11-6

小鳥のさえずり。
カーテンからはうっすらと光が射して。

(今日は晴れかな…)




せつなが居なくなって、心にぽっかり開いた穴。幾度と無く涙した涙。

寂しさを埋める事が出来なかった。
幸せゲット…出来なかったよ。


苦しい日々が続いた。
眠れない日もあったぐらい。

思い出すのは、楽しかった日々の事ばかり。
居ないのわかってるのに、開けてしまうせつなの部屋のドア。



ある日、あたしは夢を見て。
ベランダデートしてたんだ。一緒に暮らしてた時と同じように。

そしたらね、せつなはあの言葉を口にしたんだ。


―――私は素直なラブしか知らないけど―――


せつなはあたしにチャンスをくれたんだと思う。
それが夢の世界であったとしても。


これを逃したらもう.....





「あたしは――――せつなと一緒に居たい。もう一度…いや、ずっと一緒に暮らしたいんだ!」

素直な気持ちをぶつけた。二人出会った記念日に。
あたしたちだけの特別な日に。
二人だけしか知らない大切な日に。



「私もね、本当は―――」



今思えば、意外な展開だったかもしれない。

生真面目なせつな。「離れていても一緒よ」、そう答えてくると思ってた。
あたしは苦笑いして、次の話題に振る練習だってしてたぐらいだし。


自分に臆病になってたのかな。
せつなの〝夢〟をジャマしちゃうんじゃないかって。

自分が幸せになるより、友達が幸せになった方がいいもんね。
その姿を見てる事が、何よりも幸せなんだもん。



「ねぇ、ラブ」
「何?」


「もっと私を―――愛して欲しい」

それは、あたしが初めて聞いた言葉。
せつなの……願望だったと思う。
潤んだ瞳にはあたししか映っていなかったから。




その日の夜。
あたしとせつなは結ばれた。


初めての人は東せつな。初恋の人。
一生忘れない。一生の思い出。

また記念日が出来たねって、何度も唇を重ねた。

互いの体を何度も愛撫し、何度も幸福を招き入れた。

本当に。
本当に嬉しかった。




「…ラブ?」
「あ、起こしちゃった?」

窓際に立ったあたしを見て、せつなはきょとんとしている。

「久しぶりに晴れそうだよ今日」
満面の笑顔で答える。朝日にも負けない輝きで。

「でも今日は祝日でしょ?学校も無いんだし…」
まだ眠たそうな声が愛らしくて。

「じゃ、もう少しだけ寝ようか」

開きかけたカーテンを閉めて、もう一度二人だけの世界を作る。

ベッドに潜り込むと、再び愛おしき彼女(ひと)の温もりがあたしを襲ってきた。



それは、あの時と変わらない温もり。
それは、ずっと変わる事のない温もり。



再び始まった二人の仲。
もう離さない。そう心に誓いながら。



温もりを―――抱きしめて



~END~
最終更新:2010年04月30日 01:23