夜の帳が静かに降りる。
朝は友達。昼は仲間。夕方は家族。夜は――最愛の人。
心とカラダを満たしあう。そうなってから、まだ幾月。
生まれたままの姿になる。そして始まりの口付け。
大好きな髪。大好きな肌。大好きな温もり。大好きな匂い。
大好きな――――ひと。
これで――最後。わかってる。そんなのわかってる。
忘れない。忘れたくない。忘れないんだからっ!
記憶に、カラダに刻み付ける。
せつなの孤独――せつなの苦しみ――せつなの後悔。
ねえ、せつな。あたしは受け止めてあげられたのかな。
せつなの心に、何か残してあげられたのかな。
これで本当に、幸せになれるんだよね?
あたしはずっと幸せだと思ってた。
でもね、せつなと出会って本当の幸せを知ったんだよ。
せつなは立派だったよ。
あたしを。おとうさんとおかあさんを。美希たんとブッキーを。
この街のみんなを幸せにしてくれた。
そして、今度はラビリンスのみんなを幸せにしていくんだよね。
何度目か達して、ゆるやかな眠りにつく。
せつなの寝息。せつなの鼓動。せつなの体温。最後の温かい夜。
その温もりが失われていく。肌にふれる、ひんやり冷たい空気。
「ん……せつな……」
離れたくない。離したくない。そんなわがままを寝言に変えて飲み込んだ。
「ごめんなさい」
枕元で囁かれる、せつなの声。やさしく心に響く。
迷惑をかけてごめんなさい。
ダンスを続けられなくてごめんなさい。
寂しい思いをさせてごめんなさい。
他にもあるのかな――――きっと、いろんな想いの込められたごめんなさい。
謝らなくていいんだよ、せつな。
だって、あたしは感謝してるもの。
せつなと出会えたこと。せつなと過ごせた時間。せつなの存在の――全てに。
そのまま寝ているふりをした。
もう――限界だもの。言葉を交わしたら、きっと隠している想いが零れてしまう。
唇に温かいものが触れる。
別れの挨拶? 再会の誓い? それとも――。
ひとつだけ、確かなこと。
たった今から、せつなはもう居ない。この世界の、どこにも居なくなるってこと。
眩いばかりの赤い光が瞬いた。そして、すぐに消え去る。
静寂に包まれる部屋。それはこれからも――ずっと、続くんだ。
目尻から一粒の滴がすっ、と流れて落ちた。
もう、いいよね?
布団にくるまって涙を隠す。泣き顔なんて、誰よりも――自分に見せたくないから。
やがては薄くなり、色あせていく記憶。
でも、これだけは忘れない。
せつなはこの世界を、この街を、心から愛していたってこと。
人々の笑顔と幸せを、誰よりも強い想いで守ろうとしたってこと。
そして、あたしはせつなが大好きだってこと。
どこに居たって、ずっと――ずっと!
あたしたち、精一杯頑張ろうね、せつな。
約束はしないよ。でも――信じているから。いつかまた一緒になれるって。
だから、みんなで幸せゲットだよ。
最終更新:2010年05月15日 09:52