震える風~第2幕~終幕

終幕

『どうしたの?悩み事?』
『あ…クリスさん……』
 テーブルに乗った皿と睨めっこをしていたら、笑顔の女が話しかけてきた。
 この酒場はあまり広くなく、大きくもない。
 今この酒場にいるのは、自分とこの女━━━クリスだけだ。
『いえ、悩み事ってほどでもないんですが……』
『うんうん、おねーさんで良かったら聞いてあげるわよ?』
 クリスが顔を輝かせながら言う。
 それは聞いてあげるではなく、“是非聞かせてくれ”という意思表示だ。
『…………』
『私じゃ足りない?』
『いえ、そういうわけじゃないんですが……
まだ自分のなかでも整理できてないっていうか、その…』
 上手く言葉が纏まらない。
 こんな時は人に相談するのが一番だ。
 それが経験豊富な年上となれば、願っても無いことだと分かっている。 
 だが、言えなかった。
 自分が何を悩んでいるのか。
 そして、何を思っているのか。
 正直にいうと自分でも分かっていなかったからだ。
『そう?まぁ、私はここにいるからいつでも相談しにきなさい』
 “そういった事”も見透かしているのか、クリスは空いた皿を持ち、厨房へと戻る。
『ここでしたか。もう朝食は?』
 タイミングを計ったかの様に、一人の少女が酒場を訪れる。
『うん、ごめん。もうすませたんだ』
 少女は、そうですかというとルインの向かいの席に腰掛けた。
『しかしびっくりしました。貴方達がまさか怪我をして戻ってくるとは思っていませんでしたから』
『……ごめん』
 少女の言葉にルインは苦笑いを浮かべる。
 全く持って弁解の余地はなかった。
 彼女━━━エレノアの傷を癒すための薬を取りに行って、自分達が怪我をするなど本末転倒だ。
 これでは彼女でなくとも、いくらでも嫌味を言いたくなる。
『ふふ、あんまりルイン君を虐めないであげて。
ちゃんと帰ってきてくれたんだから、それで良しとしないと』
 いつの間にかクリスが皿を持って立っている。
 エレノアも気が付かなかったのか、驚いた様な表情で皿を受け取っている。
 彼女━━━エレノアが自室から出て歩けるようになったのは、つい先日の事らしい。
 それからはリハビリがてらにこの酒場にやってきて、朝食を摂っている。
 この頃は時間も安定してきたので、クリスは大体彼女が来る時間に朝食を作って待っているというのだ。
『それは…そうですが……』
 クリスの言葉に仕方なし、といった感じで頷く。
 何はともあれ全員無事に帰ってきたのだ、それは良かったと思っている。
 クリスは狭い酒場を見渡した後、エレノアに問う。
『あら?リシェスはまだ部屋にいるの?』
『私が部屋を出るときはまだ寝ていましたね』
『起こしてあげればいいのに』
 目を閉じてスープを飲む、エレノアにクリスは苦笑う。
 確かに同室ならば、起こしてやっても罰は当たらないと思う。
 しかし怪我人に起こされるというのも、情けないかもしれない。
 ひょっとしてエレノアはそういったとこに気を遣ったのかもしれない。
 リシェスが水竜との戦いで受けた傷はそう酷いものではなかった。
 ガノトトスの体当たりを受けたとはいえ、やはりガードが間に合ったのが幸いしたのだろう。
 ルインも同じく重度の打撲だったのだが、ここフライダムに戻ってくるまでに随分と良くなっていた。
 リシェスも怪我は良くなっていると思うのだが、長旅の疲れが出たのかもしれない。
 結局リシェスが酒場にやってきたのは日も随分と高くなった頃だった。
 ちなみに━━━
『どうして起こしてくれなかったのよー!』
 という、彼女の叫びは。
『怪我人に起こされたいのですか?』
 というエレノアの一言で切って捨てられた。
 そんなやり取りを見ながらクリスは笑う。
 ふと酒場の入り口に一人の男が立っているのに気が付いた。
『あら、いらっしゃ……』
 ルインもその男に気が付いたのか、持っていたグラスを取り落とす。
 酒場にグラスの割れる音が響く。
『?どうしたのですか、ルイン?』
 エレノアが不思議そうに首を傾げている。
 彼女には分からないだろう。
 そう、レフツェンブルグにいなかった彼女には。
『フェ……フェルディナンド……!』
 男の名を聞き、リシェスの顔から血の気が引いていく。
 分かっているのだ、この男が“再び自分達に現れる時の理由が”。
 それは━━━
 彼がギルドナイトであると知っている自分達を━━━
 自分達を殺す為だということを。
 自然と身体が強張り、武器をもっていない事に舌打ちをする。
 と、言うのにフェルディナンドはというと、のん気にクリスに挨拶したりしている。
 そしてこちらに向き直り、発した言葉が━━━
『やぁ、久しぶりだね。元気だった?』
 だったのだ。
 リシェスは驚愕のあまり口をパクパクとさせている。
 しかし、ルインはフェルディナンドを睨み続ける。
 いくら気の抜けた事を言っていても、彼がギルドナイトだという事実は変わらない。
 先ほどからの行動はその事実を知らないクリスやエレノアの騙すための演技という可能性があるからだ。
『そんな怖い顔しないでくれよ、僕達の仲だろ?』
 いつもの笑みを浮かべたまま、フェルディナンドはテーブルの空いた席に座る。
『お知り合いですか?』
 そんな彼に訝しげな表情でエレノアが問う。
 確かにいきなり現れてルインがこれほどに警戒をしていれば、少しは疑いもするだろう。
『おっと、こちらのお嬢さんははじめましてだね。僕はフェルディナンド。
レフツェンブルグの街でルインと少しの間パーティを組んでたんだよ、ね?』
 彼とはある約束をしている。
 それは先の狩りでの事を他言しない、という事。
 “それ”はフェルディナンドがギルドナイトであるという事を隠す為のものだろう。
 ギルドナイトに粛清された者は多い。
 恐らく、事故死で片付けられた者の中にも、粛清で命を絶たれた者がいるだろう。
 故にギルドナイトを恨む者も少なからずいるのだ。
 “彼等”に目を付けられる様な事をした自分達が悪いのだが、そういった者達はそうは考えない。
 ギルドナイトの正体が分かれば、復讐などといった事を考える者も出てくる。
 だからこそ“今回”の事は他言無用としたのだ。
 勿論、止められなかったからといって、言い触らすつもりもなかった。
『あ、あぁ……。で、何をしに来たんだ、フェル?』
『少し、君と話がしたくなってね』
 短く返事をし、彼の目的を聞こうと思えば、そんな突拍子も無いことを言い出してきた。
『話……?』
『そう、例えばドナの話なんか聞きたくないかい?』
『━━━嫌だと言ったら?』
『僕は別にかまわないよ』
『…………』
 “彼女”の話なら、エレノアを外した方がいいかもしれない。
 ギルドナイトのいざこざに巻き込む必要はないからだ。
 それに、犯罪者の話を聞いていても面白くはないだろう。
『ここでか……?』
 ルインの質問の意味が分かったのか、フェルディナンドが笑う。
『あぁ、“ここ”でしようか。お姉さん、何か飲み物を持ってきてくれますか?』
 そういってフェルディナンドは嬉しそうに笑った。


『じゃあドナは……』
『そう、ドナが“ハンター”を続けていたのは自分の子供のためだったんだ』
 彼が話しをしだしたのはつい先ほどの事だ。
 それまでは、エレノアを質問攻めにしたり、クリスにからかわれたりしていた。
 いい加減痺れをきらしたリシェスが、注意してようやく話し出した。
 それはドナが違法を犯してまでハンターをしていた理由。
 彼女には夫と子供がいた。
 夫の名をビクター、そして子供の名をウィルという。
 そう、ドナが最後の時にフェルディナンドに見ていたのは我が子の姿だった。
 いや、フェルディナンドやルインには常に我が子の姿を重ねていたのかもしれない。
 彼女の夫ビクターは高名ではなかったが、依頼はそこそこにあったという。
 貧しくも豊かでもない暮らしを彼女が送っていたのは、何年か前までだった。
 その生活は彼女の夫を狩りで亡くすという悲劇で幕が下ろされた。
 彼女の夫はハンターだったが、彼女はそうではなかった。
 ドナは生きていく為に、そして我が子を育てるために働かなければならなかった。
 しかし、女一人で渡っていけるほど世界は優しくはない。
 言い寄る男もいたが、彼女が子連れだと分かると皆彼女の前から消えていった。
 彼女に残されたのは、夫と同じ道に入ることだった。
 ハンターになれば危険は付きまとうが、それでも収入は得られる。
 もとより性別や過去など関係のない世界なのだから。
 しかし、ハンターとしての知識も実力もない彼女が続けていくのは難しい。
 そうして神はもっとも残酷な救いの手を彼女に差し伸べた。
 “密猟者との出逢い”という手を。
 ━━━それかの彼女は密猟を続けた。
 すでに進退窮まった彼女に選択の余地などなかった。
 彼女はこのまま無事に続けられるとも思っていなかった筈だ。
 しかし、それでも我が子が生きられるのなら、と手を汚し続けた。
 それが、密猟者ドナ・ファミーユの全てだった。
『くそッ!』
『ルー……』
 ルインがテーブルを殴る。
 ならば尚更あの時彼女を救わねばならなかった。
 そんな事を今更ながらに後悔する。
 しかし、自分は“あの時”彼女を救う事を諦めてしまった。
 本来ならば怒る資格もないことにも腹が立つ。
 “あの時”彼女の負った傷は致命的だった、どう足掻いても救えない程の傷だったのだ。
 今の話を事前に言っている事は不可能だが、それでも自分を、諦めてしまった自分を許せなった。
『それで、その子供はどうするのかしら?』
 クリスが真剣な眼差しでフェルディナンドを見る。
 ドナがいなくなれば、子供を育てる者はいなくなる。
 子供のいる村が豊かならば村長が何とかしてくれるだろうが、それも見込めない。
 夫がいなくなった時“何もしてくれなかったからこそ”ドナはハンターになったのだ。
 何とかしてくれるなら、“その時”にしてくれている。
『子供はギルドが預かることになったみたいだね』
『そう……ギルドが…』
 無論、犯罪者の子供として監視は付くのだろうが、それでも死んでしまうよりは幾分マシだろう。
 クリスは安堵したのか、席を立ち厨房へと向かう。
『おかわり、いる?今日はみんなぱぁーっと飲んじゃいなさい』
 そういってジョッキに麦酒を注ぎ、席へと運ぶ。
 フェルディナンドだけは「下戸だから」と断っていたが。

『さて……っと』
 それから随分と時間が経過した。
 ドナの話は余程ショックだったのだろう、普段は飲まないルインですら酔いつぶれていた。
 その様子を一人フェルディナンドが見つめる。
 今この場で酔っていないのは、酒を飲んでいない彼だけだ。
『━━━それで、貴方はどうするのかしら?ギルドナイトさん』
『ッ!?』
 不意にかけられた声に驚き、振り返る。
 そこにはエプロンを脱いだクリスが立っていた。
 先ほどまでとは似ても似つかない鋭い目をしている。
 気の弱い者なら完全に呑まれてしまうだろうという目だった。
『僕は……このまま帰るよ。お姉さん怒らせたら怖そうだしね』
 視線をはずしながらフェルディナンドは苦笑う。
 彼女の迫力に呑まれたわけではないが、ここで争うつもりもない。
『ふふ、賢明な判断よ』
 そういってクリスはフェルディナンドの額を突く。
『━━━貴方、本当は彼女を殺すつもりなんてなかったんでしょう?』
『…………』
 彼は答えない。
 ただ黙って床に視線を落としている。
 これ以上は“彼の心に踏み入る”事になる。
 それは分かっていた、それでもクリスは続ける。
『適当に彼女に怪我でもさせて……━━━そうね、川に落とすつもりだったのかしら?
でもガノトトスが現れたらそういうわけにもいかない……
だって川に落ちた彼女が食べられてしまうものね?
それで、どうにかこうにかしようと迷っているうちに“ああなってしまった”……
━━━こんなところかしら?』
『まいったな……』
 彼は小さく呟いた。
 そう呟いた彼はとても小さく見えた。
 その姿を見て、誰も彼がギルドナイトなどだとは思わないだろう。
 その小さな後姿は━━━
『そんな小さな背中に、全部背負い込んで……!』
 気が付くとクリスに抱きしめられている。
 抵抗する間すらなかった。
 しかし、抵抗しようという気も起きなかった。
『このままだとルイン君やリシェスは全部貴方が悪いと思っちゃうのよ!?
貴方はそれでいいのッ?!』
 クリスが叫ぶ。
 その声は凛と静かな酒場に響き渡る。
『僕は……!ドナを死なせるつもりなんて、なかったんだ……!』
 気が付けば叫び返していた。
 いくら泥酔しているといっても、今のは皆起きたかもしれない。
 だが止まらなかった。
 涙が溢れ、知らずにクリスを抱き返していた。
『僕はッ…!僕…はッ!!』
 クリスも嗚咽を我慢しながら、フェルディナンドの頭を撫でる。
 きっとフェルディナンドは誰にも“こう”された事がないのだろうと━━━

 抱き合ったままどれくらい時間が過ぎたのだろう。
 ずいぶんと経った気がする。
 そう思うと急に恥ずかしくなり、クリスから離れる。
『あら、もういいのかしら?泣き虫さん』
『……うん』
 頭をかきながらフェルディナンドが苦笑いを浮かべる。
『これ以上居たらみんな起きちゃうだろうし……
そうすると、出て行きにくくなるから……』
『そう……』
 そういうと彼はポーチの中から、何かを取り出す。
『これ、ルインが起きたら渡して欲しいんだ』
『━━━手紙?自分で渡したら?』
 フェルディナンドは静かに首を振る。
『そう?彼、喜ぶと思うわよ?』
『うん、でも……』
『わかったわ、ちゃんと渡してあげる』
 クリスの返事を聞き、フェルディナンドは照れたような笑いを浮かべた。
『ありがとう、貴女の事お母さんみた……痛ッ!?』
『君みたいな大きな子供持った覚えは無いわよっ!』
 フェルディナンドが喋り終わる前に、クリスに鼻を弾かれる。
 そうして優しい微笑みに見送られ、彼は酒場を後にした。


『以上がフェルディナンド・イシュタルテの報告です』
 黒い制服を着た男が、読み上げた文書を目の前に座っている男に渡す。
 もっとも男は受け取らず、制服の男は苦い顔をしながらテーブルに文書を置いた。
『ご苦労さまです、貴方も下がっていいですよ』
『はッ!それでフェルディナンドの処分は如何いたしましょう?』
 制服の男は一歩下がり、座る男に敬礼をする。
『処分?彼は完璧に任務を果たしました。
その彼に処分など必要ありません、貴方も分かっているでしょう?』
『はッ!失礼いたしましたッ!!』
 座る男の言葉に何かを感じたのか、制服の男が慌てる。
 背を向け、退室しようとした男を呼び止める。
『あぁ、そうです。フェルディナンドをここに呼んで頂けませんか?』
 制服の男は驚いた様な表情を浮かべたが、すぐに姿勢を正し敬礼をすると早足で去っていった。
『━━━想い続ければ力になる、諦めなければ叶わないことは無い、ですか。
フェルディナンド…面白い子だ、私の役に立ってくれるかもしれませんね……。
私の【理想郷】のために……』
 テーブルに置かれた文書を見つめ、男は笑いを零した。

フェルディナンドの手紙

ルインへ

君がこの手紙を読んでいる頃、僕はもう君の前にはいないだろう。
誰に頼んだか分からないけど、きっと君に届いていると信じてるよ。
あ!リシェスとかなら君より先に読んでしまうかもしれないから
彼女に頼むのは止めておくよ。

この手紙を読んだら、出来たら処分して欲しい。
燃やすなりなんなりして、処分して欲しいんだ。
その方が君の為になると思うから、ぜひそうして欲しい。

まずは先に謝っておくよ、ごめん
できれば君にはギルドナイトって事は隠しておきたかった。
そうすればまた君と狩りに出かけれたかもしれないだろ?
僕は君のこと結構気に入ってたんだ。
僕に出来た初めての友達、なのかもしれない。
だから君とはこの関係を続けたかったんだ・・・

でも、ばれちゃったらどうしようもないよね。
騙しててごめん。


それと僕はギルドナイトを続けようと思う。
これも先に謝っておくよ、ごめんね。
僕がナイトであり続けるのは犯罪者駆逐の為なんかじゃなく
君が、君たちがちゃんとハンターとして生きられる世界を作ろう
と思ったから
そんな世界ができたら、ドナも喜ぶよね?
そうしたらさ、ルイン……
僕とまた狩りに行ってくれるかい?

その為にさ、僕は頑張ってみようと思う
だから君も頑張って生きて欲しい…

                     フェルディナンド

伝説のハンターの物語

これはあるハンターの物語

昔々、とある貧しい村がありました
その村の近くには凶暴な火竜が住んでおり
村の畑や牧場を荒らして回っておった

耐えかねた村人達はお金を出し合って
凶暴な火竜を退治してくれるハンターを
雇うことにしました

しかし相手は凶暴で知られる雄火竜
勇敢で知られるハンターも
なけなしの村人達の報酬では引き受けてくれません
諦めかけていた村人に一人の女が話しかけました
「私で良かったら引き受けましょう」
しかし、その女の装備はあまり良いものではありませんでした
いくらハンターの事に疎い村人もそれくらいは分かります
「どうせ報酬もらったら逃げ出すんだろ」
村人はそう言って女ハンターを追い返しました

それから幾人ものハンターを頼ってみましたが
やはり少ない報酬の所為か、引き受けてくれる物は
いませんでした
その間にも村は凶暴な火竜によって
荒らされてしまいます
村人は藁をもすがる思いで
あの女ハンターを探しました

しかし、女ハンターはどこを探しても見つかりませんでした
「とうに逃げ出してしまったんじゃろう」
村人は諦めてしまいます

ある日の事
村に怪我人が運び込まれます
その人物に村人は驚きました
その人物とはいつかの女ハンターだったのです

女ハンターは報酬のためではないと
村人に分かってもらう為、単身火竜に戦いを挑んだのです
しかし、やはり女ハンターの装備では歯が立たなかったのか
やられてしまいました

何日かして怪我が治った女ハンターは
再び山に向かいます
「何をしにいくんだ」
と村人が声をかけると女ハンターは
「火竜を退治しにいきます」
とだけいい、山に登っていきました
けれども戻って来るのは怪我をした女ハンターだけです

それから女ハンターは怪我治っては山にでかけ
山にでかけては怪我をして戻ってくる
という生活を繰り返したのです
時には命にかかわる様な怪我をして戻ってくる事もありました
けれども女ハンターは諦めようともせず山にでかけます

ある日怪我をして戻ってきた女ハンターに
村の子供が尋ねました
「どうして続けるの?
どうして諦めないの?」
女ハンターは一瞬困ったような顔をしましたが
微笑みながら、こう答えました
「想い続ければ力になるのよ
諦めなければきっと叶うのだから」
子供は女ハンターの言葉を信じませんでした
何故なら女ハンターは飛竜に勝てなかったからです

そうして何ヶ月か過ぎたある日
山から凶暴な火竜の姿が消えました
そう、あの女ハンターが見事火竜を退治したのです

しかし、女ハンターはその戦いの傷が原因で命を落としました
最後に女ハンターは子供に言いました
「想い続ければ、諦めなければ、いつか、きっと…」
子供は大きく頷き、女ハンターの言葉を信じました
それからその村で生まれた子供は
とても強い子に育つようになりましたとさ

あとがき

やっと長い長い第二幕が終わりました。
本当は一幕と同じくらいになるだろうと思っていたのですが、そうでもなかったです(笑)

どうでしょう?
皆さん楽しんでいただけたでしょうか?
作中のフェルディナンドは孤児で親は居ません。
それ故か彼はドナに対して母親への愛情をもっていました。
彼自身、その気持ちが何なのかは分かっていなかったようですが、それでもドナを大切に想う気持ちは本物であったと思います。
ギルドナイトとして任務をこなすため、“それが”楽しい、あるいは普通だと思い込むために偽りの仮面をつける。
その仮面は笑っていましたが、それは彼の本当の気持ちではありません。
しかし、最後にその仮面は外れたんだと思います。
仮面を外し、素顔になった彼の表情はどんなものなんでしょうかね?

あるハンターの物語についてはこれは実際(小説の世界の中で)のはなしではありません。
それぞれの村などに伝わる“御伽噺”のようなものです。
それを本にしたものが何冊かでまわっていたようです。
それを見たフェルディナンドは、“ハンターについて幻想を抱いていた”のかもしれません。
だからこそ、彼はハンターに拘っていたのでしょう。
現実は厳しく、思い続けても叶うことは少ないです。
しかし、フェルディナンドのようにもう少し、信じてもいいのではないでしょうか?

さてさて、お待ちかね(?)の第三幕。
これはちょっと張り切っちゃおうかなと思います(笑)
どんな風になるのかは楽しみにしていてくださいね。
                         レセフェール・ローラン

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最終更新:2013年02月21日 06:41
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