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新-009

真新しいベッドに、そっと腰掛ける。
もう何度も頭の中でリプレイした言葉を、もう一度思い起こす。
――助けてくれて、ありがとう――
あったかくて大きな塊が、胸の奥からこみ上げてくる。
もう何度も何度も噛みしめた後だというのに・・・。
その温もりを抱え込もうとでもするように、
せつなの小さな背中が、心もち丸くなった。

ずっと戦ってばかりの日々だった。
でも、それは全て任務のため。
誰かのために戦ったことなんて、一度だって無かった。
ましてや、あんなきれいな笑顔で、澄み切った瞳で、
ありがとう、と言われたことなんて。
生まれてはじめての経験に、せつなは戸惑い、押し寄せる嬉しさを持て余す。


最初は罪滅ぼしのつもりだった。
かつて自分が傷つけてしまった、タケシ君とラッキー。
彼らの楽しそうな姿に出会って覚えた、激しい悔い。
その痛みの中から、いつしか強い気持ちが生まれた。
――彼らの幸せを、守りたい――

何から? かつての自分から?
違う。あれは、かつての自分ではない。
イースがラッキーをナケワメーケにして、
タケシ君と街の人たちを傷付けた事実は消えない。
だからこそ。
もう二度と、彼らを傷つけたくはなかった。

でも結局、助けてもらったのは、私の方だったんだ。
彼らが無事でいてくれたことで、私にも誰かを守ることができると教えられた。
彼らが笑顔でいてくれたことで、私にも誰かを笑顔にできると教えられた。
そして・・・私もプリキュアとして、
キュアパッションとして生きていっていいんだと
彼らに背中を押してもらえた気がした。


机の上に大事に置かれたリンクルン。
ほんの少し前まで触れることすら出来なかったそれを、両手で大事に抱える。
感じるかすかな温もりに、小さく笑みがこぼれる。
大切そうにケースに納めてから、せつなはベッドに身を横たえ、目を閉じた。

これからのことなんて、わからない。
自分に何ができるのかも、わからない。
でも、私は精一杯、守っていこう。
誰が決めるのでもない、自分が心から、大切だと思えるものを。

昨夜とは打って変わって、穏やかな寝息を立て始めるせつなを、
そっと見守るように
優しく励ますように
リンクルンが、淡くあたたかな 赤のともしびを宿していた。

~終~
最終更新:2011年05月24日 23:16