み-250

差し出されたクローバーを、私は―――受け入れられなかった。
散々、みんなの幸せを踏みにじってきたのだから。

例え生まれ変わったとしても、私はもう―――。


行く宛ても無く、ただただ、歩き続けた。
止まってしまえば楽になれる。けれど、それでは都合が良すぎる。
私の事など誰も許してはくれないのだから。


―――あの子を除いては―――





もう何時間経つのだろう。
私の目の前は暗闇その物だった。
どうしていいか、わからないのだから。


〝楽になりたい〟


一瞬、私はふいに足を止めてしまった。

「やっと止まってくれたね」
「…」

「座ろ?」
「…」


丘の上。
今思えば、何かに導かれていたような気がする。
私はまだ―――目を見る事は出来なかった。

「これはね、本当に幸せを願ってる人しか見付ける事が出来ないんだよ」
「―――無理。私は…受け取れない」
「頑固だね…せつな」

「もう―――終わりに…」
「イヤだ!絶対イヤだ!!!」


大粒の涙が零れていた。
どうして?
どうしてそんなに私を―――



本当は―――望んでいた
例え、卑怯と言われようと

私は彼女を―――ラブを愛してしまったのだから
私の色に染めたかった
私だけの物にしたかった

でも。
私は何かが足りなかった。
悪魔にはなりきれなかった。

ラブ…。
私も…人間なの。


「もうみんなの所へ帰って」
「やだ」
「お願い」
「そんな事…出来ない…」

彼女を見ていると、本当に居た堪れなくなった。
自分の過ちもそう。全てを後悔した。

もう一度やり直せるのなら。
私は全てを投げ打って、彼女と―――幸せになりたい


「ご両親が心配してるわ。だから、お願い」

「せつな…。約束して」
「えっ?」
「もうどこにも行かないって。あたしを悲しませないって」
「ラブ…」



「わかった」
精一杯の返事だった。正直、私は自信が無かったから。
例えこの先、もう二度と会えなくなっても。
この一瞬が私には、最高の幸せだったのだから。

ラブは偽りの無い瞳と言葉で―――私を包んでくれたのだから。



あなたの瞳が好き

あなたの笑顔が好き
あなたの声が好き

あなたの姿は眩しすぎて
あなたの事が本当に―――


ラブ、ごめんなさい
いつも正直になれなくて


本当に…ごめんなさい


~END~
最終更新:2010年08月17日 23:55