気付いた時には、あたし一人だった。
ふとした瞬間に訪れる寂しさが、あたしを苦しめる。
わからない。
わからないんだ。自分の気持ちが。
あの時、確かに笑顔で送り出した。互いに幸せゲットしようねって。
離れていても繋がってる。
話したい時には話せるし、会おうと思えばすぐに会えた。
毎日欠かさなかったメール。
おはようからおやすみまで。どんな些細な事も、お互い教えあって。
でも。
それはあたしのわがままだって気付いたんだ。
せつなの旅立ちを、今後を応援するって決めたのに。
いつしか自分の寂しさを紛らわすために利用してたんだ。
あたしはそんなに強くない。
せつなの部屋の前を通る度に思い出す、あの頃の記憶。
ネームプレートは今も色褪せていない。
扉を開ければせつながそこにいるんだ。笑顔であたしを見てる。
いや。
怒ってるかな。
夢はどうしたのって。
すっかり、ダンスレッスンは疎かになっていた。
それぞれの夢に進むべき中で、一人あたしは蚊帳の外。
飽きたわけじゃなかった。ただ、力が沸かないんだ。
至って普通。
学校でも、家でも、遊びでも。
決して無理してる訳じゃない。だけど何か足りなかった。
心の底から笑顔にはなれなかったんだ。
せつな…
ベランダから夜空を見上げる事が多くなった。
あの星空の向こう側には何があるんだろう?
そう思うと不思議とあたしはリラックス出来た。
そして鳴るリンクルン。
今日もせつなは、あたしに電話を掛けてくれる。
嬉しい。とっても嬉しい時間。
だけど。
時々出なかったりする。寝たふり。
意気地無し…
あたしの意気地無し。
毎日のように聞きたい声も、時にはあたしを苦しめるんだ。
素直だったあたしはもういないよ。
せつながいなくなってから、本当に自分は弱くなってしまった。
心にぽっかり、穴が開いちゃったんだよ。
決まってそんな日は泣いちゃう。
枕に顔を押し潰してさ。大泣きだったりするんだよ。
翌朝なんて目が腫れちゃって、まっかっかになっちゃってさ。
思うんだ。
あたしにはせつなが必要なんだなって。まだまだ。
でも言わない。
何か負けたみたいですっごく嫌なんだよ。意地っ張り?そうだろね、きっと。
眠れない日が多くなった。
頭の中はあなたでいっぱい。
せつなでいっぱい。
今何してる?明日は何をする?週末は?今度いつ会おうか?
一人になるのがこんなに悲しいだなんて、想像もしなかった。
まだそんなに経ってないのにね。
それだけせつなの存在が大きかったって事なんだろうな。
いつも一緒だったもんね…
冗談で、この壁壊しちゃおうかって言ったの覚えてるかな。
そしたらせつなもやってみる?とか言っちゃって。おかしいよね。
そんな事言う割には、肝心な時にお互い緊張しちゃってさ。
暗闇の中で空間に指で書く文字。東せつな。
そこにハートマークでデコレーション。そっと口付け。
おやすみ、せつな。
悲しみの中で得られる物。得られた物。
せつなの存在。ラブの孤独。失いつつある夢の矛先。
まだ始まったばかりだと思っていた恋道。奇しくもそれを邪魔したのが夢。
見る事も願う事も叶える事も出来る。なのに今は、それが一人の少女を苦しめていた。
救い出す事が出来るのは、やはりせつなの存在なのだろう。
そして、今一度、ラブ自身が素直になる事。想いを伝える事。
真っ直ぐに。
ただ、正直に。
愛よ―――もう一度
~END~
最終更新:2010年10月22日 00:28