「南南東ね」
「あたし夢つぶやく前に全部たべちゃいそう」
「僕はおかわりしちゃうぞ!」
「じゃあ、せーの…」
あゆみの掛け声で一同、大きな口を開けて巻き寿司を頬張る。
近年、関西地方からの風習が全国にも広がっていた。
それは勿論、ここ桃園家にもやって来ていた訳であり。
幸せを形にしたような家族。それがこの桃園家と言っても過言ではないだろう。
せつなを家族の一員として迎え入れ、より一層家族の絆が深まった。
愛情や優しさ、温もり。目一杯に感じ、それを分かち合う。そして成長していく。
それは、圭太郎とあゆみの人生理論でもあり、教育理論でもあった。
それに応えるかのように、娘たちは明るく元気に、前向きに日々を躍進していった。
父は思う。これ以上の幸せはあるのだろうかと。
母は思う。ずっとこの幸せが続きますようにと。
二人は心の中で感じる。我が子でいてくれる事に――――ありがとうと。
「せつなが精一杯の愛情を込めて作ったんだよー!」
「ラブが教えてくれたからよ。私が幸せゲットしちゃったみたいね」
食べる事も、作る事も、後片付けだってみんな一緒。ラブとせつなはいつも二人一緒。
両親の喜ぶ顔がいっぱい見たくて、朝からずっとそわそわ。
ラブは授業中も、ノートに恵方巻へ何を入れるかメモ書き。
そんな彼女の横顔を覗きながら、せつなはにこにこ微笑んで。
先生に怒られちゃった事は二人だけの秘密。
夢。
願う事と叶える事。誰もが見れる物。
それは届きそうで、中々手に取れない、掴む事の出来ない物。
「難しく考えるよりもさ、お腹いっぱい食べて幸せゲットだよ!」
「もうラブったら」
お互いの夢はもう叶えられてるのかもしれない。今が十分、幸せだから。
それでも、この恵方巻を食べてさらに運気が向上するのであれば。
(いつまでも二人が一緒にいられますように)
「ごほっぐふっ」
「お、お父さん大丈夫!!!???」
「せっちゃんお水!」
「はいっ」
何気ない家族の一ページ。
それは、両親の思いと愛娘たちの想いで創られた素敵な思い出。
恵方巻の文化は今年も、家族に夢と願いをもたらす為にやって来た。
「お母さんは何かお願いした?」
「七夕じゃないのよラブ」
「あ、そっか」
「僕いっぱいお願いしちゃったぞ」
「だと思った」
「ラブはどうなんだい?」
「あ、あたしはせつなと…」
「言っちゃダメー!」
どこか履き違えてるようにも見えるが、それは気にしない気にしない。
笑顔がいっぱい。それで十分なのだから。
おわり
最終更新:2011年02月04日 23:35