたいんだ!」
素直な気持ちをぶつけた。二人出会った記念日に。
あたしたちだけの特別な日に。
二人だけしか知らない大切な日に。
「私もね、本当は―――」
今思えば、意外な展開だったかもしれない。
生真面目なせつな。「離れていても一緒よ」、そう答えてくると思ってた。
あたしは苦笑いして、次の話題に振る練習だってしてたぐらいだし。
自分に臆病になってたのかな。
せつなの〝夢〟をジャマしちゃうんじゃないかって。
自分が幸せになるより、友達が幸せになった方がいいもんね。
その姿を見てる事が、何よりも幸せなんだもん。
「ねぇ、ラブ」
「何?」
「もっと私を―――愛して欲しい」
それは、あたしが初めて聞いた言葉。
せつなの……願望だったと思う。
潤んだ瞳にはあたししか映っていなかったから。
その日の夜。
あたしとせつなは結ばれた。
初めての人は東せつな。初恋の人。
一生忘れない。一生の思い出。
また記念日が出来たねって、何度も唇を重ねた。
互いの体を何度も愛撫し、何度も幸福を招き入れた。
本当に。
本当に嬉しかった。
「…ラブ?」
「あ、起こしちゃった?」
窓際に立ったあたしを見て、せつなはきょとんとしている。
「久しぶりに晴れそうだよ今日」
満面の笑顔で答える。朝日にも負けない輝きで。
「でも今日は祝日でしょ?学校も無いんだし…」
まだ眠たそうな声が愛らしくて。
「じゃ、もう少しだけ寝ようか」
開きかけたカーテンを閉めて、もう一度二人だけの世界を作る。
ベッドに潜り込むと、再び愛おしき彼女(ひと)の温もりがあたしを襲ってきた。
それは、あの時と変わらない温もり。
それは、ずっと変わる事のない温もり。
再び始まった二人の仲。
もう離さない。そう心に誓いながら。
温もりを―――抱きしめて
~END~
最終更新:2010年04月30日 01:23