―――チェックメイト―――
これは、私が最近お気に入りで使っている言葉。
戦いの中で覚えた言葉だけど、響きが良くて。
「ごめんね。どこもお客さん並んでておそくなっちゃって…」
「だったら無理しなくてもよかったのに。私はブッキーが隣にいてくれればそれでいいわ」
瞬間、ブッキーが硬直したのは言うまでもないんだけど。もう何回目かしら?慣れちゃってる私も私だけど。
「あ、ありがとう…。えっと、冷めないうちに食べよ」
「えぇ。―――あら?」
「どうしたの?」
そこにあったのはたこ焼き。美希が嫌いなあのたこが入った食べ物。
私がお願いしたのは―――――たい焼き
「ごめんなさい!」
「もうブッキーったら、おっちょこちょいなんだから」
「買いなおしてくるね」
「どして?私はブッキーと一緒に食べれるなら何でもいいのよ?」
ここでは、トマトよりもゆでダコと言う表現の方が合っている気がする。ブッキーには悪いけど。
「わたしおっちょこちょい。いっつもせつなちゃんに迷惑かけちゃって」
「迷惑?別に気にするような事じゃないわよ。私はそんなブッキーが大好きよ?」
あれからどれくらい経ったのかしら。夕日ってこんなに綺麗かと思うぐらい、私は一人だったような気がする。
膝の上には、すやすやと気持ち良く眠るブッキーの顔が。とても可愛らしい。まるで妖精のよう。
「…つなちゃ…ん」
夢の中でも私がいるのかしら?くすくす。またいじわるでもしちゃってるのかしら、私。悪気はないのだけど。
なぜか、こう、違う意味で私を癒してくれるのよねブッキーは。
そっといじめたくなるタイプ。ほおっておけないから余計に。
「・・・たいやき」
「えっ?」
寝言でそれ言うかしら。本当に面白い子ね、ブッキーは。たこ焼き美味しかったわよ。ちゃんとブッキーの分、残してあるから。
私は、ブッキーをこのままそっとしておきたいと思った。
気持ちよさそうに私に委ねてるその姿を、少しでも長く―――長くと。
もし。
あの時、たい焼きを買ってきてたら、こんな事にはなっていなかった。
そう考えると。
たこ焼きって凄い。―――違う、ブッキーって凄いわ。だから好きなの、私は。
―――あなたの事が
(チェックメイト)
秋の夕日に包まれて。
甘い口付けのプレゼント。
―――本当はブッキーが勝ってるのかしら?
~END~
最終更新:2010年11月22日 01:04