「ねぇ、せつなぁ、ここなんだけど――」
あはは、そっか、もうせつなは居ないんだ。
「あ~わかんないよ、せ……」
だから――もう居ないんだってば!
せつな、今ごろ何してるのかな? ラビリンスにも学校とか宿題とかあるのかな。
お友達とか居るのかな? 一人っきりで寂しい顔してなきゃいいけど……。
「ラブ~入るわよ。はい、お茶とドーナツよ。夏休みの宿題は進んでる?――って……」
「え?――あっ、きゃっ、違う、これは違うの! お母さん」
回答用紙の隙間を埋め尽くした〝せつな〟の文字。
ちっとも似てないせつなの似顔絵。
笑顔を描いているのに、なんだか泣いているようにも見えた。
「ラブ……あなた……」
「だから違うの! たまたま問題が難しくて、せつななら解けるかなって思い出しちゃっただけで」
今消すから――って、あれ? どうして止めるの? お母さん。
「消さなくていいわ。さあ、せっちゃんが見てるわよラブ。負けてられないわよね?」
「うん――そうだね」
そう、負けてられない。せつなはきっと、今も精一杯がんばってる。
宿題なんて問題にならないくらいに、難しいことに挑んでるはずなんだから。
でも……お母さんの手、震えていた。ほんとうに、それが言いたかったからなの?
そっか――たとえ落書きでも、せつなが居なくなるのを見たくなかったんだね。ごめんなさい、お母さん。
でもね、あたし思うんだ。
寂しいって気持ち。悲しいって気持ち。
それはね、そう感じるくらいに、せつなと過ごした時間が素敵だった証拠なんだよ。
お母さん。せつな。あたし頑張るよ。
そして――必ずみんなで幸せ、ゲットしようね。
最終更新:2010年09月11日 23:35