真新しいベッドに、そっと腰掛ける。
もう何度も頭の中でリプレイした言葉を、もう一度思い起こす。
――助けてくれて、ありがとう――
あったかくて大きな塊が、胸の奥からこみ上げてくる。
もう何度も何度も噛みしめた後だというのに・・・。
その温もりを抱え込もうとでもするように、
せつなの小さな背中が、心もち丸くなった。
ずっと戦ってばかりの日々だった。
でも、それは全て任務のため。
誰かのために戦ったことなんて、一度だって無かった。
ましてや、あんなきれいな笑顔で、澄み切った瞳で、
ありがとう、と言われたことなんて。
生まれてはじめての経験に、せつなは戸惑い、押し寄せる嬉しさを持て余す。
最初は罪滅ぼしのつもりだった。
かつて自分が傷つけてしまった、タケシ君とラッキー。
彼らの楽しそうな姿に出会って覚えた、激しい悔い。
その痛みの中から、いつしか強い気持ちが生まれた。
――彼らの幸せを、守りたい――
何から? かつての自分から?
違う。あれは、かつての自分ではない。
イースがラッキーをナケワメーケにして、
タケシ君と街の人たちを傷付けた事実は消えない。
だからこそ。
もう二度と、彼らを傷つけたくはなかった。
でも結局、助けてもらったのは、私の方だったんだ。
彼らが無事でいてくれたことで、私にも誰かを守ることができると教えられた。
彼らが笑顔でいてくれたことで、私にも誰かを笑顔にできると教えられた。
そして・・・私もプリキュアとして、
キュアパッションとして生きていっていいんだと
彼らに背中を押してもらえた気がした。
机の上に大事に置かれたリンクルン。
ほんの少し前まで触れることすら出来なかったそれを、両手で大事に抱える。
感じるかすかな温もりに、小さく笑みがこぼれる。
大切そうにケースに納めてから、せつなはベッドに身を横たえ、目を閉じた。
これからのことなんて、わからない。
自分に何ができるのかも、わからない。
でも、私は精一杯、守っていこう。
誰が決めるのでもない、自分が心から、大切だと思えるものを。
昨夜とは打って変わって、穏やかな寝息を立て始めるせつなを、
そっと見守るように
優しく励ますように
リンクルンが、淡くあたたかな 赤のともしびを宿していた。
~終~
最終更新:2011年05月24日 23:16