み-258

ザアァァァァァ―――――。
路面に叩きつける激しい雨粒。降り頻る夕立の中を駆ける夏期講習帰りの2人の少女。
ようやく雨宿り出来そうな店の軒下に飛び込み、乱れた呼吸を整える。

「たはー!参っちゃうよねぇ、いきなり降ってくるんだもの!」

「そうね・・・。」

あんなに晴れてたのにさぁ、と空を見上げながら恨めし気に呟くラブに応じながら、
せつなは取り出したハンカチで髪や腕を拭っている。


「まぁでも通り雨だと思うからさ、ちょっと待ってればすぐ止むよ!」

「だといいけど・・・。」

雨が止むまでの暫くの間、他愛もないお喋りをしながら時間を潰す事にした。
今日受けた講習の内容や進路の悩み等、進学を目前に控えたこの時期特有の
会話が続いて。


「・・・でさー。せつなは・・・。」

会話の途中で何気なくせつなの方を向くラブ。すると、視界に入ったせつなの姿に
ラブの目が大きく見開かれる。

(えっ、ちょっと、ヤバいよせつな!)

そこには、雨に濡れた所為で夏服が体に張り付き、胸の谷間やお臍が識別可能な程
素肌が透けてしまったせつなの姿。
走って来た事で、色白い肌はほのかに上気しており、それがより一層透け具合を
強調している。
また、髪先や顎を伝って落ちる水滴が何とも言えぬ艶かしさを醸し出していて。


せつなの一糸纏わぬ姿は幾度と無く目にしてきたものの、普段あまり露出が多い
格好を好まない彼女を良く知る身としては今の状態がとても新鮮に映り。

(わはー・・・。)

まさに水も滴るいい女、という言葉を当て嵌めるのが適切なせつなの姿に、
ラブは声も無くただただ見入ってしまっていた。


「・・・どしたの?」

「あ・・・。」

急に会話が途切れたのを不自然に感じたのか、ラブの方を向くせつな。
固まってしまっているラブの視線を辿って己の姿をまじまじと見やり。
状況を把握したせつなの頬がかぁっ、と朱に染まる。


「・・・あのねぇ、ラブ。」

「ご、ごめん・・・。」

何も言わず見惚れていた事を詰問されると思い、ラブは謝罪の言葉を口にする。
しかし、返ってきたのは意外な言葉で。

「・・・私もそうだけど、ラブも結構酷い事になってるわよ?」

「へ?」

せつなにそう言われ、ラブは己を見やる。―――すると。
するとそこには、素肌はもとより胸を覆う薄桃色のブラジャーまで透けた悲惨な
姿があった訳で。

「―――――!!!」

声にならない声を上げて、ラブはその場にしゃがみ込んでしまい。


「なっ、何でもっと早く言ってくれないのよぉ!」

「それはこっちのセリフよ!」

「ふぇーん、こんな状態じゃ家に帰れないよぅ・・・。お願いせつなぁ、
 アカルン使ってよぉ・・・。」

「馬鹿な事言わないで!家まであと少しなんだから、走って帰るわよ!」

「そんなぁー!」


―――そして、夕立が上がった後。
先程を遥かに上回る勢いでクローバータウンストリートを駆けるラブとせつなの
姿があったそうな。
最終更新:2010年08月19日 01:38