避2-488

イルミネーションが恋人たちを招き入れる。
光り輝き、白い息が夜空に吸い込まれる。

今日は特別な日。待ち焦がれた日。
どんなお洋服を着てきてくれるのかな?
どこへ連れてってくれるのかな?
こうやって待ってる間もわたしの心は弾んで。

「るんるん」
思わず口にしちゃう。そんなわたしの唇にリップクリーム。
落ち着かなきゃ。どきどきしてるわたしの胸を、心を、そっと手で押さえて。

―――ふぅ
深呼吸。吸い込む空気は冷たくて、ちょっと辛い。今年の冬は気温の差が激しい。
夜になればぐっと冷え込んで。早くあたたまりたいな…。それが今のわたし。

腕時計。
もう何回見ちゃってるのかな。早く会いたい。

「うん!アタシ超カンペキっ!」
煌びやかな町並みにも屈しない美貌。ショーウインドウに映る彼女は宝石のよう。
その輝きの行く先は愛する妖精の元へと導かれ。

今日だけは仕事を入れなかった。何があっても必ず会おうと。
去年出来なかった約束。二人だけの時間を。大切な日に貴方と―――。

自然と早足になってる自分が少しおかしくて。チョット子供かな?
家を出る時は凄く寒く感じたのに。今はなんだかぽっかぽか。
着込んだせいかって?正解~。

(ホントは違うけど…ネ、くすっ)

歩道にはブルーのLEDが飾られていて。アタシ色。何だかお祝いされてるみたいで。
あ、でもアタシがデコったらここにイエローもつけちゃうかな。

握られた右手の中には小さい箱。渡せなかったから今年こそは。
ヨシっ―――
乙女の気合。蒼き流星、いざ参らん。



天使の女神像の前で待ち合わせ。
今年は二人きりで聖夜を共に。あなただけを―――
心と心が繋がる瞬間、灯火は幸福へといざなう。

〝Happy Christmas〟

~END~
最終更新:2010年12月25日 20:25