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避2-577

「南南東ね」
「あたし夢つぶやく前に全部たべちゃいそう」
「僕はおかわりしちゃうぞ!」
「じゃあ、せーの…」
あゆみの掛け声で一同、大きな口を開けて巻き寿司を頬張る。
近年、関西地方からの風習が全国にも広がっていた。
それは勿論、ここ桃園家にもやって来ていた訳であり。

幸せを形にしたような家族。それがこの桃園家と言っても過言ではないだろう。
せつなを家族の一員として迎え入れ、より一層家族の絆が深まった。
愛情や優しさ、温もり。目一杯に感じ、それを分かち合う。そして成長していく。
それは、圭太郎とあゆみの人生理論でもあり、教育理論でもあった。
それに応えるかのように、娘たちは明るく元気に、前向きに日々を躍進していった。

父は思う。これ以上の幸せはあるのだろうかと。
母は思う。ずっとこの幸せが続きますようにと。

二人は心の中で感じる。我が子でいてくれる事に――――ありがとうと。


「せつなが精一杯の愛情を込めて作ったんだよー!」
「ラブが教えてくれたからよ。私が幸せゲットしちゃったみたいね」
食べる事も、作る事も、後片付けだってみんな一緒。ラブとせつなはいつも二人一緒。

両親の喜ぶ顔がいっぱい見たくて、朝からずっとそわそわ。
ラブは授業中も、ノートに恵方巻へ何を入れるかメモ書き。
そんな彼女の横顔を覗きながら、せつなはにこにこ微笑んで。

先生に怒られちゃった事は二人だけの秘密。


夢。
願う事と叶える事。誰もが見れる物。
それは届きそうで、中々手に取れない、掴む事の出来ない物。

「難しく考えるよりもさ、お腹いっぱい食べて幸せゲットだよ!」
「もうラブったら」
お互いの夢はもう叶えられてるのかもしれない。今が十分、幸せだから。
それでも、この恵方巻を食べてさらに運気が向上するのであれば。


(いつまでも二人が一緒にいられますように)


「ごほっぐふっ」
「お、お父さん大丈夫!!!???」
「せっちゃんお水!」
「はいっ」

何気ない家族の一ページ。
それは、両親の思いと愛娘たちの想いで創られた素敵な思い出。
恵方巻の文化は今年も、家族に夢と願いをもたらす為にやって来た。

「お母さんは何かお願いした?」
「七夕じゃないのよラブ」
「あ、そっか」
「僕いっぱいお願いしちゃったぞ」
「だと思った」
「ラブはどうなんだい?」
「あ、あたしはせつなと…」
「言っちゃダメー!」

どこか履き違えてるようにも見えるが、それは気にしない気にしない。
笑顔がいっぱい。それで十分なのだから。

おわり
最終更新:2011年02月04日 23:35