あったかい……
冬って一番人肌を感じられる季節だと思う。
部屋はエアコン以外の熱気がむんむんしていて、熱源の片方はベットに仰向けで空気を吸うために胸を上下させている。
少し紅い頬や上気した肌を見ているだけで、先ほど落ち着いたと思っていた気持ちがまた膨らんできた。
肘をついて彼女の上にいたあたしは、彼女の頬にそっと手を添えた。
彼女は目を薄く開けて、どうしたの?と聞いてきた。
「せつなさ……学校楽しい?」
「うん」
別にこんなこと聞きたかったわけじゃなかったけど、何を言おうとしてたのかはっきりしなかったから。せつなの白い指があたしの蒼い髪を優しく梳いた。
「美希と一緒のクラスとかだったら面白そうよね」
せつながクスクスと楽しそうに笑うから、あたしも自然と笑顔になった。
せつなの横に倒れ込んですりすりと近づくと、猫みたいと言って頭をなでなでしてくれた。
「あのさ、今まで好きな子とかいた?」
「ラビリンスにいた頃は自分の感情なんて気にしたことなかったから……美希が初めてよ」
ラビリンスという言葉を聞き、あたしは彼女が背負ってきたであろうモノを考え目を伏せた。
絶対的に管理された世界。
それを想像するのも怖かった。
あたしは彼女をそっと抱きしめる。
存在を確かめ合うように。
「美希は?」
「あたしもせつなが初めて」
ほんとは淡い恋心を抱いたようなものはあった気がする。でもそれらは言葉にするようなものではない、泡のようなもの。
こんなに好きになったのはせつなだけ。
くるっとせつながあたしの方を向いた。何か言いたそうな顔をしているけど、あたしと目が合うとそらしてしまう。
「なに?どうしたの?」
「あの……ちょっとやってみたいことがあるんだけど……」
「ん?してみたら」
あたしが促してもしばらくは悩んでいるようだった。
何がしたいんだろう?
気持ちが固まったのか、せつなはゆっくり起き上がった。
さっきとは上下逆になる。
「もう一回したかったの?」
いつもならこんなにおどおどしないのに、せつなはやけに緊張した面持ちであたしの体に触れた。
「ふぁ……」
胸を優しく包み込むように揉み、先端を口に含み甘がみした。 ちゅ、ちゅとキスの雨を降らせて少しずつ下に移動し、お腹の辺りに口づける。
胸より下は昨日、一昨日の朱い跡が所々散らばっている。
せつなはキスマークをつけるのが好きだ。最初の頃、モデル撮影で支障がでると困るからあたしがやんわり拒否していたら悲しそうな顔をして……拗ねた。
えっちすることも中断して拗ねた。
痺れを切らしたあたしが押し倒したら、私は美希のモノなのに、と言われあたしはようやく意味を理解した。
キスマークは自分のモノだと示すの証なのだ。子供が玩具に名前を書くように、これは自分のモノだという証。
あたしは苦笑してせつなを思いっきり抱きしめた。彼女にとってきっとあたしは初めて手に入れた玩具。離したくなくて、そばにおいておきたくて、誰にもあげたくない。そのための印づけ。
あたしは譲歩して冬の間は見えないところは好きにつけていいと言った。その時の花が咲いたような嬉しそうな笑顔をあたしは今だに覚えている。
せつなの指が秘裂を広げ、顔を近づけ舌を差し込んだ。
「ん、ぁ、いい……気持ち、よ」
ぴちゃぴちゃと音が聞こえ、あたしは羞恥と快感の狭間に連れていかれる。正直これは抵抗がある。する側だとそうでもないけど、せつなもされる時はあたしの頭を軽く押し返すから、同じなんだと思う。せつなは顔を離し、指を一本ずぶずぶとゆっくり沈めた。軽い抵抗を受けながらもせつなの細い指はあたしのナカに根元まで入っていく。
「痛くない?」
「うん…… 気持ちいい」
あたしの表情を確認して、せつなはゆっくり指を動かす。
強弱をつけて動く指をあたしの体は蜜をだして受け入れる。
「あ、すごい締め付けてくる」
あたしの声が切ないものに変わってきて、せつなは指をもう一本増やしますます攻め立てる。
圧迫感を感じながらもあたしの身体は侵入者をきゅううと締め付け逃がさない。
「ん、あ、やっ、ああ、ふぁあああああ」
ビクンと体が波打って体中に電流が走った。一気に体が重たくなったように感じ、あたしはだらしなくベットに身体を沈める。
「はぁはぁ……ん、せつな?」
あたしが薄く目を開けるとせつなはあたしの足元でまた悩むような顔をしている。
あたしが体を起こした時、いきなりあたしの脚を持った。
「確かこんな風だったと思う」
え……
あ、これって
くちゅ
「ひゃあ、んん、どこで覚えた……の?」
「クラスの子が漫画持ってきてて」
せつなはあたしの秘所に自分のモノを合わせてきた。
せつなのソコも濡れていて、触れ合っただけで不思議な感覚がする。
「……ん、ちょっと体勢きついね」
「じゃあ……せつなが寝る?」
パフッとせつなはベットに倒れた。
うん。やっぱりあたしが攻める方がしっくりくるよ……ね。
「体力、大丈夫?」
ちょっとムッとしてしまう。大丈夫。だと思う……。
持久力に関していえば、幼い頃から戦士として育ってきたせつなに敵うはずはなかった。だからあたしはよく無理してでもせつなに合わせてしまう。ただの意地だ。
あたしも子供だと感じるのはこういうとき。
キスマークのコトもあたしのちっぽけな意地も結局は一緒だと思う。
深呼吸してあたしはせつなの脚と腰に手をやる。漆黒の瞳は不安と期待であたしを見る。
ああ……
この瞳を濡らしてやりたい
あたしだけをうつしてやりたい
いつもの少し低い声とは違う甘い嬌声を聞きたい
白いふっくらした肌に噛み付きたい
せつなの瞳に吸い寄せられるように一瞬よぎった邪な考え。
せつなをあたしだけの世界に閉じ込められたらいいのに―――
いつも頭の隅にあったコト。
えっちの時は特に強く思う。
二人だけの世界に行きたい、と。
空想に浸るあたしをせつなが訝しそうに見てきたので、慌てて行為を再開する。
これは実はあたしもやりたいと思っていた。
せつなと付き合うようになって読みだしたちょっと特殊なエロ本の数々は、捻りもなしにベットの下にある段ボールに入っている。
たまにラブと二人で読書会を開いて研究してるのは内緒。
腰をゆっくり動かすとせつなは甘い声をあげた。
あたしの長い髪がさらさらとせつなの身体に触れる。
「ひっ、あ、ああああん」
「ああ……ん、これヤバいね。気持ちいい」
「んん、美希ぃ」
くちゅ…くちゅ…くちゅ…
段々とスピードをあげる。
せつなが瞳を潤ませ、あたしの首に手を回して、体を少し起こす。
吐息が感じられる距離にくる。あたしは自分から唇を重ねた。
舌を絡めせつなを貪る。
目を細めて微笑んだせつなが、背中に回した手に力を入れる。
背中とせつなの腕があたしの髪を巻き込んでいて少し痛い。
探るように動かしていた腰を今は激しく動かす。
繋がっているところがぐちゅぐちゅと水音を響かせる。
「ぷはっ、ひっ、あああ」
口を離して神経が触れ合う部分に集中する。甘い嬌声が部屋中に響き、あたしはゾクゾクとした感覚に襲われる。
「あ、あ、美希っ、ふあ、……私イきそう」
「んっ、はぁ、一緒にっ、いこ」
お互いの蜜が混ざり合い、感覚がだんだんとなくなっていく。
がくがくと肢体が震えだす。
あと少し
もうすぐ―――
せつな、愛してる
せつなが一際高い声で果てた時、あたしは耳元で囁いた。
背中に食い込む爪を感じながら、あたしも恍惚とした表情でのぼりつめた。
体が動かない。
あたしとせつなはぐたーとベットに倒れ込んだ。
行為の後の甘ったるい雰囲気があたしたちを包み込む。
「疲れたね」
「漫画ではもっと簡単そうだったのに」
せつなが納得がいかない顔をしていたので笑ってしまった。
そりゃあ漫画だから。生々しい部分は省いてたんじゃない?
「シャワーどうする?」
あたしは横を向いて枕に顔をつけた。髪が顔にへばり付いて少し気持ちが悪い。
せつなも珍しくびっしょり汗をかいている。体を抱き寄せるとお互いベタベタしていて苦笑い。
「朝でいい。もう少しこの状態でいたいから」
「うん」
あたしは手近に常備してあるコットンタイプのメイク落としでせつなと自分の顔を丁寧に拭く。
こんなことなら化粧落としておけばよかった。
せつなはせっせと動くあたしを見てくすりと笑った。
「なに?」
「せわしいわね」
せつなもいい加減どれだけ恵まれた美貌をもっているのか自覚してもらいたい。
このキメの細かい肌は、本人が守らなくてもあたしが守ってみせる。
「うー」
眠たいのか顔を触るあたしをうっとうしがってきたので簡単にすませることにした。
しっとりタイプの化粧水、乳液で仕上げ、加湿器をつけてようやく寝る体勢に入る。
ありがとうと言ってせつながあたしにきゅっと抱き着いた。
明日の朝は外で食べよう。こんなに素敵な夜を今だけのものにするにはもったいない。
新しくできたカフェにでも行って、あたしの好きな『ティファニーで朝食を』みたいに優雅な朝に。ただあたしが見つめるのは宝石じゃなくて、一人の可愛い女の子だけど。
あたし、完璧―――
おやすみと既に眠ってしまったせつなに囁いて、後数時間で実行される予定に胸を膨らませながら、あたしは目を閉じた。
END
最終更新:2010年12月19日 23:59