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神様に届くかな?わたしの…お願い。




七夕祭りから帰ると、祈里はふと夜空を見上げた。
煌びやかな星空が四ツ葉町を覆う。
あんなに暑かった日中も、夜を迎えれば静寂の時を迎えて。


さらさら。
ベランダに飾りかけた笹の葉。決して豪華な物では無いけれど、飾り一つ一つを丁寧に作った。
たった一日。一年で一回。特別な日。

子供の頃も今も、この日は祈里にとって凄く楽しみな日。
町中の人たちが祈りを捧げる。

―――願いよ、叶えたまえと―――



お父さんのお願い。お母さんのお願い。
ラブちゃんのお願い。美希ちゃんのお願い。
わたしは毎年、大好きな人たちのお願い事を短冊にして飾る。

ついつい見ちゃったりもするけれど、微笑ましいお願い事ばかりで嬉しくなっちゃう。



本当はここにね.....




何も書かれてない短冊。
赤色。

渡せなかった―――想い



今何をしているの?
ほんとはね、みんな寂しいんだよ?

夏休みはこっちへ来て欲しいな…。
だって。
だってね。




風に揺らめく皆の願い。
それは奇しくも一緒で。




もうすぐ、七月七日が終わる。
いつもなら、願い事はいつか叶えばいいなと思っていた。

机の上には、四人並んで撮った写真が飾られている。
みんな最高の笑顔で。みんな一緒だったんだ。




赤色の短冊を手に取る。

目を閉じる。

心の中で問いかける。



せつなちゃんのお願い事は―――






信じる心。
いつかその時が来るまで。


乙姫様はせつなちゃん。



彦星様は…みんなかな。
みんながせつなちゃんの事、大好きなんだもん。

待ってるからね。
わたし、信じてる。






~END~
最終更新:2010年07月08日 22:58