≪プリンセス号の中のとある一室≫
コンコン
「祈里、入ってもいいかしら?」
「ええ、もう着替え終わったから大丈夫よ。」
「外で待っててくれてもよかったのに。……ラブちゃん達は?」
「シフォンと一緒に遊んでるわ。」
「ねぇ祈里。」
「なぁに?せつなちゃん?」
「ほんとにどこも怪我してないのね。」
「ええ、大丈夫よ。」
私がそう言うとせつなちゃんは私の手をギュッと握った。
「よかった。」
「も~心配しすぎだよ、せつなちゃん。」
私は笑いながら答える。
「ごめんなさい。」
「えっ?」
私はせつなちゃんの突然の謝罪に驚いてしまった。
「本当は直ぐにでも駆けつけたかった……でも、ラブと美希だけじゃこの船は止められない…、
それにウエスターも何時仕掛けてくるか分からなかった…だから……だから…。」
…だから駆けつけることが出来なかった…ごめんなさい……とせつなちゃんは言いたいんだろうなぁ。
「だからごめんなさい?」
そう尋ねるとせつなちゃんは首を縦に振った。
う~ん、でもせつなちゃんが謝るようなことは全くないと思うんだけどなぁ……だって…
「謝らないで、せつなちゃん。」
「……私がソレワタ―セを倒せたのはせつなちゃんの……ううん、皆のおかげだもの。」
「えっ?」
今度はせつなちゃんが私の言葉に驚いている。
「多分あのソレワタ―セは外側が強化されてた分、中心部分が弱かったと思うの。」
「だから私がソレワタ―セを倒せたのはラブちゃん、美希ちゃん、それにせつなちゃんが外で
この船を食い止めてくれていたおかげなの。だからねせつなちゃん……謝らないで。」
「祈里…。わかったわ……さっきのごめんなさいは取り消すわ。その代わり…。」
せつなちゃんが握っていた手を離した。
「ありがとう祈里。」
ふわりと温かい何かに包まれる。
「ソレワタ―セを倒してくれて……無事に戻って来てくれて。」
「せつなちゃん……。」
「……これなら受け取ってもらえるかしら。」
「ええ、もちろん。……ふふっ…それじゃあ私も……ありがとうせつなちゃん。」
「ソレワタ―セを食い止めてくれて……心配してくれて。」
「……と、当然よ。」
あっ、ちょっと照れてる。
「ふふっ。」
「ん?どうしたの祈里?」
「ううん、なんでもない。」
そう言って私はそっとせつなちゃんを抱きしめ返す。
照れてるせつなちゃんが可愛いかった…なんて言えない。
言ったらせつなちゃん、きっと離れちゃうもの。
そんなの駄目……だって今はまだせつなちゃんの温もりを感じていたいから。
END
最終更新:2010年07月25日 09:13