映-204

「この子のお友達になってくれる?」
「うん!!」
満面の笑みを浮かべ、母親の元へ駆け寄る少女。
その手には、ラブから譲り受けたかわいいクマのぬいぐるみ。

「幸せ、ゲットだよ!!」



子供達の笑顔と幸せを守るため、少女たちは懸命に戦った。
四人の伝説の戦士、プリキュア。

そして―――


バザー会場から帰宅すると、せつなは一人、部屋に閉じこもった。
特に理由も無く。
ベッドに横になると、少し前のあの〝言葉〟を思い出した。

(この子のお友達になってくれる?)


幼き頃の記憶が自分には無い。ましてや思い出など皆無。
だからこそ、今が楽しくてしょうがない。毎日がとても幸せで、充実している。

それは――――あの犠牲があったから。国民番号ES4039781、イースの――――〝死〟
ラビリンスで産まれていなければ、ラブたちと同じように泣いたり笑ったり、踊ったり歌ったりしていたのだろう。
沢山の思い出に囲まれ、幸せな生活を送っていたはずだ。勿論、そこには〝友達〟も存在したであろう。

「ぅ…うっ…」
東せつなとして。やり切れない想いが、胸を苦しめる。あの子を―――イースを幸せに導いてあげたかったと。
自分はイースの生まれ変わりだなんて、そう容易くは割り切れない。過去との決別は出来ても、イースその物を否定はしたくなかった。

命の重さ。
生きる事の大切さ。

もっと早くに気付いていれば、違う人生を彼女は送っていたのかもしれない。
命は管理される物では無いのだから。

一滴の涙。
人間は後悔をしてまた、強くなる生き物。
強き者は弱き者を守らなければいけない。その強さに決して溺れる事無く。



お前は今…幸せなのか?

えぇ、とっても

うらやましいな

どして?

わからない。ただ…

ただ?

…寂しい

じゃあ私たちと一緒に踊りましょ?さぁ―――

私は―――私は―――イース…



差し伸べた手が少し、あと少しで届く。届くはずだった…。
暗闇の中で射し込んだ眩い光。彼女にはあまりにも眩しすぎた。
運命(さだめ)の矢は解き放たれ、か弱き心に突き刺さる。



生命尽きるとも、魂ここに宿りけり



イース=東せつな

でも。
彼女と彼女。二人なのだ。
だから。
だから手と手は繋ぎ合わせる事が出来る。

絶対に―――夢は叶うのだから



「私の……友達になって…くれないか?」
「もちろん!私は東せつな。あなたは?」

~END~
最終更新:2010年11月26日 23:54