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み-241

「さ、せっちゃんも」
「はい」
「こうしてね」


「おじいちゃん…」
ラブが呟くと同時に、墓前に皆が手を合わせる。

八月。
良く晴れた日曜。お盆最後の日。
風はもう、立秋を漂わせていた。


「本当は去年―――来るべきでした」
俯くせつなにあゆみは答える。
「忙しかったからしょうがないわよ」
「そうそう」
間髪いれずにラブは笑顔でせつなを覗き込む。

「喜んでいるよ、おじいちゃんも」
圭太郎は墓石に水を掛けながらそう答えた。



せつなは来たるべき日に向け、一つ、悩み事を抱えていた。
家族としての蟠りも消え、今ではすっかり溶け込んでいる彼女。
皆と外出する事が嫌と言う訳でも無い。むしろ嬉しくもある。
例え、それが始めての〝お墓参り〟であったとしても。


「どうした~せつなっ」
「あ、ラブ…」
鏡の前で立ち尽くすせつなに駆け寄るラブ。顔を見れば直ぐに、悩んでいる事が掴み取れた。

「きんちょーしてんの?」
「ううん、そうじゃない」

「初めて…会うから。源吉お爺様に」
「あうぅぅぅ!?おじいさまぁ!?」
あたふたするラブを横目に、せつなは真剣に言葉を続ける。

「私は写真でしか見た事ないから。例えそこに―――いらっしゃらなくても会う事に変わりは無いと思うの」
「せつな…」
「それに、初対面だからまだ…その様を付けた方がいいかと」
「そっか」
ラブはベッドに静かに座ると、せつなを横に招き入れた。

「せつならしいな。それが悩みなんだ」
「えっ?悩み?…あ、実はね」
「?」
的が外れてたのに驚きを隠せないラブ。
せつなは立ち上がり、洋服ダンスを漁り始める。
「ど、どうしたぁ???」
「決まらないの!どれがいいか―――――」


悩みとは、着ていく洋服の事だったのだ。
鏡の前で立ち尽くしていたせつなを思い出すラブ。
硬くならなくてもいいのに、と口にしようとしたが思い止まる。



〝初めて…会うから〟



目を閉じ、あの頃を思い出す。

風と共に現れた少女、東せつな。
大きな麦わら帽子と白いワンピース。

ラブにとって、せつなとの本当の出会いは―――あの時だった。
今でも忘れない。あの時の思い出と、抱きしめた温もりを。






「家族が増えたよ!おじいちゃんっ!!!」
「ラブ!何してんの!」
「おいおい、お墓は叩くもんじゃないだろう…」
「もう、ラブったら」
「あはっ、わはははは」
お墓である事を忘れてしまうぐらい、温かな雰囲気に包まれた家族がそこに。

そして―――

「こんにちわ、おじいちゃん」
「おっ」
「静かに」
あゆみが空気を読んだ。圭太郎もそれに気付いて。


「せつなです。宜しくお願いします」
「そ~ゆ~こと。おじいちゃん、硬いのはナシでいいよね?ねっ」


子供達の姿が何だか微笑ましく思えて。
後ろから見詰める圭太郎とあゆみの表情ははすっかり笑顔。


「暑くありませんか?」
せつなは被っていた大きなむぎわら帽子を墓石にそっと、掛けて。
「いいなぁ~おじいちゃん」
ラブはちょっぴり不満そう。案外本心だったりして。



「さ、今日は張り切っちゃうぞー!」
「お父さんはいっつもガーターばっかりなくせに」
「あたしもぐでんぐでんになっちゃうんだよなぁ…」
「私、ボーリングは負けないんだからっ」
「その格好じゃキビシイかもよ、せつな」
「あ…」

そこにいたのは、久しぶりに白いワンピースを着た少女。
圭太郎とあゆみ、そして源吉は初めて見る。

可愛くて清楚な娘、そして―――孫の姿を


「また来るね、おじいちゃん」
「またみんなで来ます」

愛ある印は受け継がれて行く。
家族の温もりと優しさと、幸せが。



(おじいちゃん。私は今―――幸せです)

澄み切った青い空に、心の声が届いた瞬間だった。





〝ありがとう〟

~END~
最終更新:2010年08月15日 23:18